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使用済み核燃料 立地自治体半数対策求める
11月28日 6時47分

使用済み核燃料 立地自治体半数対策求める
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原子力発電所などで保管されている使用済み核燃料について、全国34の立地自治体のうち、ほぼ半数に当たる15の自治体が、原発事故のあと、「今の安全対策では不十分だ」などとして、電力会社などに新たな対策を求めていたことが、NHKが行ったアンケート調査で分かりました。

原発の使用済み核燃料を巡っては、福島第一原発の事故で、4号機などの保管プールの機能が損なわれ、大量の放射性物質の放出が懸念される事態になったことから、保管の際の安全対策を強化する必要性が指摘されています。
NHKでは先月、使用済み核燃料を保管している原発や施設が立地する全国の34の自治体にアンケート調査を行いました。
その結果、ほぼ半数に当たる15の自治体が、原発事故のあと、「今の安全対策では不十分だ」などとして、電力会社など事業者に対し、冷却機能や耐震性の強化など新たな対策を求めていたことが分かりました。
さらに、使用済み核燃料の今後の扱いについては、10の自治体が「早く搬出してほしい」と答える一方、「一定期間の保管はやむをえない」と答えた自治体も11に上りました。
また、「回答できない」とした残る13の自治体からも、「国が責任を持って対応すべきだ」とか、「電気を消費する地域も交えた議論をすべきだ」などといった意見が寄せられました。

「核燃料サイクル」今後については意見分かれる

使用済み核燃料が全国で保管され続けているのは、日本が、これらをすべて再処理し再び燃料として利用する「核燃料サイクル」を目指しているからです。
このサイクルで、使用済み核燃料は青森県六ヶ所村の再処理工場に運び込まれ、再処理されることになっていますが、工場の本格運転は大幅に遅れています。
このため、これまでに出た使用済み核燃料1万7000トン余りのうち、1万4400トンが全国の原発のプールで保管されたままになっており、貯蔵可能な容量の70%にまで迫っています。
政府は、ことし9月に取りまとめた新しいエネルギー政策の中で、将来的には原発ゼロを目指すとしながら、核燃料サイクルを維持するという、原発の継続にもつながる方針を打ち出し、専門家からその矛盾を指摘されています。
アンケートで、この核燃料サイクルの今後についてどう考えるか尋ねたところ、「これまでどおり進めるべきだ」と回答したのが7つ、「中止すべきだ」が2つ、「進めるべきだが修正が必要だ」が8つと、立地自治体によって考え方が大きく分かれました。
「これまでどおり進めるべきだ」と答えた自治体は、原発に代わる新たなエネルギーの見通しが立っていないことなどを理由に挙げています。
「中止すべきだ」と答えたうち、茨城県東海村の村上達也村長は、「原発ゼロを打ち出した以上、きっぱり方向転換すべきだ」としています。
「進めるべきだが修正が必要だ」と答えた自治体からは、「急激に再処理をやめることはできないが、すべてを直接処分するのは現実的でない以上、再処理と直接処分を同時並行で進める以外ない」などという指摘がありました。
また、「回答できない」とした残る17の自治体からも、「政府が示した方針にはさまざまな矛盾がある」とか、「将来のエネルギー政策を早急に決めるべきだ」などと、国のエネルギー政策に対するさまざまな要望が出されていました。

自治体の反応は

▽アンケートで核燃料サイクル政策の今後について「中止すべきだ」と回答した、茨城県東海村の村上村長は、「核燃料サイクルは、1960年代から『できる』と言われながら、50年たっても一向に進んでいない。実現性が極めて厳しいものにいつまでもこだわるのは、政策として大きな間違いだ。きっぱりと覚悟してやめるべきだし、福島の原発事故が起きて、原子力政策が大きく転換しければならないときに、きちんとした方向性を示すべきだと思う」と話しています。
そのうえで村上村長は、各地の原発に保管されている使用済み核燃料について、「原子力エネルギー全体の計画が不透明になっているなか、青森県に持ち出すという今までのやり方を続けるのは無理があるのではないか。発生した各原発のサイト内に保管するのが現実的だと思う」と述べ、一定期間、各原発で保管するのはやむをえないとの考えを示しました。
さらに村上村長は、「『原発マネー』ということばがあるが、原発が立地することによる恩恵も受けてきた。その責任はやはり立地地域で取らないといけないと思う」と述べ、仮に青森県から使用済み核燃料が運び出された場合、東海村で発生した分については東海村で受け入れることに理解を示しました。
▽アンケートで核燃料サイクル政策の今後について「進めるべきだが修正が必要だ」と回答した、宮城県女川町の須田善明町長は、「原子力発電所に使用済み燃料をこのままとどめておくわけにはいかないので、核燃料サイクルは進めるべき。しかし、福島での事故を踏まえて、エネルギー政策の方向性が一定程度変わるだろうから、核燃料サイクルもこれまでと同じようにはいかないだろう。国民的な議論をしたうえで、国が道筋をつけていくことが重要だ」と述べました。
また、女川原発に保管されている使用済み核燃料の安全対策を東北電力に求めた理由について、須田町長は「原発で不測の事態が起きないとは間違っても言い切れない。福島の事故を教訓に、万が一のことがあっても対処できるよう、万全の態勢を事業者に求めている」と述べました。
▽使用済み核燃料の今後の取り扱いについて、福井県敦賀市の河瀬市長は、NHKの取材に対し、「使用済みの核燃料は、発電所の外はもちろん、福井県外の地域に早く運び出してほしい」としたうえで、電力事業者に対して「使用済み核燃料を保管するための中間貯蔵施設や最終処分場の整備を速やかに進めてほしい」と訴えました。また、河瀬市長は、核燃料サイクル政策の今後について、「資源のない日本にとって、使用済み核燃料を再利用していくことは非常に重要だ」としたうえで、「安全安心を第一に考え、国民の理解を得ながら、核燃料サイクル政策を継続させてほしい」と述べました。

“原発での保管 危険性下げる対策必要”

電力業界と原子力政策に詳しい、一橋大学の橘川武郎教授は、当面の使用済み核燃料の保管場所について、「原子力発電所に数十年間暫定的に置いておき、技術革新を待つことが、一つの考え方だと思う」としたうえで、「福島での事故の経験を受け、貯蔵用の容器に入れて地上で保管するなど、当面の間、危険性を下げる対策が必要だ」として、電力会社などに安全対策を求めていました。また、原発が立地する自治体が発電量などに応じて国からの交付金を受けている一方で、使用済み核燃料の保管に対する自治体への支援の枠組みがないことについては、「原発が立地する自治体は、発電を行う電源地帯としても貢献しているが、それ以上に危険な使用済み核燃料を持ち続けている。危険なゴミへのサポートが大きくなるべきだ」だと指摘しています。

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