トンネル崩落:「進入、退避で焦燥感」消防長ら会見
毎日新聞 2012年12月03日 11時28分
山梨県大月市の中央自動車道上り線の笹子(ささご)トンネル崩落現場に出動した東山梨消防本部の楠照雄消防長(60)らは3日午前8時半から記者会見。24時間に及んだ救出活動について「進入、退避の繰り返し。じれったい、焦燥感のある救助活動だった」と振り返った。
一報で駆け付けた同本部の塩山消防署ポンプ隊長の辻真佐邦さん(57)は2日午前8時46分、西側から消防車両でトンネルに入った。バックで走行する大型バス、猛スピードで逆走してくる車両。「通常ありえない、異様で危険な状態」(小笠原克也・塩山消防署長)だったという。
午後0時48分、楠消防長は一時退避命令を出す。午後4時16分、救出作業の再開とともに東側から入った塩山消防署救助隊長の日原仁司さん(47)は、落ちてきた天井板の上を歩き、唯一火災が発生しなかったトラックまでたどり着いた。現場に車両は入れないため、カッターなど限られた工具しか使えない。やっとの思いで運転席の天井をくりぬいたが、運転手の男性は両手をハンドルに乗せたまま心肺停止状態だった。
東山梨消防本部から出動したのは、交代要員を含めて計約60人。大月消防本部を含めると100人以上。楠消防長は「未知の構造体を相手に、過去に経験したことのない、想像を超える作業だった。2次災害の恐れがある中で、ぎりぎりの判断をしながら全力を尽くした」と語った。【黒田阿紗子、藤沢美由紀】