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「費用は逓増」することを実証する
〔図表 2〕(2)にある「指数関数法による固変分解」と「対数関数法による固変分解」を紹介しておこう。それぞれ「費用逓増による固変分解」または「収穫逓減による固変分解」と読み替えて差し支えない。〔図表 5〕から〔図表 7〕までの、赤色の曲線の基礎となる話である。
次の〔図表 9〕は、〔図表 2〕(2) c.「指数関数法による固変分解」または「費用逓増による固変分解」だ。過去4期分のデータに基づき、四半期ベースで作成した。右上方に、16個の点が分布している。
筆者以外の人々は、〔図表 9〕に分布する16個の点の並びを「右上がりの直線だ」と主張する。この百年以上もの間、会計に携わるすべての人々が「直線形の単利計算構造」を主張してきた。
それに対して筆者は、16個の点の並びは「曲線だ」と主張する。「企業活動は複利計算構造を内蔵し、企業は日々複利的に成長する」という仮説に基づき、〔図表 9〕では青色の総コスト曲線を、複利関数(または「自然対数の底e」を用いた指数関数)で表現する。
この右上がりの曲線形を、経済学では「費用逓増」と呼ぶ(『クルーグマン・ミクロ経済学』196頁)。タカダ式操業度分析は、「直線」に拘る会計学に修正を求め、経済学をも巻き込む理論である。
〔図表 9〕において、青色の総コスト曲線と黒色の売上高線との交点を「損益操業度点」と表示している。CVP分析における「損益分岐点」に似た概念だ。ただし、〔図表 3〕と〔図表 4〕は単利計算構造であるのに対し、〔図表 9〕は複利計算構造という違いがある。同じ交点でも、そのベースは異なる。