インタビュー interview

安住信幸役 中村雅俊安住灯役 成海璃子安住美希子役 高島礼子原作者 穂積隆信制作者コメント
安住信幸役 中村雅俊

安住信幸役 中村雅俊

Q。実在の人物を演じる訳ですが、どのような気持ちで撮影に入りましたか?

「実在の俳優・穂積隆信さんを演じているのですが、実は40年近く前に学校の先生役で僕がデビューした時、僕をいじめる教頭先生役が穂積さんでした。ずっとお付き合いさせていただいていて今回自分が演じるのは不思議な感覚がありますね。"これは本当にあったの?"というくらいのすごい話ですが、その中にいろいろなテーマが含まれていて、30年前に感じたのと同じ気持ちで今回、演じさせていただいています。親が子供を育てるというのは一筋縄でいかないことってあるじゃないですか?進路や異性の問題とか、横道にそれたりとか…親として真摯に戦わなければならないのは誰もが持っている問題であって、穂積さんなりに父親として男として俳優としてぶつかったやり方が、良いか悪いかは彼が判断することであって、今回僕が演じることで僕なりの表現ができたらいいなと思います。穂積家のこの実話が、運命そのものがメッセージとして伝わればいいなと思います」

Q。30年前の作品と今回の作品の違う点は?

「30年前の"積木くずし"は社会現象でしたよね。あれだけ世の中の話題になったのにはそれなりの要因があったと思うんです。今回演じる際に考えたのですが、普遍のテーマってあるじゃないですか…親子の問題、友情、今で言うといじめ、校内暴力とか…それは今も変わらないと思います。あの時にも今と同じテーマがあって、その中で"積木くずし"では正面から親子が闘い、一人の少女が運命を抱えながら真摯に生きていた事実があったので受け入れられたと思いますね。今回は、穂積さんが「積木くずし 最終章」という本を出されて、その中で"積木くずしに続きがあった"とあります。これが非常に衝撃的なストーリーなんです…しかも実話で すからね。時代は違いますが今回もその"普遍のテーマ"は存在しているので、それを考えながら演じています」

Q。演じる際に苦労はありましたか?

「僕は30代から80代まで演じるので苦労しています(笑)、自分の中ではちょっと老けとか若作りとか大まかな分類で演じています。自分自身では多少は許せるかなという感じで演じているんですが…どうでしょうか?」

Q。共演者の印象を教えて下さい

「高島さんとは実は最近のお仕事で、ピュアな大人のラブストーリーを演じましたが(笑)、今回は娘を更生させるためにかなり対立する役ですが、すごく朗らかな方なのでやりやすくてドラマの内容は非常にシリアスなのですが、実は現場は楽しくやっています。璃子ちゃんは、番組の企画で5年くらい前に一緒にタスマニアに行ったんですよ。大人っぽいですよね。自分のリズムがあるというか」

Q。撮影時の印象的なシーンは?

「璃子ちゃんがとにかく怖いんですよ~かなり全力投球でやっているので、本番の時の怖さは本当にすごいですよ。ぐっと変わりますから!"離せよ"って言われるシーンがあったのですが、昔だったらオーバーな感じで言っただろう芝居と違って、璃子ちゃんの芝居は低く抑えた声で"離せよ"って言うんです。それがすごく拒否された感じがして、本当に怖かったですね。あと、奇抜なファッションがすごく似合っていましたね。まさにマブい感じね」

安住灯役 成海璃子

安住灯役 成海璃子

Q。どのような気持ちで撮影に入りましたか?

「"積木くずし"ってタイトルしか知らなくて、これまでの作品も見ていないので、何もどういうものなのかも分からず今回台本を読んで自分の中でイメージを作って演じています。自分は昭和を知らないのでなかなかピンと来ないところが多いのですが、知らないことを演じるのは面白いなと思いますし、現代の作品の中ではありえないような暴れ方とか、セリフとかも結構スゴイので、新鮮に感じて毎日楽しんで演じています」

Q。演じる際に苦労はありましたか?

