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谷繁元信が気に掛ける捕手の逸材、DeNA・高城俊人 (2/2)
■谷繁「昔の自分を見るよう」
人懐っこい笑顔でそんなことを話す高城には、『何とかしてあげたくなる』ような、人として愛されるオーラを感じさせる。その効力が及ぶのは自軍の投手陣やチームスタッフだけではない。高城が目標とするあの名捕手も、その存在を気に懸けてくれているという。
「交流のあるスコアラーの方から『シゲ(谷繁)は高城のことを昔の自分を見るように思っているらしい。お前のプレーをすごく楽しそうに見ているぞ』って言われて。めちゃくちゃ嬉しかったですよ。はじめて直接アドバイスを聞きに行かせてもらったのは、10月の中日2連戦(9月30日、10月1日)の時ですね。キャッチングの技術的な話ですけど、すごく親切に教えてくれて、最後にこう言ってくれました。『今のお前は自分の実力で“試合に出ている”んじゃない。最下位というチーム状況の中で、“試合に出させてもらっている”んだ。そのことを忘れずに頑張れよ。俺もそうだったから』って。もう嬉しくて嬉しくって、その後、記者の人たちに何を話していたのか聞かれたんですけど、詳しくは話しませんでした。谷繁さんと僕だけの秘密にしたかったんで(笑)」
■「来年の高城を一番楽しみにしているのは誰よりも僕自身」
高城が今年1軍で得た大きな経験は、試合によるものだけではない。谷繁のアドバイスも含め、1軍の最前線で活躍してきた選手たちの姿勢や言動が、高城の野球に対する考え方・取り組み方に大きな影響を与えたという。
「シーズン中、ロッカーで(森本)稀哲さんがほかの選手に話していた言葉が聞こえてしまったことがあったんです。『この世界はセンスや技術じゃなくて、最終的には死にもの狂いで練習して来たヤツが上がってくるんだ』って。もう、ハッとなってその場ですぐにメモを取りましたよ。こう言うと生意気に聞こえるかもしれませんけど、今まで一生懸命練習はしていても、死ぬ気で野球に打ち込んだことはないんです。だから、今年の秋のキャンプ、そしてオフが楽しみでしょうがない。これまで自分が経験したことのない、死にもの狂いで練習に打ち込むってことを経験したら、来シーズンどんな自分になっているのか……。そりゃキツイと思いますよ。でも、その先の自分のことを考えると練習したくてウズウズするんです。来年の高城を一番楽しみにしているのは誰よりも僕自身だと思います」
シーズン終了後から練習に没頭している高城だが、その初めの実戦となるフェニックスリーグではチームトップの打率を残し、コンパクトに改良したスローイングも良い感じにはまるなど圧倒的な存在感を見せつけた。中畑監督が言うように、ベイスターズが優勝できるチームに生まれ変われるかどうかは、この先5年間の高城の成長いかんに懸っていると言っていい。明日のベイスターズのために、この秋、地獄の奄美で見事に死んでくれ。そして、生まれ変わってこい!
<了>
■高城俊人プロフィール
背番号32 捕手 右投右打 1993年5月3日生まれ
九州国際大付属高出身
【2012成績】
1軍:45試合、打率1割6分9厘
ファーム:64試合、打率2割6分2厘、打点16、出塁率3割2分7厘
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村瀬秀信1975年8月29日生まれ、神奈川県茅ケ崎市出身。プロ野球とエンターテイメントをテーマにさまざまな雑誌へ寄稿。幼少の頃からの大洋・横浜ファン。著書に「プロ野球最期の言葉(イースト・プレス)」などがある。来春には「さよならベイスターズ」(仮題・双葉社)を上梓する予定。 |