さよなら、セレッソ!
Jリーグ第22節・ガンバ大阪VSセレッソ大阪
大阪ダービーが盛り上がる醍醐味の一つに、サポーターの挑発合戦がある。
僕は、正真正銘、根っからのスーパーガンバファンだから、ガンバサポーターから発せられるセレッソ大阪を誹謗中傷するチャントが、爽快でならない。これ以上のストレス解消はないといっても過言ではない。
異様な雰囲気は、早くも試合前からあった。何と、ガンバ側の入場ゲートにセレッソのユニホームを着た客が入ってきた。これが、セレッソ以外のユニホームならば、ガンバサポーターも見逃すのだろうが、吐き気がするほど気持ちの悪いピンクのユニホームをまとっているのだから、ガンバサポーターが我慢できるはずもない。突如として聞こえてくる怒声。豚色のユニホームを着た人物は僕のすぐ後ろにいたため、僕の背後からもろに聞こえてきた。「おいおいおい!こいつ、セレッソのユニ着とんぞ!こらぁ、お前!どっから入っとんじゃわれ!ボケ!出て行け!警備員、こいつ捕まえろ!」と。殴り合いの喧嘩にはなっていなかったが、早くも挑発合戦は始まっていた。
選手バスが到着すると、さらにヒートアップ。先にセレッソバスが到着すると、降りてくる選手に対し、容赦のない罵声の嵐。あの光景は、いじめなどという行為をはるかに超越している。続いてガンバ戦士が到着すると、「大阪は俺たち(ガンバ)だけだ」というチャントが、キックオフ2時間前にして早くも大音量で唄われた。
「オレたちが〜、大阪さ〜、青と黒〜、オレらだけ〜、オレたちが〜、大阪さ〜」
これの繰り返し。ここまでは良い。ここからが強烈。続いては、早くもセレッソを馬鹿にしたチャントのオンパレード。
「ラ〜ラララララララ、ララッラ・・・ピンク色の〜豚野郎が〜睨んでいる〜イワシてまえ!セレッソ!メルダ(豚という意味)」
「豚〜豚〜豚豚豚〜、セレッソ〜セレッソ〜、かかってこいや〜」
当然これらは、試合中にガンバが得点した時でも、大音量で万博に響いていた。
一方、セレッソサポーターは大人を気取っているのか、空気を読めないのか、まるでこの合戦に参加しない。試合前に「吹田駆除」というバナーが出されていたが、ガンバサポーターにビビったのか、すぐに直してしまった。数年前までは、「俺たち大阪、お前ら吹田」というバナーでガンバ大阪を挑発していたが、対戦成績が開くにつれて、すっかり尻すぼみしてしまったようである。
今年3月の長居でのゲームでは、人文字を失敗するという世紀の大失態を演じたセレッソサポーターは、この試合前もマスゲームで愚かな反逆をみせたが、ガンバサポーターが繰り出した世界に誇れるであろう大紙吹雪合戦の前に撃沈した。
それにしても、あの紙吹雪は最高級のアートだった。あれだけの量の紙吹雪を作成したガンバサポーターには、心から敬意を表したいと思う。ベストメンバーを揃えられないという不利な条件も、彼らの演出で杞憂に終わったといえるだろう。彼らの作り出した熱気と雰囲気に、ガンバ戦士は躍動し、セレッソは沈没したのである。ただ残念だったのは、どこのスポーツ番組でも、この素晴らしい紙吹雪を大々的に報じていなかったこと。この感動は、ブラウン管を通してでも必ず伝わったはずだっただけに、メディアの技量には首を捻らざるを得なかった。
とにかく、チャントといい、演出といい、この試合の勝利は、サポーターの勝利とも形容できるであろう。
極めつけは、ガンバ勝利のタイムアップが吹かれた後のチャントである。
「ジャンジャンジャジャジャン!さよなら、セレッソ!」の繰り返しが、万博に轟いたのである。この「さよなら」には、来年はJ1の舞台にはいない豚野郎への哀愁の意がこもっているのである。次のJリーグでの大阪ダービーは、いったい何年後になるのだろう。
最後に、Jリーグが平等な舞台ではないことが、この節で証明されてしまったを懸念したい。ケガと出場停止以外で、ベストメンバーを揃えられないという事態は、本来はあってはならないことである。日本代表のスケジュールを強制的に優先させ、その煽りをJリーグに仕向けるとは、協会サイドも随分と殿様気分なものである。あいにく、ガンバは選手層が厚く、対戦相手がチ○カスだったこともあり勝ち点3を取れたが、ジェフ千葉などは最たる被害者である。もう少し、考えてスケジュールを組んでもらいたい。浦和レッズだけ、日曜日に試合ができるというのは、あまりにも不平等ではないだろうか。
まあ、これだけガンバに不利な条件だったにもかかわらず沈没したセレッソには、残念ながら「さよなら」と言うしかない。
(2006年9月9日・万博記念競技場)
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