第2回 置き薬と先用後利

(配置の制度と考え方・経営理念)

■ 懸場帳のその中は ■


◆ 信用を受け 継ぐ「顧客データーベース」 ◆


懸場帳  売薬さんにとって、業の生命線と言 えるのが 「懸場帳」。

 置き薬業者が回る 地域を「懸場」と呼び、どの家庭にどん な薬がどれだけ預けてあり、また、これま でいくら集金したかなど、得意先情報を 「データベース化」したものが 「懸場帳」であ る。

 その中には、得意先の住所や名前、 預けている薬の種類、数量、さらにこ れまでの服用数と集金高が細かに記録 されており、各家庭の使用歴や服用実 績の掌握と、適した薬の配置、服薬指導 や情報提供を行う上で指標となっている。

 いわば、得意先の情報管理と同時に、 マーケティング・リサーチやアフターケア にひと役買っており、その顧客データベー スの存在は、「先用後利」 の商法 とともに、他の流通業からも高い関心を集めて いる。



 こうした懸場帳は、信用の高い 「のれ ん」 として、配置業者間で取引されてい る。
 その台帳に基づき、得意先を訪問す れば、誰でも集金高に近い売上を得る ことができるため、懸場の「貫高」(配置 薬の売上金額)に、売れ筋の商品や地域 性、前任者の人柄や経験、見識も考慮に 入れながら、売買金額が査定される。

 長い伝統と歴史の中で築き上げられた懸 場帳という「財産」は、業を確かなものと して後世に伝えるため、後継者育成の バイブルとなるとともに、廃業する業者さ んにとって「慰労金」にもなるのである。


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