【最終回】全ては自分が悪の根源であることに気付きました。
07年5月から始まった連載を今月号で一旦辞めさせて頂きます。
その時は突然訪れるものです。農家の台所銀座店でブチ切れました。「もう会社には来ない。店も潰す。会社も潰す。」と言って引きとめる幹部を土砂降りの雨の中で振り切り帰ったことから始まった社長の出社拒否。やる気満々で改善指導に訪れた店舗で営業時間中に60以上の改善点をノートに記して、アイドルタイムになり責任者たちを集め指導を始めました。
「回転きのこ栽培棚のきのこが何で枯れてるの?」店長「湿度調整が分からないので枯れてしまいました」「金糸瓜のコンポートは何で甘くないの?」レシピ担当者「料理長にはレシピを送ってありました」
詰り積もった不満が些細な現場責任者の無責任で爆発してしまったのです。原因は設立以来5年間以上の思い通りにならない会社経営なので根は深いです。それから2週間以上出社拒否を続け、その間は家に引きこもり国立ファームグループの処遇を考え続けました。
これまでに15億円以上投資をしましたが、使ってしまったお金は所詮成り金の泡銭ですから未練はありません。しかしこれからも年間グループ維持費に1億円以上再投資が必要になるこの事業を辞めてしまえば正直僕の生活は安泰になることでしょう。
答えは始めから分かっていました。「潰せない!」です。バカなりに精一杯努力する残った社員100人近くと、大して役に立たないのに期待して農産物の直接取引をして頂ける篤農家の皆さんがいらっしゃるのに僕から先に諦める訳にはいかないのです。
では何を改めれば赤字体質のこのグループを改善できるのかという答えを見つけ出さなければ先に進めません。要因は数限りなく上げられますが、根底にあるものは素人集団が基本も分からずにカッコを付けてプロにも出来ないようなウルトラCの演技をしようとしていたことです。
僕は20代、テリー伊藤に師事し映像演出を学び、30代、会社を2度起業し2度失敗することで経営の原理を学ぶことができました。この経歴という技術を駆使して前社を10年で100億円企業に成長させることが出来たのです。時代の背景から生まれた高速道路を経歴というチューンアップしたスポーツカーで200㎞オーバーの爆走をして無事走り抜けたのです。ですが高速から下りて、農業という走りづらい砂利道を無免許なのに資金力で買ったオートバイで走り始めました。ですがスピード感覚だけが残っていて200㎞で進もうとして転倒しまくっていたことに気付きました。
そうなんです!転倒する社員が悪いのではなく、アクセルを吹かし過ぎる僕が全て悪かったのです。要因が分かっても改善することは簡単ではありません。ですが、僕以上にモガいていた愛社精神のある社員たちがいました。僕がアクセルから手を離してスピードを落とすことで、僕の代わりにハンドルを操作してくれるそうです。代償として僕が進めていた新規事業を一切中止し、10店舗のうち4店舗の閉鎖、今いるスタッフで出来る範囲の業務を着実に出来るようにするという実に面白みのない会社になってしまうようです。
但し、2・3年で転倒しない会社になった暁には、また僕がアクセルを吹かしまくることも期待してくれています。
僕は来年の春から一度農業の現場にズッポリ入り込んでみようと考えています。ものづくりが一朝一夕で出来ないことをもう一度自分の身体に染み込ませるつもりです。農業改革を謳う国立ファームの代表が生産現場で叩き直される経験はきっと将来の農業業界にとって有効な期間になることと確信して出直しますので、もう一度連載が始まることを期待して頂けますと幸いです。
●高橋がなりTwitter⇒ http://twitter.com/ganari_t
●配信元:国立ファーム
※この記事は『農業経営者』様より許可を頂き、発売から1ヶ月経過した後に掲載しております。
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