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2012年12月3日(月)付

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TPP―2大政党、情けない

環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉に加わるのか、拒否するのか。衆院選の争点の一つなのに、民主、自民両党が明言を避けている。他の多くの政党が賛否を明確にしたのとは対照的[記事全文]

温暖化対策―脱原発を前提に計画を

日本の温暖化対策が危機に直面している。京都議定書からの「離脱」で温室効果ガスの削減目標がなくなるうえに、原発事故を受けて、排出量の多い火力発電の割合が急増しているためだ[記事全文]

TPP―2大政党、情けない

 環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉に加わるのか、拒否するのか。

 衆院選の争点の一つなのに、民主、自民両党が明言を避けている。他の多くの政党が賛否を明確にしたのとは対照的だ。

 民主党は野田首相が交渉参加に意欲を見せながら、党内の根強い反対を受け、マニフェストでは「政府が判断する」と先送りした。

 自民党は公約で「聖域なき関税撤廃が前提なら反対」としつつ、安倍総裁は「民主党政権には交渉力がない。自民党にはある」と力説する。だが、交渉に参加するとは言わない。

 両党とも、TPPに反対する業界団体、とりわけ農業団体の強硬姿勢にすくんでいるのが実態だ。政権を争う2大政党として、あまりに情けない「あいまい戦術」である。有権者に堂々と問うべきだ。

 TPPの対象は関税の削減・撤廃のほか、サービス分野の規制緩和、投資、政府調達、知的財産保護など幅広い。当然、日本にとって利点が大きい分野も影響が心配な分野もある。

 基本は「全体として消費者の利益につながるか」である。既得権を守ろうとする業界団体の反対ばかり聞こえるのが通商交渉の常だが、日本経済の停滞を打ち破るために大局的な判断がますます重要になっている。

 政府は交渉状況について各国から情報を集めてきたものの、限界がある。

 まずは交渉に加わり、当事者となって、詳しい情報を得つつルール作りで日本に有利な仕組みを主張する。同時に、必要な国内対策を見極めていく。これが通商国家として生きてきた日本の立ち位置ではないか。

 民主、自民両党とも、党幹部の多くは同じ思いのようだ。「選挙が終われば参加を表明する」というのでは、有権者にあまりに失礼である。

 コメなどを高関税で守ってきた農業は、確かに影響が小さくない。ただ、交渉を主導する米国は砂糖などの輸入関税を残す考えで、「聖域なき関税撤廃」が避けられる可能性は十分ある。交渉で同様の措置を勝ち取り、米作の強化を急ぐ。そんな姿勢が求められている。

 日中韓、東アジア全域、そして対EU(欧州連合)と、自由化に向けた交渉開始が相次いで決まった。いずれも日本がTPPへの関心を示した後に動きが加速した。

 複数の交渉を並行して進め、貿易・投資自由化の恩恵を手にしていくうえで、TPPへの交渉参加は欠かせない。

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温暖化対策―脱原発を前提に計画を

 日本の温暖化対策が危機に直面している。

 京都議定書からの「離脱」で温室効果ガスの削減目標がなくなるうえに、原発事故を受けて、排出量の多い火力発電の割合が急増しているためだ。

 だからといって温暖化対策を忘れていいはずがない。脱原発を前提とした対策を早急に構築する必要がある。

 京都議定書の第1期(08〜12年)で、日本は「90年比6%削減」の義務があり、必要な削減量を国内の各分野に割り振った「京都議定書目標達成計画」を進めてきた。

 しかし、第2期の削減義務を拒否したことで、「目標達成計画」も終わり、来年4月からは削減の法的根拠や具体的な計画がなくなる。

 日本社会に根付いた省エネの意識をなくしてはならない。

 大事なのは向かうべき方向である。原発事故で環境が大きく変わったのは事実だ。原発1基を1年間、石炭火力に置き換えると日本の排出量は0.3%増えるという。

 だが、原発に依存した温暖化対策に戻るのは民意に反する。脱原発を進める中で、節電や省エネ、自然エネルギーの拡大などを柱にした対策を進め、それを産業競争力の強化にもつなげていきたい。

 今は原発事故後の緊急時なので、排出量が当面、ある程度増えるのはやむを得ない。国際社会の理解を得るうえでも、温暖化に立ち向かう姿勢を堅持することが必要だ。

 日本は鳩山首相時代に「20年までに25%削減」という自主目標を内外に示した。「無理だから旗を降ろそう」という声も強いが、それに代わる数字も削減計画もない中でやめるのでは、国際社会も納得しないし、国内対策もあいまいになる。

 まずは、きちんとした国内の削減計画をつくるべきだ。

 同時に国際協力を強めよう。温暖化は世界の課題であり、日本が持つ省エネの技術とノウハウを途上国でいかせば、低いコストで効率よく削減を進めることができる。途上国の削減に対する積極的な支援が「日本の削減量」としてカウントされる制度の実現も求めたい。

 いま、中東カタールで気候変動枠組み条約の締約国会議(COP18)が開かれている。米中を含む「すべての国が加わる新しい枠組み」を15年までにつくることが最大の課題だ。

 日本は国内対策を積極的に進めてこそ、この重要な次期枠組み交渉への発言力を持つことができる。

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