2011年4月30日放送

気になるニュースを"じっくり"深読み!
後半深読みコーナーのテーマは…

『うれしいニュースの向こう側?
     ~密着 被災地の新学期~』



学校再開がもたらす意味を考える



東日本大震災では4600を超える小中学校が被災しました。4月、その多くが新学期を迎えましたが 今も

“津波で校舎が使えない”
“学校が避難所になっている”
“クラスメートが離れ離れになってしまった”

など、さまざまな問題を抱えています。再開した学校が抱える課題とどうすれば復興につなげていけるのかを考えました。



《今週の出演者たち》



●専門家
浅堀裕さん(神戸鈴蘭台高校教諭)
藤原和博さん(前・杉並区立和田中学校長)
早川信夫(NHK解説主幹)

●ゲスト
ロバート・キャンベルさん(東京大学教授)
優木まおみさん



プレゼンテーション①
学校の再開の裏側にある課題をどう乗り切るか

●被災した方々の生活空間を学校に戻す

宮城県気仙沼市の大島は本州からはフェリーで30分の人口3500人の島です。島に1つの大島小学校は避難所になっており、体育館には100人ほどの方が寝泊まりしています。

と同時に町全体の救援物資の集積場にもなっています。「学校を子どもたちのために」という気持ちは先生方も避難している方たちも同じ。そこで、学校再開にあたって話し合い、知恵をしぼりました。

自宅の片付けのための車の出入りが激しかった校庭は効率よく駐車するようにして、4分の3のスペースが体育や遊び時間に使えるようになりました。

物資は1か所に集めて通用口や多目的ホールを児童が使えるように。炊き出しに使われていた給食室は校庭に炊き出し専用のプレハブを建てることで給食の準備ができるようになったのです。





〈早川解説主幹〉児童と被災者に相乗効果
学校を再開することは大きな意味があります。
①置き去りにされがちな子どもを放っておかない
②被災者の皆さんが子どもたちの歓声で勇気づけられる
③仮設住宅などインフラ(社会的基盤)の復興のスピードが早まる
の3点です。



〈浅堀さん〉避難所運営の先生も被災者
阪神・淡路大震災の際には自分も被災者でありながら、3か月間学校に寝泊りしながら避難所を運営しました。その間、妻子は実家に疎開してもらいました。
今回、南三陸町の避難所にボランティアに行きましたが、運営マニュアルもない中で先生方が手探りの状態で避難所を運営されているのは阪神のときと変わりません。


〈藤原さん〉“ナナメの関係”で接する学生ボランティア
先生方は3月からずっと避難所運営で疲労が蓄積しているので、せめて連休には休ませてあげたいと思います。そこでボランティアの大学生を連れて被災地の福島に来ました。
大学生は「先生と児童」、「親と子」というタテの関係ではない、「ナナメの関係」です。学習や部活のサポートもしますが、じゃんけんができるだけでも“あっち向いてホイ”をして子どもたちと遊んであげられるのです。


プレゼンテーション②
子どもを教室の力で支える

●児童数が震災前の3分の2に減ってしまった学級では


福島県相馬市の磯部小学校の5年生は20人のクラスでした。ところが、震災のあと、6年生の新学期は14人でスタートしました。
「さびしい」、「(震災前とは)雰囲気が違う」と不安を訴える子や、体調を崩してしまう子もいます。担任の先生はクラスみんなで時間をかけて話し合い、子どもたちの気持ちと向き合っていました。


〈藤原さん〉起こった出来事を学習機会に
子どもは大人の言動を見ているので、大人と子どもは本音で議論すべきです。話し合いによって“自分だけがそう思っているのではない”と安心できるのです。
避難所を回って、子どもたちが寝転がって携帯ゲームばかりしているのが気になりました。 例えば、全国の学校は修学旅行の行き先を被災した東北3県にして、現地の子どもたちとの交流を図れば、被災した子どもたちも全国や世界とつながっているという気持ちが持てるのではないでしょうか。


〈早川解説主幹〉教室が持つ力で復興を

究極のケア、最大のケアとは「将来の見通しがつく」ことです。復興に向けての具体的なプランが示されることで希望の明かりがともります。皆さんは児童の学習の遅れが心配かもしれませんが、被災した子供たちは誰もが学ぶことのできないことを「生き方」を学んでいるはずです。


〈浅堀さん〉子どもたちには地域の支えが重要
阪神・淡路大震災のときには子どもたちの心の傷に気づいてあげられないこともありました。そういう意味でも学校の再開は必要なのです。学校が再開することで、先生を中心に子ども同士つながっていることが確認できます。

阪神・淡路大震災で両親を亡くした当時小学校5年の児童がいましたが、先日結婚式で「祖父母や近所の人に支えられた、育てられた」と感謝の気持ちを伝えていたことが印象的です。今の時期は地域の皆さんや学校の先生の支えが重要なのです。


〈優木さん〉普通の会話を心がけて
子どもたちは学級の委員などの役割がモチベーションになっていくんですね。これから被災地を訪問するにあたって、“私に子どもの心のケアなんてできるのかな?”と考えていましたが、「~してあげる」と上段から構えるのではなく、話し相手になるだけでもいいんですね。



〈キャンベルさん〉つらい人は「つらい」と言葉にして
私が住む地域にも“朝先生”といって、お年寄りが学校で教える制度がありますが、子どもたちは、学校が避難所になっているこの機会に地域の方と交わることも重要ですね。「話しなさい」と強制になってはいけませんが、つらい体験を言葉に出すことも大切でしょう。震災によって離れ離れになってしまう友だちがいても友情を断ち切らず、つなげていくのも大事なことです。


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