■ 60時間ぶり通電―停電の室蘭市、被害額1億円超
【2012年11月30日(金)朝刊】

電気が復旧したわが家で安どの表情を浮かべる阿部セツさん=29日午後7時50分、室蘭市水元町
 暴風雪による大規模停電を受け、室蘭市内で停電が続いていた水元町の停電地域は29日午後4時すぎ、電線に掛かっていた倒木を撤去し、最後の8戸で通電が再開した。27日朝の停電から実に60時間ぶりに市内全域で電力が復旧し、いつもの街明かりが戻った。市によると、被害額は、市道や公園などを所管する都市建設部で現在判明しているだけで1億円程度になる見込みという。

 市内の避難所で唯一開設が続いていた高砂町の高砂町会館は、避難していた水元町の女性1人が自宅の通電を受け帰宅したため、午後6時に閉鎖した。

 同会館周辺は停電しなかったが、近隣の停電地域の住民の声を受け、市に先んじて避難所を設けた。最後まで残っていた阿部セツさん(80)は「自宅に戻りひと安心した。やっぱりわが家が一番。ゆっくり寝ます」と話した。開設に動いた高砂町会会長の桜場政美さんは「寒い時期に万が一のことがあってはいけないとすぐに対応した」

 最大10カ所開設した避難所は、停電の解消を受け同日朝には2カ所まで縮小していた。水元町の高台25戸で続く断水は、電力復旧により、30日午前までに復旧予定。市水道部によると、同地区に水道水を供給する水元町のポンプ2施設は29日午後、通電を再開したが、水をためるのに時間がかかるという。断水地区には運搬給水で対応する。

 市は夕方、停電地域の解消と避難者ゼロを受けて、職員が退庁時間後も職場待機する第3種配備を2日ぶりに解除した。市の対策本部は被害状況の集約と被害額算定などのため、きょう30日も引き続き継続する。

 被害額は、都市建設部の判明分のほか、学校やスポーツ施設を所管する教育部では数千万円程度に上る見込みで市全体の被害額は相当膨らみそうだ。市は、災害救助法の適用を受け、申請に向けた事務作業を急いでいる。

 市は対策本部会議で登別市の対策本部に職員を派遣する案が出たのを受け、担当職員が電話で情報収集に務めた。この日は通電が止まっている登別市の火葬場への支援として、神代町の市火葬場で1体を受け入れた。また、西いぶり広域連合として、室蘭市石川町の西胆振地域広域廃棄物処理施設でのごみ受け入れについても検討を始めている。
(野村英史)


◆―― 「水道水から臭い」

 暴風雪と大規模停電の影響で、室蘭・蘭東地区を中心に「水道水から、臭いがする」と、室蘭市水道部に問い合わせが100件以上相次いでいることが29日までに分かった。水道部は「飲用には問題ない」としており、必要な対策をした結果、同日夜までに臭いはほぼ治まった。

 異臭の相談が寄せられたのは、室蘭市中島、高砂、宮の森、日の出、寿、東町など、市知利別配水池が供給する市の東側に集中。暴風雪で取水先の登別川に大量の雪が流入したことによる土壌のかくはんが原因とみられている。

 水道部が実施した緊急の水質調査では、飲用に問題となる数値や物質は出なかった。同配水池は28日から水を入れ替える水抜き作業を実施。浄水場に活性炭を入れるなどの対応によって29日夜までに「ほぼ終息した」としている。

 市水道部は「臭いが気になる場合、一定時間水道を流したままにして対応してほしい。臭いを取るために水道を流した時間を記録し、連絡してもらえれば、使用分の料金は減免します」と話している。

 問い合わせは、市水道部総務課(電話44局6117番)、水道施設課(電話44局6018番)
(野村英史)

【写真=電気が復旧したわが家で安どの表情を浮かべる阿部セツさん=29日午後7時50分、室蘭市水元町】




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