流行語大賞:「ナマポ」受賞対象外れる 差別や悪意助長と
毎日新聞 2012年12月03日 02時30分
年の瀬恒例の「ユーキャン新語・流行語大賞」(自由国民社主催)の受賞対象から、生活保護を意味するインターネット上の俗語「ナマポ」が外されたことが主催者側への取材で分かった。この言葉を巡っては、受給者への差別や悪意を助長しかねないとの指摘が相次いでいた。主催者側は、今回の措置と苦情が寄せられたこととは無関係としているが、差別を肯定したと受け取られる可能性があると判断した。
ナマポは生活保護を略した「生保」を読み替えた言葉で、以前からネット上で使われていた。今春、芸能人が生活保護を受けている母親の扶養義務を果たさなかったとして批判された問題がきっかけになり、この言葉が多用されたとみられる。
審査委員会メンバーを務める自由国民社「現代用語の基礎知識」の清水均編集長によると、委員会ではナマポという言葉が差別を助長する効果を持つことを認識した上で候補に含めるか検討。「俗っぽい言葉を取り上げることで生活保護問題を考えるきっかけになれば」などと判断し、候補に加えた。その後、受給者側から「差別や悪意がこもった言葉が大賞に選ばれていいのか」「当事者を見下す言葉だ」などの批判が噴出した。
ナマポを大賞の受賞対象から外したことについて、清水氏は「こちらが意図しない形で言葉が独り歩きし、差別を肯定したと誤解を招きかねないことなどを総合的に考慮した」と説明。ただし、発表済みの候補50語から削除する措置は取らないとしている。
困窮者支援に取り組む東京のNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の稲葉剛理事長は「こうした言葉が候補になることで、生活保護に偏見を帯びた注目が集まったり受給者の肩身が狭くなったりしただけでなく、困っている人が制度を利用しづらくなった」と話す。【遠藤拓】
新語・流行語大賞の設立に参加した新語アナリスト、亀井肇さんの話 マスコミ受けを狙い、日常的に使われる言葉でなく、注目を浴びそうな言葉を選んだのではないか。人気取りに走ったと言われても仕方ない。困窮する人たちを卑しめる言葉をそもそも候補語とすべきではなく、大賞の受賞対象から外したのは妥当な判断だ。