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3氏、既存施設の必要性を強調/原子力施設立地の2区
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本県の将来に関わるエネルギー政策は、県内の有権者にとって大きな争点だ。原発ゼロか、一定の原子力発電を維持するのか、核燃料サイクル事業は続けるのか。東京電力福島第1原発の事故以降、原子力に注がれる国民の視線は厳しく、各党は原発依存を弱める方向性を打ち出しているが、具体策は曖昧だ。原子力施設が集中立地する衆院選本県2区では、4人の候補予定者のうち3人が既存施設の必要性を強調している。そのうちの一人は「(原子力施設と共存してきた)2区の事情を無視した言動を取れるわけがない」と本音を漏らした。
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「国民の生活が第一」の中野渡詔子氏(41)の立場は苦しい。「10年後に全原発廃止」を掲げる党と、一定の原発は必要とする個人の主張が異なるためだ。
「立地市町村が産業、経済、雇用を立て直すことができる、というのが大前提。それがあってはじめて原発ゼロに向かっていく。そこは党内で合意が図られている」と述べたものの、「原発ゼロ」の言葉だけが“一人歩き”することを警戒し、街頭では党方針を訴えない戦略だ。
生活は、27日に嘉田由紀子滋賀県知事が全原発廃炉を掲げて結成した新党「日本未来の党」と合流する方針を決定。実現すれば、原発ゼロに向けた党内の動きは加速するとみられ、党と中野渡氏の考え方がさらに乖離(かいり)するのは必至だ。
そうなった場合はどうするのか−。中野渡氏は「その時になってみないと分からない。国会に戻って2区の立場を伝える責務がある。それを党に受け入れてもらえるように力を尽くすだけ」と明言を避けた。
2区は六ケ所村の核燃料サイクル施設をはじめ、東北電力が運営する東通原発(停止中)、電源開発(Jパワー)が建設中の大間原発、リサイクル燃料貯蔵(RFS)が来年秋の稼働を目指す使用済み核燃料中間貯蔵施設が立地する。東日本大震災で建設工事や運転が止まり、関係者らが一時引き揚げたことで地元の経済や雇用に大きな影響が出た。
今年に入って次々と工事は再開、関連産業の恩恵にあずかってきた地元の経済界などからは歓迎の声が上がる。一方で、大間町の対岸にある北海道函館市が大間原発の建設中止を求めて訴訟準備を進めるなど、原子力に対する批判、安全性への不安は依然根強く残る。
「本県は国策に協力してきた経緯があり、地元の雇用は守られなければならない。同時に、使用済み核燃料の後処理の問題から目を背けてはいけない。命懸けでこの問題に取り組む覚悟だ」。民主党の中村友信氏(57)は2区の地域性を踏まえて、党公約を解説しながら原子力推進を主張している。26日においらせ町で行った街頭演説では、マイクを握った十数分のほとんどを原子力政策に割いた。
民主党政権は9月に決定した新エネルギー・環境戦略で、「2030年代の原発ゼロ」と「再処理継続」という相矛盾する内容を抱え込んだまま、衆院を解散。27日に発表されたマニフェストも「30年代の原発ゼロ」を引き継いでいる。
中村氏は「それを目指すよう、人的、物的な政策資源を投入するということ。日本語の難しさがあるが、現段階では30年代を見通すことは困難で、党の方向性は間違っていない」と、自身の主張するサイクル政策継続との整合性を力説した。
自民党は公約で「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立を目指す」としつつ、「再稼働の可否は3年以内に判断する」と猶予期間を設けた。現段階では、原子力発電継続の可能性を残している。核燃料サイクル政策については言及していない。
依存脱却と再稼働模索が混在する公約の内容は、有権者に分かりづらい。その指摘に自民党の江渡聡徳氏(57)は「まずは3年間検証して安全安心を見極めて原発再稼働に向けていく。どこが曖昧なのか」と色をなして反論した。
「国民の生活が第一」の中野渡詔子氏、民主党の中村友信氏、江渡氏の3人とも、東北電力東通原発は「安全性が確認されれば再稼働するべき」、電源開発(Jパワー)大間原発は「推進」との考えで一致。各党が触れない核燃料サイクル事業も「堅持」で大きな違いはない。
ある陣営関係者は「2区で原発ゼロの主張はできない。争点にしたがる人はいない」とぽつり。ある候補予定者は「原発の是非なら2区では争点になり得ない」と話した。
本県の選挙を長年見てきた青森中央学院大学大学院の木村良一教授(政治学)も、本県が原子力と共存してきたことを理由に「全国的には原発問題が争点だが、本県では(保守陣営は)『脱原発』とは言えない」と解説する。
衆院選本県2区で唯一、原発ゼロを掲げる共産党の小笠原良子氏(63)は26日、むつ市内で開いた集会で、党と同様の「即時原発ゼロ」を全面的に主張した。
「仕事で世話になっているとか、雇用はどうするとかいろいろな話はあるが、新エネルギーの推進で雇用や産業もできる」「これが分かりやすい選択。下北地域では、声に出せないけれど反対という人もいる」と訴える。しかし、即時原発ゼロに伴う電気料金値上げのリスクや、新エネルギー推進に伴う巨額投資の捻出などの具体策の発信はなかった。
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