93 名前: ある夏の思い出 投稿日: 02/06/28 02:55 ID:sQxqH03I
俺は昔、本物の引きこもりだった。
そんな俺に、家から出る機会を与えてくれたのが初代バーチャロン(以下チャロン)、
ガンダム好きのメカヲタだった俺は、引きこもり欲求を押さえつけ、
自転車で1時間近くかかるセガに、足しげく通う事になった。
ファミコンのコントローラーでしかゲームをした事の無かった俺に
あの二本レバーは厳しく対戦は連敗、CPUはヤガランテに惨殺される日々が続いたけど、
俺はそれでも満足だった。
ある日、そのセガに言ってみると、大学生風のスラリとした兄ちゃんが
チャロンをプレイしていた、他の奴らとは明らかに違う動きをする兄ちゃんの戦いに、
俺はいつしか、心を奪われていた。
幾度となく入る乱入対戦を退け、俺がどうしても倒せないヤガランテを屠り、
ついにはクリアしてしまった。
初めて『勝つための動き』を見せ付けられたその時から、俺のチャロンは始まったのかもしれない。
続く
94 名前: ある夏の思い出 投稿日: 02/06/28 02:58 ID:sQxqH03I
兄ちゃんと俺で使用キャラは激しく違ったけど(俺ライデン、彼バイパー)
基本的な所(避けて打つとか、後出し有利の法則など)を必死で盗んだ俺は、
やっとこレバ操作にーに慣れてきた事もあり、2・3日も経たずにCPU戦をクリアし、
対戦でもそれなりに勝てるようになってた。
元々負けず嫌いだった俺は、次第に対戦の没頭していくようになっていた。
対戦を求めセガへと通う日々が続く、とはいえ、当時の俺は引篭明けの厨房、
異様な格好(タンクトップ・半ズボン・紫の麦藁帽子)に典型的なヲタク容姿(小太り・目つき悪)
そして異臭(当時は真夏だが、毎日風呂と歯磨きをしていなかった)あげくに異常なまでの内気さから、
対戦者とのコミュニケーションは無きに等しく、一人黙々と研究を続ける形になった。
研究の成果からか、いつしかそのセガワで俺に適う奴は居なくなっていた…ただ一人を除いて…
「あの」兄ちゃんだけは、俺の越えられない壁だった。
続く
95 名前: ある夏の思い出 投稿日: 02/06/28 02:58 ID:sQxqH03I
兄ちゃんは午後5時を中心にほぼ毎日セガに出没していた、
いつしか俺も、兄ちゃんとの対戦だけを求める日々に変わっていった。
研究ノートとメストの記事を頼りに日々挑み続ける俺、対する兄ちゃんは
当時の俺は知る由も無い高等技術(漕ぎなど)で俺をあしらい続けた、
ライデン一本槍の俺に対して、兄ちゃんは豊富なサブキャラを使って、
手を変え品を変え相手をしてくれた。
勝率は良くて3割半、酷い時には20連敗くらいした事もあった。
日々兄ちゃんと対戦を続ける俺、それでさえ、
筐体越しに視線を合わせる事はあっても、言葉を交わすことは無かった。
そんな日々が一月ほど続いた後、そのセガでチャロンの店舗大会が開かれる事になった。
まだ引篭もり気質の残っていた俺は、大勢の人前に出るのは気が進まなかったけど、
兄ちゃんとの決着をつける意味もこめて、意を決してエントリーをした。
そして当日…
続く
96 名前: ある夏の思い出 投稿日: 02/06/28 02:59 ID:sQxqH03I
大会当日、20数名の参加者の中に兄ちゃんは居なかった。
常連との接触すら無かった俺には、事情を知るすべは無かった。
取り残されたような気持になる俺、だも大会は滞りなく進行して、
俺の優勝で幕を閉じた。
丁度その頃から、兄ちゃんがあまりセガに顔を出さなくなり始めた、
俺のチャロン熱も、大会を境に下火になり始め、通う事も無くなって行った。
そして何より、両親(ゲーム代を出してくれてた)の進めで復学が決まってしまい、
俺のチャロン漬けの日々は、終わりを告げることになった。
結局、最後の最後まで兄ちゃんと話をすることは無かった。
97 名前: 兄ちゃんへの手紙 投稿日: 02/06/28 03:00 ID:sQxqH03I
色々なキャラや戦法で相手をしてくれて、本当に楽しかったです。
貴方との真剣勝負を通じて、自らに磨きをかける事の大切さを学んだ気がします。
厨房相手に50人抜きが出来たのも、貴方を相手に鍛えぬいたお陰です。
そして、貴方のさりげない優しさに、本当に感謝しています。
マジでキモヲタだった当時の俺の相手をしてくただけでも、感謝したり無いくらいです。
いつか、俺が台の接続ラインを間違えて、隣でCPU戦始めちゃったときに、
捨てゲーしてまで乱入してくれましたよね、あの時の嬉しさは今でも忘れられません。
何よりも、貴方の存在が無ければ、未だに俺は引篭もり生活が続いていたかも知れない、
結局学校は中退して、チャロンもマタリプレイ専門になっちゃったけど、
立派に社会人やれてるし、別の真剣勝負に人生を賭ける事を見出せました。
本当に心残りな事は、最後まで貴方と一度も言葉を交わさなかった事です。
貴方がここを見ている、僅かな可能性を賭けて、
あの頃の俺には、言いたくても言えなかった言葉を、今送らせて下さい。
―― あ り が と う ――
有明プラザのS・S
