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国内の110活火山が過去2千年間で計1162回噴火していたことが分かった。宇都宮大の中村洋一教授(火山学)の研究室が調べた。一方で東日本まで降灰被害が広がった桜島(鹿児島県)の「大正大噴火」以降、大規模噴火は約100年起きておらず、中村教授は「各地の活火山でマグマがたまっている可能性が高い」と指摘している。
「火山列島 災害大国迫る危機」特集ページ中村教授らは気象庁の火山総覧や過去の文献などから、比較的資料が豊富な2千年前から2011年までの噴火を調査。規模の大きさは世界的な指標に基づいて分類し、近年の桜島のように短期間に繰り返される小規模噴火はまとめて「1回」と数えた。
その結果、計1162回の噴火を確認。このうち短い期間で大量の火山灰や溶岩が放出された大規模噴火は52回で、38年間に1回の頻度だった。10億立方メートル以上の噴火は1640年の北海道駒ケ岳など17世紀に3回、1707年の富士山の「宝永噴火」など18世紀に2回起きた。やや大規模な噴火は124回だった。
中規模噴火は91年の雲仙・普賢岳や00年の有珠山など562回。3.6年に1回の割合で発生していた。
1162回のうち、気象庁が24時間監視している47活火山の噴火は9割近くを占める1012回。回数別では阿蘇山の167回、浅間山の124回、桜島の91回、伊豆大島の77回、霧島山の70回、樽前山の39回、富士山と蔵王山の38回が目立った=図参照。
一方で最近の100年間は1914(大正3)年の桜島から大規模噴火が起きていなかった。この年の桜島噴火では溶岩流で桜島と大隅半島が地続きになり、東日本にも灰が降った。
マグニチュード(M)9.0だった東日本大震災では列島の地殻が変動し、富士山を含む20ほどの活火山で地震活動が活発化した。20世紀以降、世界で起きたM9級の地震後、数年以内に誘発されたとみられる火山噴火が起きている。
日本火山学会の火山防災委員会世話人を務める中村教授は「火山災害のリスクを評価して防災に役立てるため、過去の活動を洗い直した」としたうえで、(1)マグマの供給が最近減ったとするデータはない(2)噴火履歴を分析すると、大規模な噴火が近年起きていないことはマグマの蓄積を示している――と指摘。「将来的に大噴火が起きる可能性がある」と話している。(編集委員・黒沢大陸)
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《火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長の話》 日本の火山活動を統一的に整理して経過を示した点が意味深い。近年は大きな噴火が起きていないが、噴火の危険性が低いわけではない。マグマは蓄積されており、1707年の富士山噴火クラスの大噴火が21世紀中に5、6回起きてもおかしくない。
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〈活火山〉 過去1万年以内に噴火した火山と今も活発な噴気活動が確認されている火山。気象庁が定義している。以前は「2千年以内」としていたが、1979年に御岳山(長野県、岐阜県)が有史以来初めて噴火し、最後の活動から数千年後に噴火した火山もあるため、2003年に改めた。活火山は北方領土や海底も含めて110あり、気象庁が47について24時間体制で監視している。「休火山」「死火山」という表現は使われていない。