それでも大規模な軍事攻撃で市民の犠牲を避けるのは不可能です。
ガザ地区では8日間で、女性と子どもだけでも、およそ50人が犠牲になり、ハマスはイスラエルへの非難を強めています。
アシュラフ・ヒジァジさん。
難民キャンプにある自宅が空爆され、父親と幼い弟2人を亡くし、母親も重体となりました。
空爆された時、死亡した2歳の弟は、大好きだった三輪車に乗って遊んでいたところでした。
イスラエル軍の空爆を受けたアシュラフ・ヒジァジさん
「私の家にはロケット弾もないし、ここから発射されたわけでもありません。」
残された兄姉6人と親戚の家で暮らすヒジァジさん。
空爆で肉親を奪われた悲しみが、イスラエルへの憎しみに変わるのに時間はかかりません。
イスラエル軍の空爆を受けたアシュラフ・ヒジァジさん
「父親を亡くして寂しい。
安らかに眠ってほしいです。
一般市民を狙ったイスラエルに復しゅうしたいです。」
戦場で犠牲となる市民たちの怒りと悲しみ。
ハマスはそれをも吸い上げながら支持を広げ、勢いを増そうとしています。
鎌倉
「戦闘で親を失った子どもたちの言葉、非常に胸に刺さりますよね。
一方でそういった遺族たちの悲しみや怒りが政治的に利用されて、これがその憎しみの連鎖をまた生み出してしまうとしたら、これもやりきれないですよね。」
傍田
「現代の戦闘、戦いってのは情報戦の出来がカギを握ると言われますけれども、これはその、典型的な例かもしれませんよね。
ですから今後もハマスはやっぱり、既存のメディアだけではなくてインターネットも駆使してみずからの存在感を増すための戦術っていうのをやっぱり強めていくことになるんでしょうね。」
鎌倉
「そのハマスがパレスチナでの影響力を強める中、ハマスとライバル関係にある暫定自治政府のアッバス議長はこれに対抗するかのように、国連でのパレスチナの地位を『国家』に格上げする決議案の採択を目指しています。
パレスチナ内部での主導権争いについて、黒木さんから伝えてもらいます。」
黒木
「パレスチナは今、分裂状態に陥っています。
暫定自治政府のアッバス議長率いるファタハが支配していますのがこちらのヨルダン川西岸。
そしてここ、ガザ地区は2007年にハマスがファタハのメンバーを武力で追放し、実効支配を続けています。
双方のイスラエルに対する政策は大きく異なります。
ファタハは交渉で解決しようという和平路線なんですが、アッバス議長が主導するイスラエルとの和平交渉は中断状態が続いていまして、行き詰まっています。
一方のハマスはイスラエルに対する武装闘争を掲げ、強硬姿勢をとっています。
このためイスラエルはガザ地区を経済封鎖し、ハマス側に圧力をかけてきました。
こうしたなかハマスとイスラエルの戦闘が起きました。
ハマスは停戦合意で経済封鎖の解除を引き出すことに成功し、パレスチナでのハマスの評価が高まりました。
一方、停戦交渉では蚊帳の外に置かれたアッバス議長ですが、今週、国連に『国家』としての地位を認めるよう求める決議案を提出し、存在感をアピールしています。
イスラエルとアメリカは一方的な決議は、和平交渉の妨げになると反発していますけれども、このあと日本時間の未明に開かれる国連総会で採択される見通しとなっています。」