いじめ:苦しみは続く 卒業後に自死「分かって」 母、息子の思い語る /島根
毎日新聞 2012年11月27日 地方版
いじめられたトラウマから立ち直れず、自ら命を絶った青年がいる。6年前、自宅ベランダから身を投げた松江市の青木圭輔さん。小中学生の頃のいじめが一因で精神疾患を患い、3度の自殺未遂の末、22歳で帰らぬ人となった。なぜ息子は死を選んだのか。県内の自死遺族による自助グループ「しまね分かち合いの会・虹」に参加している母恵理子さん(53)に、いじめによる“終わらない苦しみ”を聞いた。【金志尚】
「おもちゃを他の人に取られても、取り返せなかったり。気が弱い子だった」。圭輔さんは小さい頃から、度々いじめの標的になった。
小4に上がる直前、鳥取県米子市から松江市の小学校に転校した。同級生から贈られた寄せ書きに、こんな記述があった。「いじめられないようにしろよ」。当時、圭輔さんはこの寄せ書きを母に見せなかったという。
高学年になると、学校に置いておく上履きや絵の具などをすべて毎日持ち帰るようになった。理由を聞いても曖昧な返事ばかり。友達が自宅に来たとき、圭輔さんの電子手帳がなくなった。「それ以来、他人を信じなくなり、友達を家に呼ぶこともなくなった」と恵理子さんは話す。
中学に入ると、道に落ちているゴミをやたらと拾う“奇行”が始まった。恵理子さんが心理学の専門家に相談すると「いじめが原因」と伝えられた。そのうち、圭輔さんは学校に行きたがらなくなった。2年生になる前、「学校に行きたくない」と泣きながら叫び、「いじめられている。蹴られたりする」と訴えた。
一時はフリースクールに通ったが、進路を決めるため、中3の秋から再び学校にも姿を見せた。しかし冬になり、病院から処方された抗うつ薬や睡眠薬を過剰に摂取し、最初の自殺を図った。恵理子さんは「いじめを受けてから、息子は人間不信や孤独感とずっと闘ってきた」と言う。
やがて一時は安定した生活を送ったが、通信制高校の卒業を間際に控えた18歳の時、自宅ベランダから飛び降りた。背中や足の骨を折る重傷を負った。
回復した後も、圭輔さんは社会との接点を得ようともがき、ファストフード店などのアルバイトに挑戦した。しかし長続きしなかった。過剰服薬で3度目の未遂を経て、06年5月、再び自宅ベランダから飛び降りて亡くなった。
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息子はなぜいじめの標的にされたのか。恵理子さんには一つ、思い当たる節がある。