トンネル崩落:「一人でも」危険と寒さ進まぬ作業
毎日新聞 2012年12月03日 11時48分(最終更新 12月03日 11時59分)
山梨県大月市の中央自動車道・笹子(ささご)トンネルで起きた天井板の崩落事故。現場では、夜を徹した救出作業が続いた。レスキュー隊員らはトンネルの東側と西側に分かれ、約50人体制でがれきをかき分けてトンネルを進んだ。3日未明の同市の最低気温は氷点下1.3度。極寒と2次崩落の不安に耐えての作業。しかし、9人は遺体で見つかった。「一人でも多く助けたい」(救急隊員)という願いはかなわなかった。
3日午前1時ごろ、西側から入った部隊が崩落場所から約6メートルの地点で、全焼したワゴン車を発見した。
ワゴン車は左側が天井板に押しつぶされていたため、油圧スプレッダーで車体右側を切り取った。午前2時ごろ、運転席と中間座席、最後部座席の右側から3人を発見。間もなく、助手席と中間座席の左側からも2人が発見され、午前3時半までには車内にいた5人全員が運び出された。
コンクリートを砕き、鉄筋を切って一つ一つ取り除く作業。「天井壁の重さ、硬さ、鉄筋が時間がかかる原因」と消防隊員は唇をかんだ。
一方、東側の部隊は午前3時38分に、崩落場所から約30メートルの地点で全焼した山梨ナンバーの乗用車を見つけた。覆い被さった天井板を重機で除いた後、午前4時から救出を開始。車両前方の天井を切り取ったところ、運転席と助手席から計2人を発見した。後部座席からも1人が見つかり、山梨県警の検視官が状況を確認した後、午前6時20分に3人とも警察車両に収容された。
その後も、東西から約130メートルにわたる崩落現場を簡易画像探索機を使って捜索したが、トラック、ワゴン車、乗用車の3台のほかに車両は見当たらなかった。
また、笹子トンネルを管轄する中日本高速道路八王子支社の道路管制センターでは、職員がモニター画面を通じて、トンネル内で続く救出作業を見守った。トンネル内には200メートル間隔で監視カメラが設置されており、トンネル内部を監視している。【黒田阿紗子、片平知宏、池田知広】