卓上四季
選挙保険
「陣営」「参謀」など、選挙では戦争用語が普通に使われる。今回の衆院選に「大戦(おおいくさ)」という時代がかった言葉を使った政党リーダーもいる。かつて、過熱の末に本当の流血を伴った例が、日本でもあった▼いま飛び交うのはせいぜい「言葉のつぶて」や「紙爆弾」。それでも、選挙中には思わぬ事故やけがもある。大手のあいおいニッセイ同和損保が「選挙保険」を発売して話題になっている▼正式名称は「選挙活動賠償補償プラン」。運動員などが誤って第三者にけがをさせたり、物を壊したりした場合に補償する。選挙のたびに問い合わせがあるため商品化に踏み切ったという▼保険はリスクに備えるものだから「選挙の最大のリスクである落選に備えた保険をぜひ」という陣営もあるかも。古今東西は調べ尽くせないが、そんな例は知らない▼保険の歴史は、紀元前1800年の古代バビロニアにさかのぼるそう。大損害と背中合わせの物資の運搬、冒険に備えた知恵だ。選挙にも冒険の側面はあるにせよ、リスクが怖い候補者ばかりでも困ってしまう▼有権者にとって心配なのは選んだ後。雇用、健康、子育て、老後…。生活リスクの軽減策はどうなる。他国と事を荒立てて平和をリスクにさらすことはないか。「保険を掛ける」には、二股をかける悪い意味がある。ここはきっちりと選んで「真の保険」を手にしたい。2012・12・3
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