東京電力:「福島復興本社」 熱烈な誘致合戦 各自治体トップセールス
2012年11月27日
東京電力が来年1月をめどに福島県内に設置する「福島復興本社」(仮称)について、各自治体が熱烈な誘致合戦を展開している。首長が東電本店を訪れてラブコールを送る。そこには、放射能被害の恨み節と、地域再生の足がかりにしたい皮算用がうかがえる。既に要請したのは南相馬市、広野町、福島市。近日中にいわき市と郡山市も。他の自治体が参戦する可能性もある。【栗田慎一】
◇地域再生の起爆剤に
「福島県の振興と将来を考えた時、どこに復興本社を置くのがいいか、国と考えてほしい」。郡山市の原正夫市長は26日、市役所を訪れた東電幹部に賠償請求書を渡した際、こうくぎを刺した。原市長はこの後、29日に東電本店で直接要請する考えを明らかにした。
郡山市は都市部の除染が思うように進まず、経済活動への打撃も深刻。復興本社が地域再生の起爆剤になると踏んでおり、県内最大の商都で、東北道と磐越道の交差点という地の利を生かした売り込みに自信を深める。誘致を目指すセールストークには、各自治体の現状と思惑が反映されている。
いち早く名乗りを上げたのは南相馬市。桜井勝延市長名で8日、東電側に要請書を送付した。担当者は「福島第1原発から20キロ圏にかかる自治体。市域南側は復旧復興の最前線にある」と強調する。これに対抗したのは、半径20キロ圏をはさんで南側の広野町、山田基星町長。15日に東電本店を訪れ、初のトップセールスに踏み切った。「(東京方面からの)原発事故現場の玄関口」と訴える。
以後、首長自らが陣頭に立つ誘致合戦が始まった。福島市の瀬戸孝則市長は19日、東電本店を訪れ、県庁所在地の利便性を強調。担当者は「復興本社が除染や賠償を進める上で県との調整は不可欠だ」と語り、「最有力候補」を自任する。
一方、いわき市の渡辺敬夫市長も27日、東電本店を訪れる予定。担当者は「双葉郡からの避難者を最も多く受け入れているのはいわき市だ」と述べ、被災自治体であると同時に避難先自治体でもある労苦をにじませた。
自治体側には、復興本社の法人税などの増収に加え、さまざまな事業の拠点となることで地域経済の活性化につなげる狙いがある。一方、中通りのある自治体幹部は「復興本社なんていらない」と語る。「賠償や除染、健康被害など東電に対策を求めるべき課題は多い。復興本社の誘致合戦で、肝心な対策から目をそらされないように」と念を押した。