樹木医Q&A


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Q5:推定樹齢200年のクロマツの移植を依頼されました。どうしても枯らせたくないので、今回はかねて聞いていた林試移植法の採用を考えています。成功させるには、作業上どのような点に注意すればよいかを具体的に教えてください。
A:林試移植法は、故植村誠次博士が考案した移植法で、信頼性の高い、根回し技術です。その特色は、根鉢の外周部分の太根に環状剥皮を施し、良質の堆肥を投入することによって通常の根回しに比べより多くの発根を促すことができる点にあるといえます。いかに優れた方法であっても、やはり一つ一つの作業の丁寧さが樹木の活着を左右するカギとなります。そこで本移植法をより確実に成功させるための作業上の注意点を以下にあげてみます。1.堆肥の品質は発根の成否を決めるカナメとなるものなので、信頼のおける優良品の完熟堆肥を選定することが必要です。2.環状剥皮の作業では、根の下側(裏側)部分が視界に入りにくいので、樹皮が完全にとりきれないことがあります。樹皮がのこると剥皮したところがつながってしまい、堆肥層の中でも発根が起きないという結果を招くので、裏側は手鏡を使ってのぞきながら丁寧にはがします。3.アゼシートが完全に覆われていないとせっかく発根した根が隙間から外側に出てしまい、この根をあとで切るハメになるので、太根の周囲や継ぎ目などは隙間を作らないように、ガムテープなどできちんと塞いでおきます。4.掘取り作業が長びく場合は露わになった根を乾燥させないように、新聞紙などでくるみ噴霧器でしめらせておきます。なお作業のための掘取り幅は少ない方が、根に負担をあたえないことになります。5.根回し後、シートの内部は乾燥しやすいので、夏の期間は根元土壌を観察し、状況によって潅水を心がけます。6.掘り取り・移植時はアゼシートごと根巻きを行い、シートは移動後の埋め戻しの時に初めて外します。*なお林試移植法に関しては「樹木医完全マニュアル」(堀大才 牧野出版 1999)に詳しい記載があります。(多田 亨)
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