CVP分析(損益分岐点分析&限界利益分析)
を用いる人々へ
ソフトバンクの5つのセグメントと全社ベース、そして三菱地所について、売上高に占める固定費の割合を〔図表 8〕で計算してみた。過去4期分の平均値である。
〔図表 8〕において背景をオレンジ色で染めている値が、売上高に占めるCVP固定費の割合(売上高CVP固定費率)を表わしている。
ソフトバンクのブロードバンド事業と、三菱地所の数値の頭に▲印が付いているのは、CVP固定費の平均値がマイナスであるためだ。ソフトバンクの他のセグメント(移動体通信・ネットカルチュア・その他)は、マイナスへの転落を逃れてはいるが、いずれも一桁台である。
オレンジ色の「売上高CVP固定費率」から指摘できることは、ソフトバンクも三菱地所も、〔図表 4〕の変動費型であるということだ。三菱地所は「丸の内の大家さん」ではなく、実は不動産を仕入れてそれをそのまま転売する「付加価値の低い企業」なのかもしれない。そうでなければ、変動費型としての説明が付かない。
しかし、それはとんでもない解釈だ。
CVP分析(損益分岐点分析&限界利益分析)を基礎においた管理会計や経営分析などを展開している者は、空調のきいた部屋で空想に耽(ふけ)っていないで、現場に出て、企業活動をよーく観察して欲しい。
企業が抱えているキャッシュというのは、昨日稼いだものを今日へ再投資し、今日稼いだものを明日へ再投資していることがわかるはずだ。それはすなわち、キャッシュやコストは「日々複利運用」され、企業は「日々複利的な成長」を遂げている、ということ。
CVP分析(損益分岐点分析&限界利益分析)は、勘定科目法も最小自乗法も、1次関数を用いる。これは単利計算に他ならない。企業活動は「複利計算構造」を内蔵しているにもかかわらず、それを「単利計算」のCVP分析で解析するとどうなるか。計算結果が崩壊することぐらい、「数学嫌い」の人々でも容易に理解できるであろう。
これが、〔図表 5〕から〔図表 7〕〕までのCVP固定費がマイナスに転落し、〔図表 8〕の売上高CVP固定費率の結果から、ソフトバンクも三菱地所も〔図表 4〕の変動費型と錯覚してしまう理由だ。
書店に並ぶ書籍や情報システム(原価計算システム&管理会計システム)は、そのすべてが「1次関数の単利計算構造」で表現されている。読者や利用者は、騙されないように注意してほしい。