「灯は最初は普通で、その後グレて、更正して、またグレての繰り返しの演技で、メイク替えとかもすごく多いです。分かりやすいですよ。撮影の朝、メイクと衣装で"ああ、今日はグレている日か!"って感じです(笑)。髪の毛とかもグレているときはすごくて、外見がかなり変わるので、それで(演技に)入っていけている感じがありますね」

Q。"積木くずし"は今の普通のドラマと比べてどうですか?

「昔と今とは全く違うと思うので、30年前の時代でのこのお話の衝撃度は…私には分からないです…。でも、今回安住灯を演じてみて"灯って被害者だな"とすごく思いましたね。それで灯の怒りを全部ぶつけようと思って演じました。昭和っぽいなあと思うシーンは…シンナーですかね?(笑)。あと、お母さんに反抗して首を絞めるシーンがあるのですが、灯は殺さないんですよ。その時"親のことは殺せない"って言うんですね。それがもしかしたら現代とは違うのかな?と思いますね。昭和の時代は根っこでは親はやっぱり親だと思っている気がします」

Q。セリフやビジュアルで感じたことは?

「ビジュアルは本当にすごいですね。ヒョウ柄とか、ソバージュとか。紫とかの色の組み合わせも奇抜です。セリフではどうだったかなあ?ある撮影の日のセリフが"シンナー大好き"と"離せよ"しかなかった日がありましたね(笑)。両親とは本気でケンカしています。特に雅俊さんのことは本気でぶっとばしていますね(笑)」

Q。共演者の印象を教えて下さい

「雅俊さんとは番組のロケでタスマニアに一緒に行って海に潜りました。高島さんとは今回初めてご一緒させていただいて、すごく緊張しているんですが現場でもいろいろ話しかけていただいて、ありがとうございます(笑)」

安住美希子役 高島礼子

安住美希子役 高島礼子

Q。どのような気持ちで撮影に入りましたか?

「30年前"積木くずし"が話題となったとき私は高校生で、すごく興味を持って見た記憶があります。でもその時は子供の目線で見ていたんですね。今回改めて脚本をいただいて、大人・親目線で"積木くずし"と改めて向き合った時に、全然違った感覚でした。子供の時は子供の気持ちしか理解できませんでしたが、今だと親の気持ちが分かるというか、親も女だし、男なんだなとも改めて感じました。今回この台本を実話だとして読むとあまりに切なくて、現実離れしていますが、本当の話なんですよね~。あまりに切ないので演じる時は、実話だと思わないようにして演じています」

Q。演じる際に苦労はありましたか?

「私も27歳から62歳くらいまでを演じているのですが、役者としては、それくらいの月日を演じることはやりがいがあると思っています。苦労というよりは楽しく、自分でも工夫しながら、1シーン1シーン気を抜かずに演じています。見ている方に違和感ないようにと、ここでだけが不安なところなのですが(笑)。でも、若い頃を演じるとどうしてテンションが上がるんですかね(笑)?美希子役はテンションが高い役では全くなくて、色々な運命を背負っている役なのですが、若い頃を演じるときだけは妙にテンション上がっちゃって…(笑)」

Q。今回は夫婦の話が中心ですよね?

「そうですね。私が知っている積木くずしは、子供が更正されるまでの話だったと思うのですが、その後の話って全然知らなくて、現実味がないのは、その後の話なんですよね。娘が更生してからその後穂積家に起こった悲劇というかがあまりに壮絶で…暗くなりますね。打ちのめされるというか。最初の積木くずしは両親が200日で娘を更正させる話でしたが、それはそれで親も頑張ったと思うんですが、今回のその後お話では、本当は璃子ちゃん演じる灯がなんてしっかりしていたのだろうと、彼女は被害者であったけれど大人だったんだなと思いましたね。今回は見方が変わりました」

Q。共演者の印象を教えて下さい

「雅俊さんはとにかく穏やかな方なんですよ。作品の内容が内容なだけに、現場はきっと盛り上がらないなと覚悟していたのですが、雅俊さんが温かく盛り上げてくださってとても助かっています。璃子ちゃんは…マイペースですよね。ナチュラルで起伏がないというか、年齢は娘といってもいいリアルな年なのですが、年の差を感じないですね。大人っぽいっていうか自分のリズムで、キャピって言うときがなく(笑)。役に入っているのかなと思う時があって学ぶ点が多いですね」

原作者 穂積隆信さん

原作者 穂積隆信さん現在80歳 現役俳優として元気に活躍中の穂積さん。今回の作品は一連の積木くずしシリーズの完結編として書かれたという。そのあたりのお気持ちを伺ってみた。

Q.現在はどのような生活をされていらっしゃるんですか?

