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嘉田知事の離婚に思う(見聞録)

 先週、嘉田由紀子知事(57)が35年間連れ添った夫と離婚した。その数日前には次男の結婚式があったばかり。家族は幸せに包まれていたとばかり思っていたので、驚くと同時に、「熟年離婚」という風潮が現職女性知事にまで波及したかと思うと、何ともやり切れない気持ち。
 夫は横浜国立大学教授の嘉田良平氏(59)。政治に関わるべきではないとの思いが強く、知事選への立候補直後から2人の溝が深まっていたという。
 12日に離婚届を出した嘉田知事は翌日「県民の皆さまへ」と題したコメントを発表した。
 冒頭、「35年間連れ添った夫とそれぞれの道を歩む決意をし、離婚届を提出しました。プライベートなことですが、県民の皆さんの負託を受けた知事として、皆さんにお知らせさせていただきます」とあいさつ。
 「知事選挙に出ることを決意した時点から、私は大好きな滋賀県・琵琶湖と結婚する覚悟でした(中略)お互いの人生を悔いのないものにするためには、このたび、2人の子どもが独立した、という機会もあり、このようにさせていただきました(中略)この離婚は、前向きに、お互いの人生を考えて、より良い選択だと納得した結果です」と経過を報告した。
 最後は「これを機に、さらに、知事としての責任をはたすため、全身全霊をこめて、滋賀と琵琶湖の未来のために仕事をしていく覚悟です」と締めくくった。
◇長年連れ添った夫婦が子どもの独立と同時に、その絆を解消するというのは、熟年離婚の典型。今回のケースは「性格の不一致」や「DV(家庭内暴力)」といった最近ありがちな理由ではなく、「発展的解消」との前向きなイメージを受けるが、結局のところは、夫婦しか分からない事情があるのだろう。
◇お隣、中国の上海でもここ数年、離婚が急増。統計によると、06年度、16万2000組が入籍したが、離婚も3万7000組にのぼったと、現地の新聞が報じている。
 相次ぐ離婚を防げと、介入に走った政府は「離婚仲裁工作室」なるものを設立。
 衝動的で短絡的な離婚希望者を説得し、別れを回避させるのが目的で、担当の受付職員は、夫婦が離婚手続に来た場合、深く考えた後の決断であるかを注意深く観察し、仲裁する必要があると判断した場合、工作室に出番を依頼するというわけ。
 互いに「穏やかに話し合う」意志がある場合、仲裁の成功率は高く、半数以上で成功しているという。
◇離婚の増加は「性格の不一致」に代表される個人主義の浸透に加え、女性の経済的自立が背景にある。
 熟年離婚は、子どもの独立で夫婦の共通課題が無くなったことによる使命感喪失から来るのだろうか。
 いずれにせよ離婚をタブー視しない社会的変化の強まりだが、賛否両論はあるだろう。
 誰かの親切な介入によって短絡的な離婚を回避できるのなら、上海のような「工作」も歓迎されようが、一度割れた器はなかなか元へは戻らない。

2008年05月20日 13:53 |


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