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外交の「負の連鎖」を断つときだ

2012/11/29付
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 日本にかぎらず、選挙では税や年金といった身近な問題に関心が集まりがちだ。票に結びつきづらいとされる外交や安全保障は、大きな争点にならないことが多い。

 しかし、今回の衆院選はそうであってはならない。国際社会での日本の地位が低下し、外交のあり方が問われているからだ。

まず日米同盟の再建を

 とりわけ深刻なのは、主権の柱である領土の守りが揺らいでいることだ。尖閣諸島では中国との緊張が続いている。尖閣周辺には中国の監視船がやってきて、領海の侵犯をくり返している。

 竹島には韓国の李明博大統領が初めて上陸し、北方領土にもロシアのメドベージェフ氏が大統領、首相として2回にわたり足を踏み入れた。

 日本周辺には北朝鮮の核開発問題など火種が多いが、領土をきちんと守れないようでは北朝鮮にも足元を見透かされかねない。

 では、どこから手をつければよいのか。まずは、米国との同盟の立て直しが急務だ。アジア諸国やロシアとの関係を築くうえでも、日米同盟が大切な足場になる。

 中国や韓国、ロシアが日本に強気になった底流には、日本との力関係の変化がある。日中の国内総生産(GDP)は逆転し、日韓の差も縮まっている。海上の警備能力でも中国は日本を追い越しつつある。ロシアは資源の輸出大国として自信を強めている。

 こうした変化を受け、中韓ロなどには「これまでほど、日本に配慮しなくてもいい」との思いが芽生えているのかもしれない。

 しかし、理由はそれだけではあるまい。日本と中韓ロの力関係は、何も最近になって急変したわけではないからだ。短期でみれば、鳩山元政権が日米同盟を傷つけたことに危機の一因がある。同盟が弱まれば、他国は米国の反応をさほど気にせず、日本に強硬な態度をとりやすくなるからだ。

 だからこそ、日米同盟の再建が肝心だ。そのために必要なのは勇ましい掛け声ではなく、着実な行動だ。まず急がなければならないのは、懸案である米軍普天間基地(沖縄県)の移設だ。良い代替案が見つからない以上、現行案での解決に努力を尽くすべきだ。

 米国は国防費の大幅な削減を強いられている。米軍のアジアへの関与が息切れしないよう、日本が応分の役割を果たすことも同盟の強化には欠かせない。

 自衛隊は情報の収集力にすぐれた対潜哨戒機P3Cを約80機、持っている。この強みを生かし、米軍による監視や警戒の活動を肩代わりするのも一案だ。

 もっとも、中国に自制ある行動を促すには、日米同盟を強めるだけでは十分ではない。中国による強引な海洋進出には、東南アジア諸国やインドも懸念を深めている。こうした国々とも組み、「航行の自由」などを定めた国際法の順守を求めていくべきだ。

 自民党は政権公約で、尖閣への公務員の常駐を検討する方針をかかげた。だが、それよりも海上保安庁や自衛隊の体制を整えるほうが先決だ。それもせず、ただ公務員を常駐させても、実効支配が強まるどころか、日本に強硬に出る口実を中国に与えてしまう。

政経分離で協力進めよ

 自民党はさらに党の憲法改正草案を踏まえて、「国防軍」の保持も打ち出した。民主党はこれを批判し、論戦になっている。国防軍の創設は、自衛隊の看板を付けかえるのとは違う。組織はどう変わるのか、シビリアンコントロール(文民統制)をどう効かせるのかなど、議論を深めてほしい。

 一方で中国や韓国、ロシアと直接に対話し、関係を改善する努力が大切なのは言うまでもない。領土の対立を解くには時間がかかる。領土とは切り離し、経済やエネルギーなどの協力を強めるなかで、打開の糸口を探るしかない。

 逆にいわゆる従軍慰安婦問題は、これまでの政府方針に沿って冷静に対応するのが賢明だろう。

 中国では習近平総書記による新指導部が立ちあがったが、激しい権力闘争の痕跡もうかがえる。少なくとも中央の権力基盤が固まるまでは、日本への強硬な姿勢は変わらないとみられる。

 そうしたなか、日中がボタンの掛けちがいから海上で衝突する事態を防ぐため、ホットラインの設置など、危機管理の仕組みを整えておくことも大切である。

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李明博、GDP、ロシア、習近平、12衆院選 政策を問う

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