「今の妻は数年前に脳梗塞で倒れまして、介護施設に入院していて週3日介護に通っています。年を取ると最後まで介護できるのかとの不安はありますが一緒にいると安心できます。今は、高次脳機能障害を抱えていて、幻想を見るらしいのですがその合間にすごく冴えたことを言ったりします。表現の仕方が文学的になったりしていて、一緒にものを考えることができて楽しいです。今は、お陰さまで無事に元気にやっています」

Q.俳優・穂積隆信としてのお仕事はいかがですか?

「もう年ですが…この間松竹映画の撮影で九州に行きました。認知症の老人役で、介護施設に入所していて介護士の女性に触りたがる役でしたね(笑)。この『積木くずし 最終章』にも、僕だと分からない老人役で出させていただきました。俊ちゃん(中村雅俊)にお会いした時は、彼が白髪の扮装だったのですが、格好良かったですね」

Q.穂積さん役を中村雅俊さんが演じられますが…?

「僕と俊ちゃんは古い付き合いで、彼が文学座でデビューした時に一緒でした。仕事が終わった後、しょっちゅう飲んでいましたね。彼といると安心するんです~包容力があって、ですから彼の周りにはすごく人が集まります。そんな彼が演じてくれるとは恐れ多いです。二枚目ですし、僕のことを一番知っているのが彼なので、OKいただいた時はうれしかったです。感動しました」

Q.今回の「積木くずし 最終章」を書こうと思われたきっかけを教えてください。

「積木くずしは30年以上前の話です。当時大ベストセラーになって、娘がそれに反抗して覚せい剤にまで手を染めてしまい、そのことに対して最近すまない気持ちが湧きあがってきまして…、実はあの最初の「積木くずし」を書いてから最近までは、"やっぱり自分は正しかったんだ、娘の由香里が更生できなかったのは本人が悪かったんだ"と親の正しさを正当化していました。それが段々年を経て、いろんなことがあって…娘の由香里は亡くなる前に介護士の資格を取って、お年寄りのために頑張ろうとしていたんですね。彼女は親を恨むことを乗り越え頑張っていた矢先に、病により人生の幕を閉じた…それに比べて僕はどう変わっていったんだろうと…。由香里の母はお金を使い込んだ罪を感じ自殺しました…その元妻を僕はどこかで恨んでいて許せなかったんです。それが今回、元妻の遺書ともいえる日記が出てきて、元妻が自殺した原因が分かったときに逆に申し訳ないと思うようになったんです。なんていうか自分自身の罪深さを感じて…とにかく今は二人に僕の罪を素直に謝って死んでいきたいなと思い、今回の本を書きました」

Q。今回の最終章の本の中で一番言いたいことは?

「僕は由香里が死んで、前の妻が自殺したことに対して、何の責任も取っていないんです。号泣して泣き叫んだだけで由香里に対して親としての最終的な責任は取っていない…、本当は、由香里が生きている時に僕が再婚していても由香里の母のことについてきちんと話さないといけなかったんですよね。
元妻が自殺した時も、自分の命を自分で絶ったのですから大変なことなのにその原因を探ろうともしませんでした。自分が正しいからそれでいいと思って逃げていたんです。考えてみるとものすごく僕は卑怯なやつです。ですから本を読んでくださる方には、一つ一つのことから絶対逃げないで欲しいということだけは伝えたいです。追及することを怠ること、それは誠実さがないということですよね。僕は「積木くずし」を書いたことを後悔するんじゃなくて、本を書いた後、由香里に対しても自殺した元妻に対しても誠実ではなかったことを後悔しています。それが今回の元妻の手紙によって気付かされたんです」

