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民間の個人情報売買解禁へ 政府、新事業創出を後押し

2012/11/29 2:00
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

 政府が経済対策に盛り込む規制改革案が明らかになった。企業や病院などが持つ個人情報を匿名化したうえで他の企業に売買できる新ルールをつくり、新商品の開発や新規ビジネスの創出を後押しする。証券市場を活性化するため、企業が株式市場に上場する際に必要な情報開示の義務も緩和する。

 政府が30日に閣議決定する経済対策は、今年度予算の予備費を使った対策と、財政支出を伴わない対応策を組み合わせるのが特徴。約70項目が並ぶ規制改革案はその柱だ。PFI(民間資金を活用した社会資本整備)の規制緩和策も盛り込む。

 保護を前提としている個人情報の売り買いに道を開くのは初めて。情報の出し手として患者データを保有する病院や、POSデータを持つスーパーなど流通業を想定している。

 情報の出し手側が住所の一部や氏名、電話番号など個人を特定できる情報を削除したデータを作成。その情報を製造業などが買い取り、地域や年齢層に応じた新商品の開発や市場調査に生かせるようにする。

 複数の機関や企業から個人情報を集めて加工・分析し、企業に情報提供する新たなビジネスが生まれる可能性もある。たとえば、製薬会社では「複数の機関から広く集めた個人情報があれば、副作用の軽減など製品の改善に生かせる」との声が出ている。

 個人の間では情報流出への不安も強いとみられ、政府は2013年秋をメドに個人情報をどこまで隠せば「匿名化」とみなせるかを明確にしたルールをつくる方針だ。早ければ13年の臨時国会に個人情報保護法改正案を提出する。

 企業の情報開示義務の緩和は、低迷する新規株式公開(IPO)を底上げし証券市場にマネーを呼び込む狙い。内部統制監査報告書の提出など企業にとって負担になる手続きを緩和し、上場のハードルを下げる。

 PFIの緩和策では、県単位など広い範囲で民間企業が事業を一括受注できるようにして、公共事業のコストを削減する。財政支出が限られる中で公共事業を増やせる利点がある。

 いまは市町村などインフラの管理者がそれぞれの事業ごとに計画をつくり、民間事業者を募っている。広域での受注は事実上不可能で、民間からは「事業規模が小さく、大幅なコスト削減が難しい」との声が出ていた。このため民間事業者が「複数の市町村にまたがる事業」や「県単位」といった広域での事業を受注できるようにする。

 財政支出を伴う経済対策では8800億円の国費を投入。野田政権肝煎りの「日本再生戦略」から前倒しする景気対策のほか、減災・防災対策として公立学校の耐震化事業や保育施設の整備を盛り込む。

 このほか、来年3月末までだった企業再生支援機構の新規支援案件の受付期間延長も明記する。中小企業の経営支援を担う中小企業再生支援協議会や、地銀へのノウハウ提供を新たに業務内容に加える。


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