前から予告していた初心者向け軍用ナイフの解説をはじめる。 ナイフは、ドラマ、映画、マンガ、アニメ、ゲーム、小説にしばしば登場するが、その描写には間違いや誤解も多い。 そこで、そうしたフィクションに登場するナイフ…特に大型の戦闘用/汎用ナイフについて紹介していきたい。 そうなるとほとんど話題になるのは軍用ナイフまたはその派生ということになる。 まず初回は種類について説明していく。 一般に軍用ナイフというと、サバイバルナイフを連想する人が多い。 フィクションに登場する大型ナイフも、その種のものが中心だ。 アニメ版ハルヒに登場した朝倉涼子が使用しているナイフもこの一例と言える。 サバイバルナイフについては後述するとして、一般に軍用ナイフに該当するものの用語を厳密に紹介しよう。 軍用ナイフというのは、軍が支給品として採用したナイフが中心だが、派生して軍向けにデザインされた民間のナイフも含める。 刃が可動ではなく、刃を鞘(シース)に収納するナイフ。日本ではなぜか英語圏ではマイナーな呼称「シースナイフ」で呼ばれることが多い。 いわゆる大型の戦闘用・汎用ナイフを指す。全長30cm程度のものが多い。 軍用ナイフ全般を指すこともある、かなり幅広い概念を指す語だが、ここではもっぱら狭い意味で使う。 コンバットナイフのうち、特に背に鋸刃(ソウトゥース)を備えたものを指す。 航空機パイロットのサバイバルツールとして収納されているのが起源で、現在も軍用機に積まれているサバイバルキットにはこの種のナイフがある。 多目的に使えるように機能を盛り込んだナイフ。 ただし、鋸刃があってもサバイバルナイフと呼ばれないナイフもあり、鋸刃がないサバイバルナイフもある。 銃剣。銃に装着するナイフで、コンバットナイフやサバイバルナイフに近い形状のものも多い。 刺突専用の独特の形状のものもあるが、現代ではそうした例は減っている。 銃に装着するためにパーツがあるのが最大の特徴。 鉈。軍用の鉈として代表的なものは13日の金曜日シリーズでジェイソンが使うスタイルのマチェットだが、鉈タイプの大型軍用ナイフはまとめてマチェットとされることが多い。 折り畳みナイフ。ブレードを柄(ハンドル)に収納する。略してフォルダーという。 古い時代から民間で使われているのと同様の形状のものが軍で使われていた。 十徳ナイフ、多徳ナイフと呼ばれる折り畳みナイフ。スイス製のスイスアーミーナイフが知られる。 たまにコンバットナイフの意味でアーミーナイフという語を使う人もいる。 20世紀末以降、工具としての機能が充実しているマルチツールMulti-tool - Wikipedia, the free encyclopediaに押され気味。 軍採用のアーミーナイフはブレードの種類があまり多くない(4〜5種)のが特徴。 1990年代以降に注目された新しい軍用ナイフ(またはその亜流)の呼称。 90年代以降の新しいデザイン、素材を使った戦闘用・汎用のフィクストナイフ、フォールディングナイフを指す用語。 多くの企業やメーカーがこの名前を使っているため、軍用ではないものも多く含まれる。 今後解説していくのは主にコンバットナイフ、サバイバルナイフ、バヨネット、マチェット、タクティカルナイフが中心となる。 ククリ(グルカナイフ)についてはマチェットと並んで解説予定。 上述の解説で触れていないもの(ダイバーナイフとかスペツナズナイフのような特殊なナイフ)もあるので、適宜解説していきたい。 初回なのでざっとよくある認識のずれについて軽く解説しておく。 この辺も誤解がよくあるのだが、多くの国の軍ではかなりの兵士(歩兵)にナイフを支給しない。 自衛隊でも一部に銃剣を支給しているだけで、いわゆるコンバットナイフの支給はしない。 兵士というと全員ナイフを持っていてナイフ格闘ができるかのように勘違いしている人がいるが、そういう軍は存在しない。 基本的に兵士は白兵戦で戦うものではないし、また道具としてナイフが求められる状況も(特に近代化が進んだ国ほど)少ないからだ。 ただし、あると便利なので個人購入している例はどこの国でも見られる。 これも所属や任務、地域によって違うのだが、ナイフは概して戦闘に使われる可能性は低い。 これは、ナポレオン戦争の時代の欧州で銃剣による負傷や戦死が少ないという歴史的事実から想像すれば容易に分かるだろう。 後の時代になるほど刃物で戦う割合は減るのだ。 兵士は銃や砲や兵器で戦うのが主で、ナイフで戦う機会は少ない。 ナイフは道具として(例えばロープを切る、容器を開く、擬装や罠の作成など)使われる頻度のほうが高い。 軍用ナイフは戦闘重視のものと汎用性重視のものがあり、後の時代ほど汎用性重視のものが多い。 とは言えいまだに戦闘用ナイフの役割は残っているし、今後も消えないだろう。 コンバットナイフの全長は25〜30cm程度が多く、30cmの定規を持つとイメージしやすい。 刃の長さは5インチ〜7インチ(約13〜18cm)のものが多く、刃の厚さは5mm程度のものが多い。 フィクションではこのサイズは小さいと思われるのか、このサイズより大きくなっていることが多い。 これは、もっぱら見栄えの問題だろう。 次回は知名度の高いサバイバルナイフについて詳細に解説する予定。2009-02-11
■[ナイフ] フィクションを見るための軍用ナイフ講座 (1)種類
種類
フィクストナイフ
フォールディングナイフ
タクティカルナイフ
軍用ナイフによくある話