衆院選:どう読む? 週刊誌の数字
2012年11月29日
「風向き」とは? 「今は有権者の4割が支持政党を持たず、投票する候補をぎりぎりまで決めない。政党離れはさらに進んでいるとの見方があり、そうした人たちがどう動くかは、従来の分析手法では分かりません。だから候補者をよく観察して、声に自信が感じられるか、物腰に余裕があるかなどを見る。そうしたところに無党派層をつかんでいるかの兆候が表れることがあります。最終的には、いかに重層的に情報を集められるかにかかっているのです」
とはいえ、この数の違いこそが雑誌の個性であり、まさに「売り」。党派別の詳細な予測ではないため一覧表にはないが、週刊現代12月8日号は日本維新の会が「119議席で第2党へ躍進」と大見出しを打った。同誌は、これまでも「日本再生の希望」(9月8日号)などと維新代表代行の橋下徹氏への“期待”をにじませてきた経緯がある。
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もう一つ、予測する各氏を悩ませているのが第三極の離合集散だ。日本維新の会、みんなの党、減税日本、国民の生活が第一などが合流や破談を重ね、そこに滋賀県の嘉田由紀子知事を代表に「卒原発」を掲げる日本未来の党が加わってきた。
「編集部は非常に困っていますね。雑誌泣かせの選挙ですよ」と森田氏は苦笑する。野上氏も「争点が見えず、公示数日前になってまだ新党が出てきたり。45年の選挙取材経験の中で、最も特異で読みにくい選挙」と評する。
サンデー毎日と週刊朝日は2号続けて予測を載せたが、1週間で予測数はかなり変動した。週刊朝日は民主党の議席予測を70〜92議席から93〜110議席へと“上方修正”した。「急な解散に対応しきれず準備が遅れた第三極に比べ、民主は支持基盤の連合が組織固めを図っており、復調しつつあると見ています。状況は刻々と変化しており、今ならまた違う数字になるでしょう」と森田氏。
「メディアリテラシー・ワークショップ」などの著書がある東京大大学院情報学環の水越伸教授(メディア論)は「選挙結果予測は米国で始まり、それが有権者に与える影響の研究は進んでいますが、影響過程は複雑であり、単純な結論は出せません。日本の雑誌はスタイルも内容も多様性があり、議席予測報道はほんの一つのあり方。読者は雑誌の特性を意識し、他のさまざまなメディアの報道とも比べながら、選挙報道の一つとして批判的に受けとめていくべきでしょう」と話す。