政府は30日、社会保障の将来像を議論する社会保障制度改革国民会議の初会合を開いた。制度の持続性を高めるための年金や高齢者医療改革が課題だ。年金の支給開始年齢引き上げなど給付抑制策が議論の焦点になる見通しだ。衆院選後の政治情勢によって議論の行方は流動的だが、大胆な改革案を打ち出す役割が期待される。
国民会議は民自公の3党合意で、来年8月21日までの設置が決まった。委員は首相が選ぶが、3党が推薦名簿を出して調整した経緯があるだけに、人選には各党の思惑がにじんでいる。
年金は民主党が最低保障年金の創設を掲げ、自公は現行制度の改善を目指している。民主と自公案の隔たりは大きく、国民会議の委員の間でも意見が割れている。
民主党案に近い制度を提唱しているのが、駒村康平慶大教授だ。保険料の未納問題や無年金・低年金者が増える現行制度の問題点を解決するには、税金を財源とする最低保障年金が必要だとの考えが根底にある。
権丈善一慶大教授は民主案に否定的で、現行制度の存続を主張している。ただ、現行制度でも給付抑制策は欠かせない。
この場合、議論の焦点となるのが年金の支給開始年齢の再引き上げだ。会長の清家篤慶応義塾長は「生涯現役社会」が持論で、現在の65歳から68歳への引き上げを提起したことがある。清家会長は30日の記者会見で「議論は排除せず、中立的に取り上げる」と述べた。
年金額を抑制する「マクロ経済スライド」という現行ルールも論点の一つ。デフレ下では発動できないルールがあるため、西沢和彦日本総合研究所上席主任研究員は「今後も物価や賃金の伸びが期待できない以上、デフレ下でも発動する仕組みが必要だ」とし、国民会議で議論する考えだ。
医療では、医療の充実を求める医師と、高齢者の負担増を容認する学者との間の意見調整が難しい。伊藤元重東京大大学院教授は資産のある高齢者に負担増を求める立場だ。これに対し、大島伸一国立長寿医療研究センター総長は「治すだけの医療から、医療と介護の連携など量的、質的な拡大が大事だ」とした。
駒村康平、権丈善一、清家篤、西沢和彦、伊藤元重、年金、大島伸一、日本総合研究所
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