日本株の信用評価損、8カ月ぶり水準に改善-個人余力増す
11月29日(ブルームバーグ):信用取引を通じ、日本株を買った向きの含み損益を示す信用評価損益率が8カ月ぶりの水準に改善した。信用取引の主体で、逆張り傾向の強い個人の投資余力が株価反発を受けて高まったことを映す。個人は海外投資家に次ぐ売買シェアを持つだけに、今後の相場展開にも影響を及ぼしそうだ。
今日のチャートは、上段で信用評価損益率(オレンジ)と日経平均株価(白)の動き、下段で信用買い残の推移を示した。信用評価損益率 は22日申し込み時点でマイナス9.96%と、3月30日(マイナス9.46%)以来、約8カ月ぶりの水準まで回復してきた。
野村証券エクイティ・ストラテジー・チームの柚木純アナリストは、過去の傾向を見ると、相場上昇である程度評価損益率が改善してくると、「懐が温まった個人が買いを入れてくる傾向にある」と指摘。持続的な相場上昇の鍵を握るのは、海外投資家 の買いが続くかどうかだが、「海外勢が売り越しに回った時に、評価損益率が現状程度まで回復していると、逆張り特性のある個人の買い向かう行動により、相場の下げは緩和される」と見ている。
東京証券取引所が27日に発表した22日時点の信用買い残 (制度信用と一般信用の合計)は東京、大阪、名古屋3市場の1・2部合計で、前の週に比べ471億円減の1兆2052億円と、2月24日時点以来、約9カ月ぶりの低水準となった。評価損益の改善や残高の圧縮が進み、個人 は新規に信用買いを入れやすい環境ともなっている。
レンジ抜け4月来の9500円接近日経平均は7月以降、欧州債務問題の不透明感や円高、日中緊張化、米国の「財政の崖」問題などへの警戒が上値を抑える半面、PBRの低さなど割安感が支え、8000円台前半を下値、9200円を上値にしたレンジ相場が続いてきた。しかし、国内で衆院解散の流れが決まり、政権交代による政策期待などから今月中旬以降に上昇基調が鮮明化。上値の節だった9200円台を抜け、4月以来の9500円に接近した。
野村証の柚木氏によると、衆院解散・総選挙の流れが市場に浸透した直後から海外勢の資金が入り、当初は「先物にCTA(商品投資顧問)などの買いが活発化したが、最近は現物ロングの中長期運用の年金からの資金流入もあるようだ」という。次期政権への期待で、衆院選前の12月第2週までは海外勢の買いが主導する相場が続き、日経平均は1万円を目指すと同氏。ただ、政策実行力の不確実性も意識される選挙後は、年末にかけ9500円程度まで調整すると予想した。
12月後半に入れば、海外勢はクリスマス休暇に入る一方、個人が値動きの良い材料銘柄を積極的に売買する「餅つき相場」の時期になる。足元の海外勢主導の上昇局面の中で、個人がどれだけ体力を付けられるかどうかがその後の相場の強弱を左右しそうだ。
東証の投資部門別売買動向によると、きょう公表の11月3週時点で海外投資家が市場全体の売買代金シェアでトップの63%を占有、個人は24%で2位。個人の売買のうち、58%が信用取引となっている。この週は日経平均が週間で3.8%高となる中、個人は2週連続で売り越し、売越額は2513億円と10月3週(2647億円)以来の高水準だった。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 河野敏 skawano1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:大久保義人 yokubo1@bloomberg.netNick Gentle ngentle2@bloomberg.net
更新日時: 2012/11/29 16:17 JST