■ 登別停電全面復旧―避難所閉鎖、市民に安堵と笑顔
【2012年12月1日(土)朝刊】

第一滝本館のロビーに設置された連絡用の掲示板。きょう1日の再開に向けて、従業員が慌ただしく準備に追われた=30日午後0時27分、登別温泉町
 記録的な暴風雪と鉄塔倒壊による大規模停電で、北海道電力は30日、復旧した送電線からの電力供給を開始し、登別市内の全世帯で停電が解消された。市は午後8時までに、市内5カ所の避難所すべてを閉鎖した。ごみ収集が再開されるなど、市民生活は徐々に通常化。多くが営業を中止していた登別温泉の各ホテルもきょう1日から、営業を再開する。

 市によると、30日午前11時、北電室蘭支店から「市内全域の送電網が復旧した」との連絡が入り、全面回復と判断した。電力使用のピークとなる夕方でも、問題がなかった。

 避難所では午前9時ごろから、避難者たちが順次帰宅を進めた。温泉公民館、鉄南ふれあいセンター、婦人センター、婦人研修の家は昼食後に閉鎖。広域避難所として残した市民会館は午後2時前には全員が帰宅、午後8時に閉鎖した。

 市民生活は徐々に通常に戻りつつある。市は30日からごみの収集を通常通り再開し、収集車が若山町などを回り、ごみの回収を進めた。自己搬入はきょう1日から受け付ける。

 温泉街ではすべてのホテルが早朝から、翌日の営業再開に向けた準備を急いだ。電力が戻った各施設では、ポンプで温泉をくみ上げ浴槽を満たしたり、食材の仕入れなどで活気づいた。

 市内の小中学校は週明けの3日から通常通り授業を開始することを決めた。当初、1日に再開を予定していた市葬斎場は施設の点検整備のため2日まで閉鎖する。停電関連の相談は今後、市民生活部窓口で対応する。

 小笠原春一市長は午後4時に記者会見を開き「情報伝達などで課題を残した。教訓を生かしたい」と述べた。
(鞠子理人)


登別温泉の各ホテルでは営業再開に向けた準備が急ピッチで進められた=30日午後、石水亭

◆―― 温泉街、きょうから営業再開


 大規模停電に見舞われた登別市内が、30日早朝の復旧とともに一気に動きだした。温泉の宿泊施設や土産店はきょう1日の営業再開の準備、店開きした店舗は来客の応対に追われた。避難所では帰宅する市民らの笑顔と安堵(ど)の声が広がった。

 登別市観光室の調べによると、温泉街14ホテル・旅館のうち自家発電で営業を続けた1軒を除き1日にそろって再開の見通し。27〜30日の4日間でカルルスを含めキャンセルは1万人に上った。

 第一滝本館では、給水が止まった客室で赤水が出ないかの確認や大浴場への温泉の引き込み、清掃などにフル回転。予約のデータは26日のうちに記憶装置から抽出できたことから、業者や顧客といち早く連絡が取れた。

 上田俊英総支配人は「午後6時まで復旧がずれ込めば1日の再開は難しかった」と安堵の表情。「日帰り入浴も午前9時から受け入れたい」と話した。

 登別石水亭の朝礼は約100人のスタッフがそろった。麻生誠支配人は「ホテルに人がいない寂しさを実感した。初心に返り万全の態勢でお客さまをお迎えしよう」と呼び掛けた。

 社員らは客室、浴室、調理場と持ち場へ。ロビーに張り出したホワイトボードの手順で準備を急ぐ。露天風呂では浴槽に張った薄氷を割りながらの清掃。深夜にはすべての浴槽が湯で埋まった。

 「お客さまにご迷惑を掛けた。あすは初心に戻り『ありがとう』の気持ちでお迎えしたい。今は、よし頑張るぞという気持ちです」(麻生支配人)

 わさび漬けの老舗・藤崎わさび園は30日から営業。藤崎一夫店長(31)は「生活に電気やネットがあるのが当たり前になり過ぎている。あらためてありがたみを知った」と、鳴り響く電話の応対に追われた。

 登別中央ショッピングセンター・アーニスは、中止していた生鮮食品、冷凍食品の販売を午前10時の開店とともに再開し、店内は大にぎわい。柏木町の佐藤洋子さん(52)はこの日が2歳になる孫娘の誕生日。「暖かくなった家で祝うことができて良かった」と笑顔を見せた。

 同センター内の婦人服専門店「ファッションクリエイトK2」は休業の損失は30万円に上るが、川野絹子代表(54)は「これから取り返していきたい」と前向きだった。
(鞠子理人、粟島暁浩、吉本大樹)

お世話になりました」。市職員にお礼を述べる避難者=30日午後0時半ごろ、登別市民会館
◆―― 「やっと帰れる」

 登別市内5カ所の避難所は朝から大きな荷物を手に自宅に帰る避難者の姿が。「やっと帰れるね」。疲れた様子を見せつつ足取りは軽かった。

 市民会館の最後の食事となったこの日の昼食。札幌の屋台ラーメンが駆け付けた。清水義人代表(41)は避難者23人(午前11時)に対し「140食用意した」と熱々のラーメンを手際よく調理。湯気の上がった食堂には笑顔が広がった。

 市職員やボランティアは疲れを見せず避難者に親身になって話し掛けた。避難3日目の熊坂智恵子さん(71)=幌別町=は「みなさんにとても良くしてもらった。幸せです」。東海林基博さん(36)=柏木町=は生後1カ月の栞莉ちゃんを抱っこ。「静かにしてくれたね。強い子に育つかな」。寝顔に語りかけながらそっと頬をなで家族と家路についた。

 同館は午後1時を過ぎると避難者の姿は見られなくなった。
(奥村憲史)

【写真=(上から)第一滝本館のロビーに設置された連絡用の掲示板。きょう1日の再開に向けて、従業員が慌ただしく準備に追われた=30日午後0時27分、登別温泉町、登別温泉の各ホテルでは営業再開に向けた準備が急ピッチで進められた=30日午後、石水亭、「お世話になりました」。市職員にお礼を述べる避難者=30日午後0時半ごろ、登別市民会館】




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