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【社説】

男女差別法改正 もう放置は許されない

 夫婦が選択的に別姓を名乗れることなどを柱にした民法改正の約束は民主党政権でも破られた。国連や司法の“勧告”を受け止め、国会は早急に改正を実現させるべきだ。立法の不作為は許されない。

 日本が一九八五年に女子差別撤廃条約を批准したのを受け、法制審議会が男女差別につながる規定を見直す民法改正要綱を答申したのは九六年のこと。選択的夫婦別姓▽法律婚でない両親から生まれた子ども(婚外子)の相続差別撤廃▽婚姻年齢の男女同一化▽女性の再婚禁止期間短縮−などが盛り込まれ、すぐにも改正をと期待されたが、自民党時代は一部議員の強硬な反対で、改正案は提出されなかった。

 それだけに、要綱案が出て十三年後の二〇〇九年の政権交代では一気に期待が膨らんだ。民主党は野党時代から議員立法として民法改正案を出しており、政権交代後は政府提出予定法案にもしていたが、内部に異論も出て、結局、政府案も議員立法案も一度も提出されずに終わった。

 政治の不作為に対し、司法からは憲法違反の指摘も出ている。婚外子相続差別をめぐる裁判では高裁で違憲判断が相次ぐ。大阪高裁は昨年八月、婚外子の相続分を結婚している夫婦間の子の半分とする規定は憲法に反するとして、婚外子に同等の相続を認め、立法による是正を促す判断をした。

 改正の象徴ともいえる夫婦別姓はあくまで選択制だ。同姓も使えるため、自民党にも改正は当然とみる大物議員がいる。婚姻で姓を変える九割以上は女性で、職場などで通称使用も認められるようになってはいるが、万能でない。元最高裁判事の泉徳治弁護士は「婚姻で姓の変更を強制するのは、自分らしく生きるという人格権の否定につながる」と指摘する。

 改正反対派は「夫婦、親子で別の姓を名乗るのは家族崩壊につながる」と主張する。本当だろうか。法で傷つけられる者の人権や、多様な生き方よりも優先される考え方とは思えない。

 国連人権機関は日本政府に民法の差別規定を改めるよう再三勧告。女性差別撤廃委員会は昨年、改善状況を一年内に報告するよう求めたが、日本政府は国会答弁を並べた無責任な報告をした。

 民主党とともに、議員立法案を提出してきた社民や共産もこの間は法改正への具体的な取り組みを怠ってきた。総選挙では民法改正も候補者に問いたい。人権感覚をみるバロメーターになる。

 

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