〈もう限界です。疲れました〉
特筆すべきは、冒頭に紹介した橋下氏というトップの人材の活用についてであろう。警告の書には、こんな一節がある。
〈二〇一一年三月八日の大阪府議会総務委員会において、府職員(知事部局)の自殺者が一年間で六人に上ったことが明らかになりました。その直後に、七人目の自殺者が出たのです。それ以前の五年間では年平均一~二人でしたから、橋下府政になってからは異常な増加です〉
では、この増加は橋下氏というトップあってのものと言えるのだろうか。警告の書の存在が明らかになり、橋下府政の歪みについて〝告発〟しようという声が、少なからず出始めた。本誌もその一人と接触することに成功した。
以下は、 '10年10月13日に淀川で水死体で発見された商工労働部職員のN氏(享年51)が自殺に追い込まれるまでの詳細を知る府幹部職員の証言である。引き金になったのは、 '10年9月5~8日の橋下氏の台湾出張をめぐるトラブルだったという。
「知事は帰国した際、空港で記者団に『台湾の要人には会わなかった』と発言しました。ところが1週間後の9月14日、府の部長会議で知事が突然、商工労働部の杉本安史部長を捕まえて、激しく怒鳴ったのです。『中国に配慮してくれというのに、調整が悪かった。リスク管理ができていない』『自分は行く前にわざわざ台湾側に要人との会談をキャンセルするように謝罪に行った』。
台湾側というのは、台北駐大阪経済文化弁事処(大使館に相当)のことで、自ら要人との会談をキャンセルしてもらうよう謝罪しておいたのに、会談が組まれていたことに腹を立てたと言いたいのでしょう。しかし知事は、台湾で要人(経済大臣)と会っています。なのに記者には『会っていない』と発言した。
台北駐大阪経済文化弁事処のホームページに橋下知事が経済大臣と会ったという記事も出ているんですよ。そして1週間も経ってから突然、台湾の経済大臣と会う段取りが生きていたことを『リスク管理ができていない』となじったのです。この時の現場責任者が、参事だったN氏でした」
役人でないと背景が汲みにくい状況だ。この府職員は、理不尽な橋下氏の怒りについて、こう解説した。
「商工労働部長の杉本氏と関係の悪い別の幹部を引き立てるために、好き嫌いやその場の思いつきで商工労働部を攻撃する発言につながったんです」
結果的に、橋下氏の一喝で、現場責任者のN氏は叱責を受けた。警告本にはこう書かれている。〈知事自ら台湾側に謝罪して、要人との面談をキャンセルしていたにもかかわらず、現地入りしてみると面談が復活していたということになります。まったくもって信じかねる話ですが、自殺した生真面目な参事にとっては、「橋下知事に、ウソまでつかせた」と、自責の念に駆られるほどの大きな衝撃だったのでしょう〉。
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