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くらし☆解説 「気になるノロウイルスの流行」2012年11月28日 (水)
谷田部 雅嗣 解説委員
季節は本格的な冬に向かっていますが、この時期にも食中毒に注意が必要だということです。
特に今年は食中毒の一つであるノロウイルスによる感染性胃腸炎の流行が心配されています。
谷田部解説委員に聞きます。
Q1:なぜ冬に食中毒を心配しなくてはならないのか
今朝のニュースでも、ノロウイルスなどが原因で起こる感染性胃腸炎の流行が心配されるので注意を呼びかけていました。
食中毒というと夏場のものと考えがちだが、1年中、注意が必要。
冬は寒いから安心ということはありません。
これは去年一年間の食中毒の発生状況をグラフにしたものです。
岩渕:夏場から秋口がピークですが、冬も決して少ないということはないんですね。
件数で見ると、これは発生件数ですけれども、今度は患者の数で比較してみます。
すると、どうですか、冬の方が患者の数は多くなっています。
Q2:なぜなんでしょうか
当然、一件あたりの患者の数が多くなっているからです。
患者の内訳をみると、ノロウイルスなどによる、感染性胃腸炎の患者の割合が大きくなっています。
これが冬の患者数を増やす原因です。
このノロウイルスによる感染性胃腸炎は、12月頃にピークを迎え、2月くらいまでは発生が続きます。
現在、過去5年間で最悪の患者の発生状況になっています。
厚生労働省では一層の注意が必要と呼びかけています。
Q3:感染性胃腸炎というのはどんな病気なんでしょうか
症状
初期は熱が出たり、頭が痛かったり。
感染が進むと気持ちが悪くなり、激しい吐き気や下痢が起きます。
入院が必要になるほど重症化する場合もありますが、直接、命に関わることはまれです。
ただし、赤ちゃんや高齢の方の場合、吐いたものが喉に詰まったり、肺に入って肺炎の原因になったりする場合があるので注意が必要です。
症状は二三日で収まりますが、心配な場合は医療機関に相談して下さい。
対策
残念ながら、ワクチンや直接的な治療法はありません。
症状が収まるまで耐えるしかないのです。
しかし、下痢などによって脱水症状が起きるので、水分の補給が重要になります。
一度にたくさん飲むと吐いてしまう場合もありますので、少しずつ飲むようにして下さい。
原因
こちらのノロウイルスが原因です。
カキなどの二枚貝に含まれている場合があり、食中毒を起こします。
口から入ったノロウイルスは胃を通りぬけ、腸の細胞に感染して爆発的に増えます。
アルコール消毒や酸などでは無力化することはできないとされています。
Q4:なぜ大きな流行が起きるのでしょうか
患者が吐いたものや下痢の中には大量のウイルスが含まれています。
これらの処理が不十分ですと、ウイルスが手などに付着して、ドアノブなど、いろいろな場所にウイルスが撒き散らされて、感染を広める原因になります。
便などの中には耳かき一杯くらいの量で、1億個以上のウイルスが含まれているといいます。
一方で、10個から100個程度のウイルスが口から入ると、感染が起こります。
耳かき一杯1億個ですから、100個とすると100万人に感染させる力があることになります。
一度発生すると爆発的に流行が広がる理由です。
症状が収まっても二三週間はお腹の中にウイルスがいるので、流行を広げる可能性は残ります。
Q5:どうやって防げば良いのでしょうか
専門家によると、このウイルスはアルコールなどで無力化することはできません。
一番良いのは、食品を加熱することです。中まで火が通るようにします。
そして、調理をする前に、まな板や包丁などを熱湯などで消毒することも効果的です。
まな板や包丁などにウイルスが付着していると、生で食べるサラダなどにまぎれこんで感染するという場合もあります。
調理の前に十分に手洗いをすることも重要です。
厄介なことに、ノロウイルスに感染していても症状が出ない場合もあります。
しかし、お腹の中にはウイルスがいます。
トイレに行ったあと、手洗いをしなかったり、不十分な場合は手にウイルスが付着し、料理の中に紛れ込む可能性があります。
飲食店ではこれが原因で患者が発生するケースがあるので、特に注意必要です。
Q6:洗い方のポイントは
外出の後、料理の前などは、手についたウイルスを洗い流すことです。
ポイントは洗い残しを防ぐことです。
普通の石鹸で良いので、手に十分つけて洗います。
特に、爪の部分、指と指との間を丁寧に洗います。
親指は手のひらを合わせただけでは洗えていないので、それぞれ単独にしっかりと洗います。
最後に手首も洗って、水道水などでゆすぎます。
タオルから感染が広がる可能性もありますから、清潔なものを使うことです。
身の回りで流行が起きている場合は、家族一人一人が別のタオルを使ったほうが賢明です。
特に赤ちゃんや高齢の方がいる家庭では、徹底して下さい。
症状が出ていなくても、感染している可能性があるということを忘れてはいけません。
Q7:人から人への感染する場合、どうやって防げば良いのか
患者が吐いたものや、下痢などで汚れた衣類は感染のもとになります。処理には注意が必要です。
そのままにしておくと、乾燥してウイルス含んだまま舞い上がり、感染を広げる可能性があります。
汚物を処理するときにはウイルスが紛れ込んだ飛沫を吸い込まないようにマスクをし、ゴム手袋などを使います。
メガネもした方が安心です。
汚物は使った雑巾なども一緒に密閉できる袋に入れて処理します。
その後、うすめた塩素系消毒剤(200 ppm以上:家庭用漂白剤では200倍程度)でおう吐物や下痢便のあった場所を中心に広めに消毒してください。
洗濯する場合には汚れた衣類を水洗いしたあと、塩素系の消毒剤、漂白剤に浸して消毒します。
直接洗濯機に入れると、洗濯機が汚染されてしまいます。
ただし、安全のために塩素系の薬剤は使用上の注意をきちんと守って使う必要があります。
Q8:注意点をまとめると
感染症ですが、一冬に何度も感染する場合もあります。
注意点の基本的は2つです。
身近に流行が起きているときは、食品は生で食べないこと。
手洗いを徹底すること。
ノロウイルス以外の食中毒も発生します。
冬だからといって油断しないことです。