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2012年12月2日0時18分

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富士山噴火、西日本にも影響懸念 首都機能補う必要も

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写真:南西方面の上空から見た白山=石川県白山市、朝日新聞社ヘリから、中里友紀撮影拡大南西方面の上空から見た白山=石川県白山市、朝日新聞社ヘリから、中里友紀撮影

写真:弥陀ケ原(右下)と大日平(左下)から臨む立山。中央を走る立山黒部アルペンルートの先に室堂ターミナルが見える=富山県立山町、朝日新聞社ヘリから、中里友紀撮影拡大弥陀ケ原(右下)と大日平(左下)から臨む立山。中央を走る立山黒部アルペンルートの先に室堂ターミナルが見える=富山県立山町、朝日新聞社ヘリから、中里友紀撮影

写真:三瓶山。中央奥の男三瓶山と、右手前の孫三瓶山、右中央の子三瓶山、左中央の女三瓶山が寄り添うように連なる=島根県大田市、朝日新聞社ヘリから、戸村登撮影拡大三瓶山。中央奥の男三瓶山と、右手前の孫三瓶山、右中央の子三瓶山、左中央の女三瓶山が寄り添うように連なる=島根県大田市、朝日新聞社ヘリから、戸村登撮影

写真:阿武火山群の笠山(中央)=山口県萩市、朝日新聞社ヘリから、戸村登撮影拡大阿武火山群の笠山(中央)=山口県萩市、朝日新聞社ヘリから、戸村登撮影

 【角谷陽子】火山大国・日本にあって九州を除く西日本(北陸、近畿、中国、四国)は活火山が少ない地域だ。

「火山列島 災害大国迫る危機」特集ページ

 全国には活火山が110あるが、この地域には北陸の弥陀ケ原(みだがはら=富山県)と白山(はくさん=石川・岐阜県)、中国の三瓶山(さんべさん=島根県)と阿武(あぶ)火山群(山口県)しかない。このうち、気象庁が24時間体制で監視する47火山に入っているのは、白山だけだ。

 その白山も、江戸時代初期の1659年を最後に噴火していない。火山災害に備えたハザードマップもまだ策定されていない。

 なぜこの地域に活火山が少ないのか。産業技術総合研究所で火山活動を研究する星住英夫・主任研究員は「海のプレート(岩板)の沈み込みが関係している」と説明する。海のプレートが陸のプレートの下に沈み込む際、地中深くのマントル(岩石層)が溶けてマグマとなり、地表に噴き出して火山ができる。この地域では沈み込んだプレートが浅く、マグマが発生しにくいためだという。

 ただ、火山災害と無縁かと言えば、必ずしもそうではない。かつて九州の阿蘇、姶良(あいら)、鬼界といったカルデラや中国の大山(鳥取県)などで起きた規模の大きな噴火では、近畿などにも火山灰が降ったことが確認されている。

 例えば、姶良カルデラでは2万8千年前に発生した火砕流が鹿児島、宮崎、熊本の各県を埋没させ、シラス台地を形成。総噴出量は4500億立方メートルに上り、空中に噴き上げられた火山灰は、近畿で約30センチ、関東で約10センチなど、日本列島各地に降り積もったという。

 これほどの大噴火が起きる頻度は日本では1万年に1回程度と、まれにしか起こらない。とはいえ、九州には活動が活発な活火山が多く、降灰などの影響が及ぶ可能性はある。

 また、最も影響が懸念されるのは富士山の噴火だ。1707年には、南海トラフ沿いの巨大地震「宝永地震」の49日後に「宝永噴火」が起き、江戸にも大量の火山灰が降った。

 国は2004年、宝永噴火と同規模の噴火があった場合を想定し、ハザードマップを策定。静岡・山梨・神奈川の3県は山麓(さんろく)の自治体などと共に今年6月、対策協議会を発足させた。

 火山灰は関東に降り注ぎ、健康被害のほか、停電などライフラインがマヒする恐れがある。新幹線や東名高速道路が止まり、航空機の運航に支障が出る。物流網が混乱し、企業の生産活動にも影響する。

 東西の大動脈が寸断されれば、西日本にも大きな影響が及ぶ。政治や経済の中枢が集中する首都圏が被害を受ければ、近畿を中心とする西日本で首都機能を補う必要性も出てくる。

 関西広域連合は、関西が首都機能のバックアップを担う仕組みをつくるよう政府に提言。国会や中央官庁の業務のほか、金融や物流などを関西で代替する制度を早期に整えるよう求めている。民主党のワーキングチーム(当時)も3月、首都機能のバックアップ拠点は「大阪が望ましい」とする中間報告をまとめた。

 東日本大震災以降、東京に本社を置く企業では大阪本社を新設したり、東京の被災時に大阪で業務を継続できる態勢づくりを急いだりする動きも進んでいる。

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