プロデュース 吉田由二(SWEET BASIL)

「"娘が……由香里が、わたしの本当の子どもではなかったかもしれない…"と原作者の穂積隆信氏が打ち明けたのは、ちょうど二年前の冬でした。今回、新たに見つかったのは、穂積氏の亡き奥様・美千子さんが、自殺する直前書き記した遺書で、穂積氏との出会い、由香里さんの誕生、"積木くずし"の200日間、穂積氏との別れとその後に至るまで、彼女自身の思いがつづられた衝撃的なものでした。"積木くずしを総括する"それが遺書を読み、苦悩の末、穂積氏が至った結論でした。
これまでたびたび、"積木くずし"は出版、映像化されていますが、それらは"200日戦争"という言葉が示す通り、由香里さんを中心とした家族の葛藤、そして再生するまでの日々を中心に描いたものが主でした。ですが、"積木くずし"はあの200日間のエピソードだけではおさまらない、全ては穂積氏と美千子さんが出会った46年前のあの瞬間に始まっていた……それが美千子さんの遺書を読み、穂積氏がたどり着いた結論だったのです。今回の『積木くずし 最終章』は初めて穂積氏と美千子さんという夫婦を核としてつづられます。そこには、これまでの"積木くずし"で描くことのなかった、妻であり、母親でもある美千子さんの壮絶なまでの姿があり、また、"愛"という一見普遍の概念に対しての問題提起が内包されています。新しい、そして本当の"積木くずし"を、ぜひ、ご覧下さい」

プロデュース 森安 彩(共同テレビ)

「今回この『積木くずし 最終章』をドラマ化するにあたり、いかに生身の人間としてキャラクターを具現化できるかがキーでした。実話だからこそ、客観性と丁寧な心情描写が大切と考えました。そのため、この登場人物を演じていただく役者さんに欠かせないのが、その人自身が"生きているリアリティ"でした。安住信幸は俳優を職業としているため、華と演技力はもちろん必要。しかしまた、父親としての生活感と愛情深さも必要。中村雅俊さんはまさにその両面を兼ね備えた稀有な俳優さんです。高島礼子さんはいくつもの複雑な心情が織り混ざった心境を実に説得力を持って表現できる方。美希子役はあまりに悲しく、さまざまな顔を持つ女性。その表裏の顔がまさに今回の最終章のストーリーの肝でもあるので高島さんがピッタリだと考えました。成海璃子さんは演技力でも高い評価を得ていますが、それとともに静かだけれども強いエネルギーを秘めている女優さんだと思います。そのエネルギーを一気に放出させるような役どころは今回の灯が初めてかと思い、そこに大きな期待を寄せました。素晴らしい役者さんの全力投球のお芝居にぜひご期待ください」

編成プロデュース 水野綾子(フジテレビ編成部)

「"積木くずし"と聞くと"不良や非行を表現するのに使われるワード"だと思い浮かぶ方が多いかと思いますが、私もそうでした。親から"そんなことしてると積木くずしになっちゃうよ!"という叱られ方をしたりですとか…。子どもがある日突然非行に走り、両親が更生させようと奔走し、家族3人で乗り越える。しかし、その後もまた3人の親子関係はもろくも崩れていく・・・・。そんな壮絶な悲劇の物語が一般的な"積木くずし"の印象だと思うのですが、今回穂積さんの奥様・美千子さんの書いた遺書にある衝撃の告白によって、逆に親子の結びつきの強さを感じ「非行に走った娘と親の闘いの物語」という単純なものではないことがわかりました。今回のドラマでは、原作の『「積木くずし 最終章』を基にこれまでには謎に包まれていた部分を描いていくわけですが、その謎の真相を主人公・安住信幸が知った時、中でも"自分の本当の娘ではないかもしれない"という信じがたい事実を知った時、信幸はそれをどう受け止めるのか・・・ということを視聴者の方には見て感じていただきたいと思います」