とある取材で「50代の人と20代の若者では、セーフティネットに対する考え方が違うんじゃない?」という話をしてみたのでメモがてら。
会社がセーフティネットとして機能している
特に分かりやすいので、生活保護をテーマにして考えてみましょう。
「上の世代」という括りも世代論っぽくてよくないのですが、「生活保護になんて頼りたくない。自力で生きていくのが大人だ」と考えている人って、どうも上の世代の多い気がするんですよね。
若者世代になると、そんな余裕もないためか、「国が用意している仕組みに頼って何が悪いの?」と、フラットに認識している人の割合が増えてくる感じも抱きます。
何度か書いてますが、かくいう僕もそのひとりで、自分は一時的に恵まれているだけで、来月にでも生活保護を貰ってもおかしくないと思っています。フリーランスは、事故ったり病気でもしたら、すぐに食えなくなってしまいますから。その意味で、僕からしたら生活保護に頼ることは恥でも何でもありません。
ふと問題提起したくなったのは、「自力で生きていくのが大人だ」という類いの「自己責任論」を振りかざす人たちの一部は、実際「会社」に保護されているから、そんなことがいえるんじゃないかな、と思うんです。
本人は誇りを持って自己責任でやっているつもりでも、実は会社が代わりに責任(リスク)を取ってくれている、というわけです。一度会社に入ってしまえば、そうそうクビになることってないですし、毎月給料は入ってきますしね。
守られながら、他罰的になる人たち
自己責任論を振りかざし、「自力で生きていくのが大人だ」と誰かを断罪する人は、極論、フリーランスなり起業家になってみるべきでしょう。一度会社というセーフティネットから外れてみなさい、ということです。
僕はまさに体験しましたが、会社を辞めてフリーになると、いかに自分が会社に守られていたかを強烈に実感することになります。「体を壊したら終わり」の度合いは、会社員時代とは比べ物になりません。
こういう不安定な状態に置かれて、「生活保護になんて頼りたくない。自力で生きていくのが大人だ」といえる人はそう多くないでしょう。そんな言葉を吐けるのは、よほどの資産家か、創造力が不足している人のどちらかです。
今の若い世代には、非正規雇用やフリーターなど、そもそも会社というセーフティネットに属することができない人も数多くいます。
会社に守られてきた上の世代が、そうした若者が生活保護なり、他人なりを頼りにする姿を見て、「最近の若者は甘えている!自立せよ!」と叱咤を飛ばすのは、想像力が欠けていると思います。あまりにも他罰的すぎやしないでしょうか。今は時代が違うのです。
…と、世代論に関するインタビューを受けてそんなことを考えました。
なお、僕がこの記事で批判しているのは「守られながら、他罰的になる人」たちです。会社員はリスクを取っていない、フリーランス、起業家は不安定で頑張っていて偉い、そういう議論がしたいわけではありません。
先入観で批判するのではなく、もっと個別の事情や社会的な背景を考慮して、他人に優しくなれる人が増えればいいなぁ、と理想主義的な態度で、こういう話をしております。
最後に宣伝。セーフティネットにまつわる話は新刊でも書いておりますので、ご興味があればぜひご一読ください。