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2012年12月2日0時25分

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九州の火山、活動活発 桜島・新燃岳ともに警戒レベル3

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 【安田朋起、斎藤徹】世界有数の火山国日本のなかでも、九州は「火山大国」だ。

 国内110の活火山のうち九州は17、全国47の常時観測火山でも九つだが、気象庁が噴火警報を発令中に限ると6火山のうち3火山が九州。うち二つは人が住む地域近くまで影響が及ぶと予想され、噴火警戒レベルが現時点で最高の「3」に引き上げられている。

 その一つが鹿児島県の桜島。地球上で最も活発な火山の一つで、約60万人が暮らす鹿児島市が近いのも珍しい。

 今も噴煙をあげる南岳(1060メートル)は約4千年前に活動を始めた。大噴火を100〜300年ごとに繰り返し、多数の死者を出してきた。1471〜76年の「文明噴火」、1779年の「安永噴火」、1914年の「大正噴火」が代表例。大正噴火で東側に流れた溶岩は海を埋め、桜島が大隅半島と地続きになった。46年に起きたひとまわり小規模の「昭和噴火」とあわせて4大噴火と呼ばれる。

 70年代から90年代、南岳山頂火口で活動が激しくなり、ピーク時の総降灰量は年2千万トンを超え、鹿児島市内も降灰に悩まされた。

 90年代半ばごろからおとなしくなったが、2006年には昭和火口が約60年ぶりに活動を再開。09年から活動が本格化し、昨年は年間爆発回数が観測史上最多の996回。今年も11月26日現在で830回を数え、総降灰量も年500万トン程度まで増えている。

 地下のマグマだまりに推定年1千万立方メートルほどのマグマが深い所から供給されており、火山学者は「大噴火は差し迫ってはいないが、着実に近づいている」との見方で一致する。

 もう一つが新燃(しんもえ)岳(1421メートル)。鹿児島・宮崎両県にまたがる霧島連山の一つで、昨年1月、約300年ぶりに本格的に噴火した。最初の1週間の噴石や火山灰の総噴出量は推定約5千万トン。今の桜島のほぼ10年分にあたる。

 噴火は昨年9月7日を最後に途絶え、爆発の可能性は低くなったとして、気象庁は今年6月、立ち入り規制区域を「火口から3キロ以内」から「2キロ以内」へ縮小。周りの高千穂峰や韓国岳への登山が解禁された。ただ、火口にたまった溶岩は高温のまま。地下のマグマだまりの蓄積量も噴火前に近い水準に戻っており、活動がおさまるか予断を許さない。

 今は静かだが約20年前に痛ましい被害をもたらしたのが、長崎県の雲仙・普賢岳(平成新山・1483メートル)。90年11月17日、198年ぶりに噴火。翌91年6月3日に高温の噴出物が火山ガスと一体になって高速で流れる大火砕流が発生し、死者・行方不明者43人を出した。山頂の火口にできた溶岩ドームが崩れたためだ。

 その後も火砕流や土石流を繰り返し、最大時は1万1千人が避難対象に。活動は95年まで続いた。溶岩ドームは平成新山と名付けられ、今年5月には間近に望む新登山道が開通した。

 江戸時代の噴火では近くの山が大きく崩れ、有明海に流れ込んだ土砂で津波が発生。対岸の熊本や天草にも大被害をもたらした。「島原大変肥後迷惑」と呼ばれ、死者は約1万5千人に達した。

 雄大な景色で名高い熊本県の阿蘇山(中岳・1506メートル)も時々噴火する。中岳火口は今は観光名所だが、58年に12人が死亡、79年にも観光客ら3人が亡くなった。昨年5月も小規模噴火が起こり、警戒レベルが一時「2」(火口周辺規制)に引き上げられた。

■過去には巨大噴火

 九州ではより広範囲に被害を与える巨大噴火も数万年〜数千年ごとに起きている。阿蘇山の東西17キロ、南北25キロの巨大なカルデラは、30万〜9万年前に4度繰り返された巨大噴火で作られた。9万年前の噴火の総噴出量は東京ドーム約50万個分(約6千億立方メートル)に上り、北海道でも10センチの火山灰が積もった。

 南の縁(へり)に桜島があり、錦江湾奥部の海底に位置する姶良(あいら)カルデラは、約2万8千年前に南九州を火山灰で埋没させるほどの巨大噴火を起こした。

 鹿児島県三島村の薩摩硫黄島近くの海底にある直径約20キロの鬼界カルデラは約7300年前に巨大噴火。大規模な火砕流が海面上を走って薩摩半島や大隅半島に達し、灰が東北地方まで覆った。この影響で九州南部の縄文文化はいったん壊滅したとされる。

■命守るため「正しく知る」

 なぜ九州に活発な火山が多いのか。

 火山のマグマは海側のプレートが陸のプレートの下に沈み込んだ、深さ100〜150キロの高温高圧の場所で生まれる。マグマはまわりの岩石よりも軽く、岩盤の亀裂などを伝ってじわじわと上昇する。

 この「マグマの通り道」が九州の地下ではできやすい傾向にある、と九州大地震火山観測研究センター(長崎県島原市)の清水洋センター長は説明する。「地球の深い所にあるマントルの動きの関係で、九州の岩盤は構造的に亀裂ができやすく、地震よりも火山活動で地下のひずみエネルギーを多く解放する。東日本は力のかかり具合が違うので、逆に、火山活動が少なく地震が多い」

 噴火災害から身を守る備えのひとつが「火山ハザードマップ」を見ることだ。火砕流や噴石、溶岩がどこまで及ぶかを予測した地図をメーンに、噴火災害の歴史や避難の経路なども示している。九州にある九つの常時観測火山すべてで県や地元自治体が作っている。

 普賢岳の噴火災害を経験した清水さんは、「まずは過去の火山災害をよく知ること。正しく知ることが、いざという時の正しい判断につながり、命を守ることになる」と話す。

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