■ 室蘭・登別、停電なお8千戸…仮鉄柱あす完成へ
【2012年11月29日(木)朝刊】

送電線をつなぐ仮鉄柱の建設現場=28日午前10時55分ごろ、登別市片倉町6
 記録的な暴風雪と大規模な停電から一夜明けた28日の室蘭、登別両市は、電力復旧が進んだが午後7時現在、約8千戸が停電、270人が避難先で冷え込む夜を過ごした。室蘭市内では停電と復旧を繰り返し、市は二転三転する事態に終日振り回され続けた。

 両市役所では、前日に続き幹部や職員が交代で避難所の運営に当たるなど慌ただしく動いた。徹夜組の姿もあり、職員は疲労の色を濃くしながらも「市民の安全のために」と頑張った。室蘭民報社も本紙朝刊と夕刊を各避難所で配布した。

 室蘭市では午前5時半に一度通電が回復し9避難所を3カ所まで減らしたが同9時半すぎ再び停電し対応に追われた。午後1時前には復旧したが、前日来の不安定な供給態勢に職員は「またか」。停電区域は午後8時までに東町、水元町、八丁平の一部約140戸に縮小したため、高砂町会館と市保健センターの2カ所の3人を残し閉鎖。市には地元企業や大手メーカーから支援物資提供の申し出があり、おにぎりなどの提供を受けた。

 停電戸数が当初の2万戸から半減し復旧が進む登別市。片倉町の送電鉄塔の倒壊現場では、撤去作業が本格化。作業員約100人が手分けして高さ26メートルの鉄塔を工具を使い切断、ショベルカーでつり上げ取り除いた。

 倒壊現場の南約300メートルの場所では、新たな送電鉄塔の完成までに利用する仮鉄柱の建設も開始。支柱部分をワイヤー付きのシャベルカーで運搬し、一つずつ地面に打ち立てる作業が進んだ。作業員の一人は「27日から夜通し作業をしているがまだ時間がかかりそう。完成を急がなければ」と疲れた表情を浮かべつつも力強く語った。撤去作業は28日終了し、仮鉄柱の完成は30日の見込み。

 両市役所ともに電源の確保に頭を悩ませた。室蘭開建は登別市の要請を受け、発電機能を持つ照明車2台を派遣。室蘭市は北電の移動発電機車から電源供給を受け、ようやく通常態勢に戻った。

 住民へ細やかな対応をするため、登別市は28日夕方、避難所5カ所のうち1カ所を閉鎖し老人憩の家こぶしの家など3施設を開設、7カ所に強化。午後8時には274人が各施設に避難した。市は通電区域の住民に節電への協力を求めている。

 室蘭など西胆振5市町のごみを受け入れている西胆振地域広域廃棄物処理施設は、収集、受け入れを再開。ただ、げんき館ペトトルと西いぶりリサイクルプラザの研修施設は余熱の供給が受けられないため29、30日は休館する。登別市のクリンクルセンターは30日まで休止。またポンプ設備が通電せず、室蘭市水元町の30戸で断水が続いている。
(野村英史、粟田純樹、北川誠、吉本大樹)


◆―― 登別温泉街に危機感…損害4億円超

 登別観光協会の唐神昌子会長は28日、大規模停電による登別温泉街の損害額が、停電が続く見通しとなった30日までの4日間で、少なくとも4億円超に上るとの試算を明らかにした。同日管内入りした道の多田健一郎副知事に伝え、災害救助法に基づく支援などを求めた。

 同協会が同日までに、ホテルとテーマパークのキャンセル、人件費、土産店の売り上げなどから試算した。

 電力不足から温泉街のホテルの多くが28日から30日までのクローズを決めた。関係者によると4日間で千人余りの受け入れを断った施設もあり、損害額は4億円を超えたという。

 温泉街にとって電力回復のリミットは30日だ。土曜日となる12月1日は「どこの施設も多くの予約が入っている」(同協会)状況。また、客を他地域に振り替えるにも「道南圏の予約もすべて埋まっている」からだ。

 唐神会長は登別、室蘭入りした多田副知事に対し、今回の大停電で受けた温泉街のイメージダウン回復への協力、災害救助法適用による支援などについて求めた。

 岩井重憲副会長は取材に対し「客足回復へ行政による冬季プロモーションなども必要」と述べ、唐神会長は「温泉始まって以来のピンチ。一秒でも早い回復を要請した。絶対に30日までに回復してもらわなければ困る」と危機感を募らせた。

 多田副知事は登別、室蘭両市の避難所や鉄塔倒壊現場近くなどを視察。「道としても状況を把握し登別市などが対応に困らないように意識合わせをしていきたい」と語った。
(鞠子理人、粟田純樹)


◆―― 大停電、後遺症大きく

 暴風雪で丸一日以上停電に陥った西胆振地方。室蘭市内は28日夜までにほぼ全域で復旧し、マチ場は通常の姿を取り戻しつつある。が、当面の休館を余儀なくされた公共施設やきょう29日も休校や午前授業となる小中学校があるなど、停電の後遺症が依然として残っている。

