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石原前都知事と橋下大阪市長のカルト企業・軍事優先の野合vs宮部みゆき著『火車』の宇都宮けんじさん

2012年11月19日

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 宇都宮けんじさん(前日弁連会長、反貧困ネットワーク代表) の著書『反貧困――半生の記』(花伝社)に、作家の宮部みゆきさんとの対談「弱肉『弱』食社会を考える」(2004年5月収録)が掲載されています。

 この対談は、宮部みゆきさんの最高傑作『火車』(私自身も宮部さんの作品の中で一番好きです)に登場する多重債務問題とたたかう弁護士のモデルが宇都宮けんじさんだったので実現したものです。(ちなみに宮部みゆきさんが作家になる前に宇都宮さんの事務所で働いていたことがあるという話は、ある経済学者が間違えて全国紙に書いてしまったことによるもので事実ではないとのこと。宮部さんは『火車』を書くにあたって宇都宮さんに3時間ほど多重債務問題を取材し『火車』に登場する溝口弁護士のセリフは、取材時に聴いた宇都宮けんじさんのものだそう。なので『火車』という傑作社会派ミステリー小説は宇都宮さんの存在なくしては生まれなかったのです)

 それでこの対談の中に「カルトに似ている企業」という中見出しが付いた次の一節があります。

 カルトに似ている企業

 宮部 商工ローン事件では、「腎臓を売れ」とか脅かしている人ってすごく若い人でしたね。

 宇都宮 そうそう。誰でも最初、あれは回収を頼まれた暴力団だと思うでしょう。実際は、日栄の社員なんですね。(中略)大学の経済学部を出て日栄に入ってまだ2年もたっていなかった。裁判を傍聴したら、お母さんが情状証人として出ていました。新聞配達をしながら学校に通い、大学まで進んで、こんな親思いのまじめな子どもが何でこんな罪を犯すか、親としてわからないと話していました。日栄では過酷なノルマがあって、それを達成するためにマニュアルもあったようです。ごく普通の、背の高い細身の人でね。それが、ああいう取り立てを現実にやっていた。

 宮部 巻き舌でね。彼は大学を出て上場企業、いい会社に入ったわけですよね。そういう人が、あんな脅し文句を言わなきゃならないようになって、それが日常になってしまうまでに、いったい何があったんでしょう。何が、お母さん思いのおそらく働き者で勉強熱心な人を、そうさせたのか。日栄という会社はどうやってそうさせたのか、興味がわきます。カルトに似ていますよね。

 宇都宮 まさに企業の形態を取ったカルト宗教です。会社が一つの閉ざされた社会になって、その中では、そうしないと批判されるし、上司から怒られる。給料を下げられたり降格されたりクビになったりする。盗聴で前会長が起訴された武富士も同じです。やっぱり業界最大手で一部上場。日栄よりすごいのは日本経団連にも加盟していて、利益からすれば日本のトップ企業です。やっぱり大変なノルマがあって、一時は月に100時間以上残業するのが当たり前のような状況でした。だけど25時間しか残業手当がもらえず、あとはサービス残業。店舗には前会長の写真が飾ってあって、社員は毎朝出社すると写真に向かって「会長、おはようございます。本日もよろしくお願いします」とあいさつし、帰るときは「会長、お先に失礼します。明日もよろしくお願いします」とお辞儀していたそうです。それをやらないとまた怒られちゃう。(中略)借り手の支払い能力を超えた過剰融資や厳しい取り立ては、そういう社内体制の裏返しです。武富士の体制をあるジャーナリストはカルト宗教と軍隊が一緒になったような組織だと言いました。近代的な株式会社という形態を取っているけれど。

 ――以上が対談からの引用です。宇都宮けんじさんは「カルト宗教と軍隊が一緒になったような」「一部上場」の「大企業」から弱者を守るために奮闘されてきた弁護士です。その宇都宮さんが東京都知事選(29日告示、12月16日投票)に「人にやさしい東京をつくる会」 から立候補を表明していますが、途中で都政を投げ出した石原慎太郎前都知事はといえば、橋下徹大阪市長と野合して、日本維新の会代表になり、衆院選比例代表東京ブロックから出馬することがマスコミ報道されています。

 すでに、このすくらむブログの「石原慎太郎前都知事と橋下徹大阪市長の対極にある「人にやさしい東京をつくる会」の宇都宮けんじさん」というエントリー で指摘したように、石原慎太郎前都知事と橋下徹大阪市長は「カルト宗教と軍隊が一緒になったような組織」と共存共栄の政治家です。

 ウィキペディアによると、橋下徹大阪市長は6年間、「極めて問題のある企業」であった消費者金融大手「アイフル」の子会社である商工ローン企業「シティズ」の顧問弁護士をつとめ、まさに「カルト宗教と軍隊が一緒になったような」サラ金会社の御用弁護士として「カルト企業」を実際に支えていたわけです。

 さらにその「カルト企業」の支え手として磨いた思い通りに相手を操るノウハウ=詭弁術を本にまでしていて(秋原葉月さんのブログ「詭弁術講座」参照 )そしてその詭弁術をいかしてテレビのバラエティー番組でタレントとして人気を得るに至ったわけです。

 橋下徹大阪市長の「カルト企業」の支え手としての弁護士時代とともに、「軍隊」の問題にも着目すると、「徴兵制の復活を公言する11人」というまとめサイト によると、橋下徹大阪市長は「勝つ為には傭兵制なんだけども、責任を根付かせる為には絶対僕は徴兵制は必要」と語り、石原慎太郎前都知事は「日本は核を持て、徴兵制やれば良い」と「核武装」まで公言しているわけです。この石原前都知事の「核武装」という持論に呼応するかのように、橋下徹大阪市長は被爆地の広島で11月10日、核兵器廃絶は無理と述べ、非核三原則見直しの必要性にまで言及しています。

 以上、見てきたように、今回の都知事選と衆議院選挙では、「カルト企業と軍隊」を礼賛する路線にある政党や政治家を躍進させ、一層の「弱肉強食社会」と「核武装」「徴兵制」「軍事国家」への道を進んで行くのか、それとも、「人にやさしい政治」「人にやさしい社会」をつくっていく道に転換していくのかどうかが問われていると思うのです。

(byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)

(2012年11月19日更新)

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