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「情報セキュリティ人材の育成に関する基礎調査」報告書について

  〜日本の情報セキュリティ人材不足が明らかに〜

2012年4月27日
独立行政法人情報処理推進機構
技術本部 セキュリティセンター

 昨今、特定の企業・組織を標的とした標的型攻撃による被害が深刻化するなど、情報セキュリティに関する脅威が多様化・高度化しており、これに対応するための情報セキュリティ人材の育成の必要性が指摘されています。しかし、人材育成に取り組む前提として必要な、現在国内に情報セキュリティを担う人材がどの程度存在しているのか、質や量の面でどの程度の過不足があるのか、国内の教育機関ではどの程度の学生に情報セキュリティに関する教育を施しているのか、といった情報が整理されていませんでした。また、育成された人材が社会でどのように活躍できるのかを示すキャリアパスも、明確ではありませんでした。
 このような状況を踏まえ、IPAでは、外部有識者による「情報セキュリティ人材育成検討委員会(委員長:今井 秀樹 中央大学教授)」を設置して情報セキュリティ人材の育成に関する議論をするとともに、日本における情報セキュリティ人材の需要、供給能力、キャリアパスに関する調査を実施しました。

調査結果の概要

(1)情報セキュリティ人材の需要
 国内の企業における情報セキュリティ人材の数とその量的な過不足について、企業に対するWebアンケート調査を実施し、その結果を基に国内全体の状況を、総務省の経済センサス基礎調査により推計しました。
 その結果、国内の従業員100人以上の企業において情報セキュリティに従事する技術者は約23万人、不足人材数は約2.2万人と推計されました。
 また、約23万人中、必要なスキルを満たしていると考えられる人材は9万人強であり、残りの14万人あまりの人材に対しては更に何らかの教育やトレーニングを行う必要があると考えられます。

               表1 企業規模別の情報セキュリティ人材数推計結果

分類

人材数の推計値

不足人材数の推計値

従業員数100名以上300名未満の企業

約 8.5万人

約 8,500人

従業員数300名以上1,000名未満の企業

約 6.3万人

約 6,200人

従業員数1,000名以上の企業

約 8.1万人

約 7,700人

合計

約 23万人

約 2.2万人


(2)情報セキュリティ人材の供給能力
 国内の大学、大学院、高等専門学校、専門学校などにおいて、情報セキュリティに関する教育を受けている、または教育の機会を有する学生の数について、文部科学省の学校基本調査を基に各校の公表資料に対するWeb調査等により調査、推計しました。
 その結果、情報セキュリティの専門的教育を受講している学生は約1,000人/年、情報セキュリティ科目を受講可能な学生は約2万人/年と推計されました。

               表2 情報セキュリティ人材の供給数推計結果

人材の種類

定義

供給力推計値(人/年)

上限値
下限値

おおよその目安

情報セキュリティの専門的教育を受講した人材

大学院、大学、高専、専門学校等において情報セキュリティに関する体系的なコースを修了した人材

129

130人/年

大学院、大学において情報セキュリティをテーマとする研究室等で論文作成・発表に必要な研究を行った経験を有する人材
(注:上記のコース修了者を含まない)

592
1,149

1,000人弱/年

大学等において情報セキュリティの専門知識を受講する機会を有する人材

大学院、大学、高専、専門学校等の専門課程のカリキュラムにおいて、情報セキュリティに関する科目を選択し、受講することが可能な人材
(注:進学者を除いた人数)

16,664
21,558

2万人弱/年

 

(3)情報セキュリティ人材のキャリアパス分析
 現在、国内の情報セキュリティ分野で活躍している合計61名に、個人の業務経験とキャリアアップの経緯、スキルアップの方法等についてインタビュー調査し、キャリアパスのモデル化を行いました。
 セキュリティ人材を、@セキュリティ戦略/統括、A企画/設計、B開発/構築、C運用/管理、D監査/検査、Eコンサルティング/教育の6職種に分類して調査した結果、職種毎に一定の特徴は見られるものの、全体的には高いスキルを確立するには必ずしも特定のキャリアパスに依存していないという傾向が見られました。
 また、転職とキャリアアップとに相関関係は見られず、転職することが必ずしもキャリアアップにつながるわけではないと考えられます。
  一方で、現在ハイレベルにある人材では、ミドルレベルからステップアップする際に、社外のコミュニティ活動への参加、マネージメント業務の経験、国際業務の経験などが自己を成長させるきっかけになったとの意見が多く見られました。

 

キャリアモデル  

                    図1 キャリアパスのモデル化

調査報告書等のダウンロード

プレスリリースのダウンロード

実施者

ご参考(情報セキュリティ人材育成検討委員会資料)

本件に関するお問い合わせ先

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