安倍自民党総裁が日銀に対してインフレターゲットの2%設定を要請する可能性を示唆したり、日銀法改正も議論の対象にするとの意志を表明したりている時だけに、本日予定されているに日銀白川総裁の講演と記者会見がどのような内容になるか注目されます。白川総裁は安倍氏の一段の金融緩和策実施に対して、すでに先週次のように反論しています。
(1)積極的な金融緩和は既にやっている。日銀の強力な金融緩和策を反映して金融環境は緩和した状態にある。
(2)インフレターゲット(消費者物価上昇率)3%の設定は現実的ではない。80年代後半のバブル期でも消費者物価の上昇率が3%に達したことがない。ゆえに3%は現実的でない。今まで経験のない物価上昇率を掲げ、政策を総動員すると長期金利が上昇し、財政再建にも実体経済にも悪影響が出る。
(3)国民が望むのは単なる物価上昇ではなく、雇用や賃金が増加し、緩やかに物価が改善する状態である。
(4)日銀による建設国債の直接引き受け通貨発行に歯止めが利かなくなり、さまざまな悪影響を及ぼすのは歴史の教訓。
(5)日銀法の改正は、経済、金融の基本法である日銀法の改正を議論する場合は十分に時間をかけて慎重な検討を行うことが必要だ。中央銀行の独立性は金融の長い歴史から得られた国際的に確立されたものであり、自分は自らの責任と判断で中央銀行の使命を果たしたい。
これらは安倍自民党総裁の提言と真っ向から対立するものであるだけに、白川総裁は今日予定されている記者会見にこれらの点について記者たちから質問されるはずです。どう答えるか興味あるところですが、株式市場への影響はさほどないでしょう。白川総裁が安倍氏の考え方に反対であることはすでに市場ではよく知られていることであり、それを承知の上で株は上がっているからです。
それに白川総裁は慎重な発言をしている点も注目です。インフレターゲットの3%設定には反対しているものの、2%には言及していないからです。3%には反対でも、2%には賛成と見ることも出来ます。
それにもう一つ注目は(3)です。白川総裁は、「国民が望むのは単なる物価上昇ではなく、雇用や賃金が増加し、緩やかに物価が改善する状態である」と言っているのですが、これは安倍氏に突っ込まれるところです。なぜなら米国ではFRBは雇用に責任を持つことになっています。ところが日銀は特にそれを求められていません。雇用がどうなろうが、構わないとまでは思っていないでしょうが、そてことなど特に意識することなく金融政策を進めているが実際です。ところが白川総裁は、「国民が望むのは雇用や賃金が増加すること」と言っているのです。
安倍総裁はこの文言を重視すると見てよく、「では、白川さん、雇用に責任を持ってもらいましょう」こうなるでしょう。この点、記者たちがしっかり質問するかどうかは分かりませんが、私なら当然質問します。
日銀総裁の記者会見以外に今週注目すべきは、米国の不動産、住宅関連の指標発表になります。
そして特にいつと期日は決まらないものの、やはり注視せざるを得ないのが安倍自民党総裁の発言。これになり、日銀を強く批判したりしてくれると為替は円安に振れ、株も上がる。先週見られたような展開が再び見られそうです。
まさにいまは「安倍相場」なのです。
|
 |
 |
▓ 北浜 流一郎
株式評論家。週刊誌記者、作家業を経て株式アドバイザーへ転身。20年以上にわたって儲かる個人投資家を育て続ける。
|
|
|
|
|
|