 胆振管内の小中学校、高校は28日、34校が臨時休校。このうち、室蘭市内では小中学校26校のうち14校が休校した。残る12校は給食なしの午前授業だった。室蘭・旭ヶ丘小(入江祐史校長、406人)では午前11時半ごろから、子どもたちが迎えに来た保護者の車に乗り込んだり、教諭の引率によって集団下校した。

 きょう29日も「停電が再発生した際、給食センターからの確実な配給が保証できない」(同市教委)とし、陣屋小を除いた25小中学校で給食なしの午前授業とする。また、陣屋小は施設不具合による停電が継続しており、対応が決まり次第、保護者らに連絡する方針だ。

 一方、市内全戸の3割程度で停電が続く登別市。28日は小中学校計13校すべてが臨時休校。きょう29日と30日は富岸小と青葉小、緑陽中は給食なしの午前授業で対応。ほかの10校は、12月2日まで臨時休校が続く。

 ◆ 室蘭入江プ−ル、機械室浸水し当面休館に

 室蘭市入江町の入江運動公園温水プールでは、「当面の休館」が決まった。地下の機械室が水浸しとなり、使用できなくなったため。停電で排水ポンプが作動できなくなったのが要因で、復旧の見通しは立っていない。

 同プールによると、機械室には地下水などをためる水槽がある。水がたまるとポンプで排水されるが、このポンプが停電で動かくなり、27日は最大で70センチほど浸水した。

 懸命の排水作業を実施したが、使えなくなった機械のうち、場合によっては取り替えの必要もあるため「復旧のめどは未定」(同プール)という。今野琢磨施設長は「ご迷惑をおかけします」と話す。

 ◆ 市立水族館、魚類に酸素送り続ける

 室蘭市祝津町の市立室蘭水族館では停電発生当初から発電機を持ち込んで、生物に酸素を送り続けた。

 27日は職員2人が泊まり込んだが、停電が続いた28日も長期化に備え発電機や車両の燃料確保に当たった。「魚類に被害があれば、来季にも影響が出る」と木村昭夫館長。復旧に胸をなで下ろすが「生き物を扱うので停電は大変」と語り、電力の安定供給を願っている。

 ◆ ディノス室蘭が2日間上映休止

 東町のディノスシネマ室蘭では停電の影響で27、28両日の上映をすべて取りやめた。28日午後6時からは室蘭でロケを行った「妖怪人間ベム」の試写会が中止となった。奥山英樹営業主任は「上映中に停電になるとお客様に迷惑が掛かる」と話していた。きょう29日から上映再開を予定している。

 ◆ 「東京原発」の上映取りやめ

 室蘭シネマクラブの「東京原発」映画上映会が、27日に室蘭市民会館で開かれたが、上映途中に停電し、やむをえず中止した。関係者はチケット代の払い戻し対応に追われた。

 午後1時半からの昼の部の上映30分前に一度停電したが、すぐに復旧したため上映を決めた。だが上映開始から15分後に再び停電、10分間待ったが復旧する見込みがなかったため、中止にした。夜の部の上映も取りやめた。

 同会の富盛保枝さんは「こんなことは初めてで、お客さんも残念がっていた。年明け以降にまた上映できたら」と肩を落としていた。前売りチケットは約200枚出ており、「購入した方は払い戻しをしますので、連絡を」と呼び掛けている。

 問い合わせは富盛さん(室蘭市知利別町・ぐりんぴーす、電話0143・43局2895番)へ。
(本社・社会部)


◆―― 再ダウンに交通網混乱

 28日午前9時半ごろ、再び停電した室蘭、登別両市内では、国道も含むすべての交差点で信号機が消え、交通網は混乱した。車は交差する道路の状況を見ながら恐る恐る直進、右左折し、横断歩道を渡れない歩行者は呆然と立ち尽くした。

 登別市鷲別町のコープさっぽろしがイースト店(平舘康祐店長)では、午前7時半ごろ電気が復旧し、従業員らが慌ただしく開店準備に追われていたが、その矢先、再び電力を失った。

 店頭では従業員が来店した客に、営業再開の見通しが立たないことを伝え、明かりを失った店内では、外から入る光や、懐中電灯のか細い明かりを頼りに商品を陳列。平舘店長は「アイスクリームなど冷凍品は溶けてしまうので、廃棄するしかない。復旧してもすぐ停電するので振り回されっぱなしだ」と頭を抱えた。

 近くのリサイクルショップでは、中古のポータブル式灯油ストーブが前日中にすべて売り切れたという。経営する男性(68)は「停電でここまで混乱したのは初めて」と電力を失った生活のもろさを実感していた。
(菅原啓)

【写真=送電線をつなぐ仮鉄柱の建設現場=28日午前10時55分ごろ、登別市片倉町6】




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