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社 説 国際まんが博きょう閉幕 漫画文化の芽を育てよう
2012/11/25の紙面より
8月から4カ月近くにわたって鳥取県内で繰り広げられてきた「国際まんが博」は、きょう25日で閉幕する。入場者は目標の300万人を達成しそうだが、成否は軽々に評価できない。きちんと検証し、「まんが王国とっとり」にどう結び付けていくか。これからが勝負である。
まんが博は国際マンガサミットと併せて8月4日から開催。県内3地区で巡回開催した「とっとりまんがドリームワールド」をはじめ約140の関連事業が各地域で展開された。 県によると中心イベントのドリームワールドの入場者は3会場で延べ約22万5千人。総来場者数も目標を超える見込みだ。 「鬼太郎」の水木しげる、「名探偵コナン」の青山剛昌、フランスなどで名高い谷口ジローの三人の著名な漫画家を生んだ鳥取県。県は若者や韓国、台湾など海外でも人気が高い漫画を観光振興や街づくりにつなげようと「まんが王国」を打ち出した。 きちんとした検証をまんが博はそれを広く国内外にアピールするのが狙いである。だが、事業費が10億円に上ったことや準備が遅れたこともあって県議会で論議になった。県民の間でも賛否が分かれた。それだけに、その評価についてはきちんとした検証が必要である。確かに目標の300万人を超え、数字的には「大成功」と言える。だが、当初543億円と試算していた経済効果は果たしてどうだったか。特に観光面では「効果は限定的。観光客全体の底上げにつながっていない」といった声が聞かれる。 まんが博は従来型のテーマ博とは根本的に違う。どちらかといえば息の長い継続的なイベントである。今回、さまざまな催しを通じて「鳥取県」をアピールできたのは間違いない。 マンガサミットは海外から多くの漫画家が参加し、県も関わった過去にない大会として評価された。領土問題で中国や韓国との関係が緊迫する中、漫画を通じて民間レベルの交流が広がったことは大きな意義がある。 また、米子市の中心市街地にコンテンツビジネスの拠点ができ、「米子ワンダー」と名付けた一連の催しは街づくりの新しい動きにつながっていることを実感した。何よりも若者が街づくりに参画するきっかけとなった。 一過性に終わらすな厳しい財政事情の中で10億円の巨費を投じて開催した博覧会だからこそ、ゆめゆめ一過性に終わらせてはならない。「まいた種」を実らす努力が必要である。水木しげるロードの成功は多くの関係者の間でも注目を集めた。事業や宣伝に莫大(ばくだい)な経費をかけたものではなく、地道な努力やアイデアで作り上げた街づくりの手法の立派な成功例である。 「まんがミュージアム」などの話もあるが、まず漫画やアニメをどう地域に根付かせるか。その先に必然として施設の建設が出てくる。そんな進め方がふさわしくないか。 鬼太郎やコナンがいかに海外の若者に人気があるか、あらためてその価値を再認識した。鳥取県に行けばあちこちに漫画やアニメがあり、楽しい。今回芽吹いた「漫画文化」の芽をみんなで大切に育てていきたいものである。
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