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2012年12月1日(土)付

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総選挙・政策論戦―工程表を示してこそ

各党の総選挙のマニフェスト(政権公約)がほぼ出そろい、16日の投票日に向けた政策論戦が本格的にスタートした。きのうの日本記者クラブ主催の党首討論会に参加したのは、実に1[記事全文]

総選挙・高齢者医療―オブラートに包むな

高齢化が進めば、自然と医療費は膨らんでいく。2025年度には、自己負担分を除いて約54兆円と、今年度より19兆円近くも増える見通しだ。節度をもたないと、医療費の大半を負[記事全文]

総選挙・政策論戦―工程表を示してこそ

 各党の総選挙のマニフェスト(政権公約)がほぼ出そろい、16日の投票日に向けた政策論戦が本格的にスタートした。

 きのうの日本記者クラブ主催の党首討論会に参加したのは、実に11政党。異例の多党化のなかで印象的だったのは、基本政策をめぐる各党の主張の差が意外に小さいことである。

 例えば、議論がもっとも集中した原発・エネルギー政策。

 野田首相が「2030年代に原発ゼロ」の民主党の公約を説明すると、自民党の安倍総裁は「軽々にゼロにするとは言わない」としながらも、「できるだけ原発に依存しない社会をつくっていく」と語った。

 「10年後までの卒原発」の日本未来の党、「可能な限り速やかに原発ゼロをめざす」という公明党などを含め、時期や程度の違いはあっても原発依存度を下げていく方向性は同じだ。

 首相が交渉参加に意欲を示す環太平洋経済連携協定(TPP)への対応はどうか。

 自民党は公約に「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、交渉参加に反対」と掲げた。

 これについて、みんなの党の渡辺代表が「まやかしだ」と批判すると、安倍氏は「自民党には突破していく交渉力がある」と交渉参加に前向きともとれる発言をした。

 領土外交はどうか。

 尖閣諸島に灯台や船だまりを造る安倍氏の主張を実行するよう日本維新の会の石原代表が迫ると、安倍氏は「実効支配を譲らない強い決意を示していく」と応じたものの、実際に造るかどうかは言及しなかった。

 原発にせよ、TPPにせよ、領土外交にせよ、民主、自民の2大政党を中心に、各党の政策に埋められないほどの違いは実は多くないように見える。

 ならば、有権者の判断基準として各党が競うべきは何か。

 国民受けを狙う、勇ましい言動ではない。

 主要政策をいつまでに、どんな手順で実行するのか。具体的な工程表を示すことだ。それによって有権者は、政党の「本気度」や、政策遂行のスピード感を知ることができる。

 多党化によって、選挙後、どの政党が政権に加わるかが見通せない。言い換えれば、どの党も連立政権に入ったり、政策ごとの連携・協力の枠組みに加わったりする可能性がある。

 その前提が、政策の一致であることは言うまでもない。

 発足直後の新党には荷が重い面もあろう。それでも、各党はできる限り誠実に、工程表を示す責任から逃げてはならない。

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総選挙・高齢者医療―オブラートに包むな

 高齢化が進めば、自然と医療費は膨らんでいく。2025年度には、自己負担分を除いて約54兆円と、今年度より19兆円近くも増える見通しだ。

 節度をもたないと、医療費の大半を負担する現役世代は耐えられなくなる。

 現役サラリーマンが入る健康保険では、すでに支出の4割前後が高齢者医療への拠出だ。特に中小・零細企業の社員が多い協会けんぽでは、給料に対する保険料の割合が10%(労使折半)と、限界に達しつつある。

 高齢者の医療をいかに効率化し、現役世代が納得できる範囲に費用をおさめるか。

 30日に初会合が開かれた社会保障制度改革国民会議に丸投げせず、選挙戦でもきちんと議論しなければならない。

 医療費の抑制には、入院治療が必要のないお年寄りまでコストのかかる病院で抱えるのでなく、住み慣れた地域で必要な介護を受けつつ人生を全うする仕組みを整えることが大切だ。

 政府・与党が決めた「一体改革」では、病院から在宅への体制整備のため消費増税から1.4兆円が使われる。

 民主党のマニフェストにも、認知症の家族への支援など、在宅医療・介護の充実といった項目が並ぶ。

 ただ、耳に心地よい話ばかりではありえない。

 一体改革では、7千億円程度の削減もセットになっている。入院日数を短くすることで4300億円、介護施設の入所者を減らすことで1800億円といったぐあいだ。

 こうした節減策もオブラートに包まず示さないと、いざ実行する段階で、有権者から「聞いてない」と反発を受けるのは避けられない。

 一方、自民党は「負担の増大を極力抑制する」と繰り返す。裏返せば、医療費の削減ということだが、アメだけを見せているとしか思えない。

 分かりにくい表現も多い。たとえば「保険給付の対象となる療養の範囲の適正化」である。要は、公的保険で費用をカバーする治療や薬の範囲を狭めるということだ。

 軽いけがや病気を全額自己負担にしたり、高価な先進医療を受けた分は保険でカバーしない「混合診療」を拡大したり、様々なやり方がある。具体的なイメージを示すべきだ。

 日本維新の会にいたっては、公約で医療にはほとんど触れていない。

 医療をめぐる受益と負担のバランスをどう取るのか。各党は正面から論じてほしい。

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