最古級の平仮名確認 京都・中京の貴族邸宅跡
京都市埋蔵文化財研究所は28日、中京区西ノ京の平安時代の貴族藤原良相(よしみ)の邸宅「西三条第(百花亭)」跡で出土した9世紀後半の土器片に、日本最古級とみられる平仮名の文字が書かれているのを確認した、と発表した。文化の中心地だった平安京でのまとまった出土は、平仮名の成立過程の研究に大きな影響を及ぼしそうだという。
土器片は、西三条第の池跡で出土した。土師器(はじき)の皿など約20点に墨で平仮名が記されていた。判読できない文字や欠字も多かったが、「枕草子」に出てくる「ひと(人)にくし」の記述があった。また、「かつらきへ(葛城へ)」や「なかつせ(中つ瀬)」など、神楽歌や日本書紀にみられる表現も記されていた。
同時期の仮名文字は、宮城県の多賀城跡からも出土したが、万葉仮名の影響が残っていた。西三条第の墨書土器は、漢字も交じっていたがほぼ平仮名で、これまでは10世紀後半にしかみられなかった、続き文字の連綿体も確認された。
調査に関わった京都大の西山良平教授(日本古代・中世史)は「文化に造詣の深い良相の西三条第で平仮名の使用が進んでいたことが分かった。平仮名の形成期がさかのぼることになり、今後の研究で平仮名の歴史を変える可能性もある」と話している。
上京区の市考古資料館で、30日から12月16日まで出土品を展示する。
<仮名文字>漢字を基に日本で読みやすく作られた文字。日本語の音を表すために漢字をあてたものが万葉仮名。万葉仮名の草書体が草仮名で、さらに崩して簡略化したのが平仮名。主に女性が用いたため「女手(をんなで)」とも呼ばれ、和歌や文学に好んで使われた。
【 2012年11月28日 23時50分 】