公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略
【第97回】 2012年11月30日
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高田直芳 [公認会計士、公認会計士試験委員/原価計算&管理会計論担当]

ソフトバンクは「電波を売る不動産業」
兵站が伸びきったM&A戦略の先に何があるのか

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ソフトバンクの
「費用は逓増」することを実証する

 〔図表 2〕(2)にある「指数関数法による固変分解」と「対数関数法による固変分解」を紹介しておこう。それぞれ「費用逓増による固変分解」または「収穫逓減による固変分解」と読み替えて差し支えない。〔図表 5〕から〔図表 7〕までの、赤色の曲線の基礎となる話である。

 次の〔図表 9〕は、〔図表 2〕(2) c.「指数関数法による固変分解」または「費用逓増による固変分解」だ。過去4期分のデータに基づき、四半期ベースで作成した。右上方に、16個の点が分布している。

 筆者以外の人々は、〔図表 9〕に分布する16個の点の並びを「右上がりの直線だ」と主張する。この百年以上もの間、会計に携わるすべての人々が「直線形の単利計算構造」を主張してきた。

 それに対して筆者は、16個の点の並びは「曲線だ」と主張する。「企業活動は複利計算構造を内蔵し、企業は日々複利的に成長する」という仮説に基づき、〔図表 9〕では青色の総コスト曲線を、複利関数(または「自然対数の底e」を用いた指数関数)で表現する。

 この右上がりの曲線形を、経済学では「費用逓増」と呼ぶ(『クルーグマン・ミクロ経済学』196頁)。タカダ式操業度分析は、「直線」に拘る会計学に修正を求め、経済学をも巻き込む理論である。

 〔図表 9〕において、青色の総コスト曲線と黒色の売上高線との交点を「損益操業度点」と表示している。CVP分析における「損益分岐点」に似た概念だ。ただし、〔図表 3〕と〔図表 4〕は単利計算構造であるのに対し、〔図表 9〕は複利計算構造という違いがある。同じ交点でも、そのベースは異なる。

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高田直芳 [公認会計士、公認会計士試験委員/原価計算&管理会計論担当]

1959年生まれ。栃木県在住。都市銀行勤務を経て92年に公認会計士2次試験合格。09年12月より公認会計士試験委員(原価計算&管理会計論担当)。「高田直芳の実践会計講座」シリーズをはじめ、経営分析や管理会計に関する著書多数。ホームページ「会計雑学講座」では原価計算ソフトの無償公開を行なう。

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公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略

大不況により、減収減益や倒産に直面する企業が急増しています。この連載では、あらゆる業界の上場企業を例にとり、どこにもないファイナンス分析の手法を用いて、苦境を克服するための経営戦略を徹底解説します。

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