この2年ほどの間、中国人の観光ビザ取得が大幅に緩和され、今では何度も出入国が可能な数次ビザまで発給されている。「富裕層をガンガン取り込んで〜」と鼻息荒く、取らぬたぬきの皮算用に執心してきた旅行業界だが、少しは目が覚めたのだろうか?
日本のお偉い方々が日中関係に触れる際、往々にして使う表現は「政治と経済・文化は別だから」。でも現実的には「尖閣」「靖国」「南京」などのキーワードで、いざ摩擦や衝突が起きれば、交流事業はドタキャンとなり中国人団体客の渡航キャンセルが相次ぐ。
つまり中国共産党にとって、文化も人民とのワンセットで「政治の道具」に過ぎない。そして、日本経済に直接ダメージを与え、フヌケにすることで、ウソの歴史や不当な主張を「正論」に仕上げようとするのが、彼の国の常套手段なのだ。
しかも、そんな“唯我独尊国”で教育を受けた観光客の振る舞いも褒められたもんじゃない。
最高にあきれたのは、「部屋からテレビが消えてなくなった」という話。九州の某ホテルで起きた珍事だが、「中国人の宿泊客が、液晶テレビをお持ち帰りした」らしいのだ。
中国人頼みの北海道の観光業界からも、「薄利多売どころか赤字覚悟のツアー」との本音が漏れ伝わる。ホテルのバイキングでは、カニやエビなどの高級食材だけをひたすら大食い。さらに大皿を自分たちの席へ運び込み、数人でたいらげたり、食べ物をポリ袋に詰めて持ち帰る客すらいる。
ちなみに中国人観光客が激増中の台湾のホテルも、「バスルームの壁に取り付けられたシャンプーやボディーシャンプーがもぎ取られた」「部屋の調度品、絵がなくなった」などの蛮行に顔をしかめる。
多発しているのが「バスローブのお持ち帰り」らしい。だからなのだろう。台湾や中国国内では最近、バスローブを部屋に置かないホテル(中国人御用達のみならず高級ホテルまで)も珍しくなくなった。
先日泊まった台北のホテルには浴衣があったが、中国語、英語、日本語の3言語で「持ち帰る場合はフロントへご連絡を。お買い求めいただけます」との説明書きが。マグカップの脇にも、「これは部屋でのみ使うものです。持ち帰る場合、値段は250元です」と記されていた。備品持ち逃げへの「強い警戒心」の表れか。
このように、中国社会の現実は「衣食足りて礼節を知る」とはほど遠い。モラルある国からの観光客を、もっと積極的に誘致すべきでは? =おわり
■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。主な著書は「中国人の世界乗っ取り計画」「豹変した中国人がアメリカをボロボロにした」(産経新聞出版)など。