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俺は昔、本物の引きこもりだった。
そんな俺に、家から出る機会を与えてくれたのが初代バーチャロン(以下チャロン)、
ガンダム好きのメカヲタだった俺は、引きこもり欲求を押さえつけ、
自転車で1時間近くかかるセガに、足しげく通う事になった。
ファミコンのコントローラーでしかゲームをした事の無かった俺に
あの二本レバーは厳しく対戦は連敗、CPUはヤガランテに惨殺される日々が続いたけど、
俺はそれでも満足だった。
ある日、そのセガに言ってみると、大学生風のスラリとした兄ちゃんが
チャロンをプレイしていた、他の奴らとは明らかに違う動きをする兄ちゃんの戦いに、
俺はいつしか、心を奪われていた。
幾度となく入る乱入対戦を退け、俺がどうしても倒せないヤガランテを屠り、
ついにはクリアしてしまった。
初めて『勝つための動き』を見せ付けられたその時から、俺のチャロンは始まったのかもしれない。
続く
94 名前: ある夏の思い出 投稿日: 02/06/28 02:58 ID:sQxqH03I
兄ちゃんと俺で使用キャラは激しく違ったけど(俺ライデン、彼バイパー)
基本的な所(避けて打つとか、後出し有利の法則など)を必死で盗んだ俺は、
やっとこレバ操作にーに慣れてきた事もあり、2・3日も経たずにCPU戦をクリアし、
対戦でもそれなりに勝てるようになってた。
元々負けず嫌いだった俺は、次第に対戦の没頭していくようになっていた。
対戦を求めセガへと通う日々が続く、とはいえ、当時の俺は引篭明けの厨房、
異様な格好(タンクトップ・半ズボン・紫の麦藁帽子)に典型的なヲタク容姿(小太り・目つき悪)
そして異臭(当時は真夏だが、毎日風呂と歯磨きをしていなかった)あげくに異常なまでの内気さから、
対戦者とのコミュニケーションは無きに等しく、一人黙々と研究を続ける形になった。
研究の成果からか、いつしかそのセガワで俺に適う奴は居なくなっていた…ただ一人を除いて…
「あの」兄ちゃんだけは、俺の越えられない壁だった。
続く
95 名前: ある夏の思い出 投稿日: 02/06/28 02:58 ID:sQxqH03I
兄ちゃんは午後5時を中心にほぼ毎日セガに出没していた、
いつしか俺も、兄ちゃんとの対戦だけを求める日々に変わっていった。
研究ノートとメストの記事を頼りに日々挑み続ける俺、対する兄ちゃんは
当時の俺は知る由も無い高等技術(漕ぎなど)で俺をあしらい続けた、
ライデン一本槍の俺に対して、兄ちゃんは豊富なサブキャラを使って、
手を変え品を変え相手をしてくれた。
勝率は良くて3割半、酷い時には20連敗くらいした事もあった。
日々兄ちゃんと対戦を続ける俺、それでさえ、
筐体越しに視線を合わせる事はあっても、言葉を交わすことは無かった。
そんな日々が一月ほど続いた後、そのセガでチャロンの店舗大会が開かれる事になった。
まだ引篭もり気質の残っていた俺は、大勢の人前に出るのは気が進まなかったけど、
兄ちゃんとの決着をつける意味もこめて、意を決してエントリーをした。
そして当日…
続く
96 名前: ある夏の思い出 投稿日: 02/06/28 02:59 ID:sQxqH03I
大会当日、20数名の参加者の中に兄ちゃんは居なかった。
常連との接触すら無かった俺には、事情を知るすべは無かった。
取り残されたような気持になる俺、だも大会は滞りなく進行して、
俺の優勝で幕を閉じた。
丁度その頃から、兄ちゃんがあまりセガに顔を出さなくなり始めた、
俺のチャロン熱も、大会を境に下火になり始め、通う事も無くなって行った。
そして何より、両親(ゲーム代を出してくれてた)の進めで復学が決まってしまい、
俺のチャロン漬けの日々は、終わりを告げることになった。
結局、最後の最後まで兄ちゃんと話をすることは無かった。
97 名前: 兄ちゃんへの手紙 投稿日: 02/06/28 03:00 ID:sQxqH03I
色々なキャラや戦法で相手をしてくれて、本当に楽しかったです。
貴方との真剣勝負を通じて、自らに磨きをかける事の大切さを学んだ気がします。
厨房相手に50人抜きが出来たのも、貴方を相手に鍛えぬいたお陰です。
そして、貴方のさりげない優しさに、本当に感謝しています。
マジでキモヲタだった当時の俺の相手をしてくただけでも、感謝したり無いくらいです。
いつか、俺が台の接続ラインを間違えて、隣でCPU戦始めちゃったときに、
捨てゲーしてまで乱入してくれましたよね、あの時の嬉しさは今でも忘れられません。
何よりも、貴方の存在が無ければ、未だに俺は引篭もり生活が続いていたかも知れない、
結局学校は中退して、チャロンもマタリプレイ専門になっちゃったけど、
立派に社会人やれてるし、別の真剣勝負に人生を賭ける事を見出せました。
本当に心残りな事は、最後まで貴方と一度も言葉を交わさなかった事です。
貴方がここを見ている、僅かな可能性を賭けて、
あの頃の俺には、言いたくても言えなかった言葉を、今送らせて下さい。
―― あ り が と う ――
有明プラザのS・S