論点を聞く:’12衆院選 TPP 近江八幡市で「経済産業分析研究所」を開く、岡地勝二さん /滋賀
毎日新聞 2012年11月29日 地方版
◇先のビジョン、明確に−−岡地勝二さん(70)
−−地域に根ざす経済学者(龍谷大名誉教授)として、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)と湖国への影響をどう見ますか?
TPPは太平洋を取り巻く加盟国間で、ヒト・モノ・カネの取引や移動の自由化を目指しています。今までも日本は自由化交渉を経験してきましたが、端的にはモノの取引、つまり輸出入の問題でした。今回はもっと広く経済の根幹をなす部分の自由化交渉であり、従来とは違う大きな問題です。論点は多数ありますが、例えば労働市場の開放も目指すので日本で働きたい大勢の外国人労働者が入国して来るでしょう。県内には多くの製造業があり、文化や言語などの摩擦も考えられます。原則関税をゼロにするので、農作物への影響も避けられません。
−−湖国は近江米の産地です。交渉参加には農家から不安の声が上がっています。
心配は分かります。短期的には安い輸入品の打撃を受けるでしょう。ただ、今のままで農業に展望はありません。稲作農家の平均年齢は70歳に迫り、後継者不足で、耕作放棄地が広がっています。減反政策と戸別補償制度では農家にインセンティブ(動機付け)がありませんが、TPP参加は農業改革の好機となります。大規模化して生産性を高めれば、逆に近江米ブランドで海外に販路拡大も可能です。先に自由化の波にもまれて消滅すると見られていた高品質の山形県産サクランボが国内外で人気なのが好例です。外国人労働者の力も活用でき、特に若手農業者には期待の声もあります。
また、滋賀は県内総生産に占める農業など第1次産業の割合が2%以下で、製造業が国内平均の2倍近い約40%を占める有数の「ものづくり県」です。都道府県別の1人当たりの県民所得4位という成績にも表れており、その意味でTPPの恩恵を受けやすいと言えるでしょう。
−−恩恵が企業だけに偏りませんか?