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【熊井洋美】道内の活発な火山活動は温泉などの恵みをもたらす一方、これまで住民の生命や財産をたびたび脅かしてきた。周辺の自治体などでは過去の教訓を生かしながら、ハザードマップなど減災の取り組みが進められている。
火山噴火予知連絡会が24時間体制で監視・観測を求めている47活火山のうち、九つが道内にある。このうち、上の図の4山と道東の雌阿寒岳が近年噴火を繰り返している。
このため「噴火警戒レベル」が導入されているが、現在のところは「平常」で推移。火山の異変に関する情報提供は、24時間観測する札幌管区気象台が担う。
度重なる被害に学んできた道は、「火山防災先進地域」だ。1983年、北海道駒ケ岳で全国初のハザードマップ(災害予測図)が作製され、13年後の噴火時に役立った。泥流の不安を抱える十勝岳、周期的に噴火をおこす有珠山などの周辺自治体も、次々とマップ作りに着手。これまでにハザードマップを整備したのは10火山(20市町)にのぼる。「かかりつけ医」ともいえる研究者が火山の身近にいるのも心強い要素だ。
記憶に新しいのが2000年の有珠山噴火だ。住宅474棟が全半壊し、JRや電話回線、農林業などに被害が出たが、噴火前に避難が終わっていたため、けが人はでなかった。
それまでに有珠山は1663年以降、少なくとも7回噴火があり、行方不明者も含め60人が犠牲となった。犠牲者が出た77年の噴火の反省に立ち、ハザードマップが全世帯に配られ、研究者の助言と自治体の協力が進んだ成功例として語り継がれている。
これを受ける形で、道内でも定期的に火山噴火を想定した防災訓練が行われている。十勝岳周辺では毎冬、泥流被害を想定した独自の防災訓練がある。
地震や津波と異なり、火山災害は「火山活動が始まってから、どのタイミングでどんな噴火があるのか」「活動の終息までの見通しはいつか」などが見えにくい。現在なら、インターネットの投稿動画サイトで国内外の火山災害を見たり、過去の災害の記録を読んだりして、イメージを働かせることが可能だ。
火山被害経験を多くの住民が共有する道内でも、個人情報保護で連絡網を共有しにくくなったり、高齢者施設が増加したりするなど、10年余で地域を取り巻く環境は変わった。「火山防災先進地域として、地域の結びつきや情報共有の進め方を常に見直していく必要がある」と北海道大の村上亮(まこと)教授。「多くの自治体の防災担当者が頑張っているが、人員不足や財政難などで他の業務と兼任になったり、専門性がついた頃に異動になったりするのが残念だ」とも話す。