そのひとつとして、わたしたち日本人が近現代の歴史にあまりにも疎いという現実も浮かび上がってきた。「尖閣」「竹島」にもつながる日本とアジアの歴史を、きちんと理解できていないのではないか。そんな指摘が少なくない。
たとえば、太平洋戦争中に日本の軍政下にあったインドネシア・バリ島を観光で訪れ、現地の人から過去を教えられて当惑する。学校の授業では、そんなことは習わなかったというわけだ。
高校の授業を見直せ
これでは、将来の日本を背負う若者が周辺国の同世代と論争をするにしても、ちぐはぐな展開になってしまう。歴史についての基礎知識を持っていなければ感情的な反発に走ったり、沈黙に陥ったりするばかりだろう。
そうした認識に立って、まず学校での歴史教育のあり方の根本的な見直しを提案したい。その中心になるのは、義務教育化した高校での教育内容の改革である。
現在の高校では「地理歴史」という枠のなかに世界史、日本史、地理の3科目があり、これを組み合わせて履修する。1994年から世界史は必修、日本史は地理との選択が可能となった。
これには事情がある。日本史は小中学校でもあらましを学ぶが世界史には踏み込まない。ならば高校ではグローバル化に合わせて世界史に重点を置くべきだという考え方が強まり、必修化された。
しかし、高校段階で日本史にまったく触れずに卒業する生徒が少なくない現状は、やはり好ましくない。そもそも、世界史と日本史を画然と切り離して教えることにも無理があろう。
そこで考えたいのが、歴史科目の再編だ。日本学術会議は昨年、日本史と世界史を統合した必修科目「歴史基礎」を新設するアイデアをまとめた。学術会議は近現代と東アジア地域を意識した内容を念頭に具体案を詰めている。
科目の再編は学習指導要領の改訂が必要だが、東アジアを中心に近現代を軸にした歴史を学ぶという基本的な方向は十分検討に値する。現行の日本史でも、一般的な「B」のほかに、おもに普通科以外で使われる近現代限定の「A」があるほどだ。歴史の教え方には柔軟な発想があっていい。
ただ、新しい科目をつくるにしても、次の指導要領の改訂は2018年以降だ。それまでの間にも、できる改革はどんどん進めていく必要があるだろう。
古代から21世紀まで教える項目が膨大で、近現代が手薄になってしまうという声が教育現場には多い。項目を精選し、世界の中の日本、アジアの中の日本という視点で授業を展開できないだろうか。文部科学省は現場の創意工夫をなるべく認めるべきだ。
とはいえ中国などの反日教育の向こうを張り、戦争を美化してナショナリズムをあおるような教育を推し進めるのは不毛だ。逆に、戦前の社会をいたずらに重苦しいものととらえるのもよくない。歴史を冷静に、多面的に考える姿勢こそが周辺国との相互理解につながるだろう。開かれた歴史教育を心がけるべきである。
大人も教養深めたい
項目の丸暗記に偏りがちな授業を見直す必要もある。「なぜ、そうなったのか」「そのとき、もし別の道を歩んでいたら……」。歴史教育で本当に大切なのは、こういった思考力や、意見をたたかわせるディベート力だ。
教育関係者のなかには、若者が近現代史どころかバブル期あたりの「近過去」にさえ疎いという意見がある。ならば近過去から徐々に遡って近現代を考えてもいい。従来の歴史科目の枠組みに収まらない授業づくりが求められる。
こうした改革を進めるためには、大学入試も転換しなければならない。暗記力を試すような入試で歴史に対する思考力を問えるだろうか。私立大のマンモス入試などは、とりわけ改革が必要だ。
歴史の教養を深める必要があるのは、若者だけではない。多くの日本人が、尖閣、竹島に最近までは関心が薄く、中国で反日行動が燃えさかった9月18日(満州事変の発端となった柳条湖事件の発生日)の意味を知らない。大人も大いに学ばねばならない。
そのための素材を提供するのは、新聞も含めてメディアの重要な役割だと心したい。政府も政治や外交の史料を積極的に公開してほしい。来し方の誇るべきも悔やむべきも、虚心に顧みる。成熟国家の条件ではないだろうか。
近現代、韓国、竹島
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