プレシャス!宝塚
2010年2月22日
新人公演主役に抜てきされた彩風咲奈。「自分のウリはこれだ、というのを見つけたい」と頼もしい(撮影・岡潤一)(プロフィール)
新たな若手スターが誕生するのだろうか。入団3年目の雪組男役・彩風咲奈が23日、宝塚大劇場で行われる「ソルフェリーノの夜明け」の新人公演で初主役に抜てきされた。音楽学校在校中に生徒募集の広告モデルを務め、首席で卒業。その年の阪急沿線初詣でポスターも務めるなど、エリート街道を突き進む期待の若手。それでも、彩風は「いつまでも無色透明な男役じゃいけない。今回の舞台で自分の色を見つけたい」と足元をしっかり見つめ、飛躍を誓った。
透き通るような白い肌、笑うとくっきりのぞく八重歯。その素顔はまだまだ初々しい。入団3年目のホープ彩風が新公主役に抜てきされた。「まさか自分に(主役が)来るとは思っていなかったので本当にビックリしました。初めて『足が震える』というのを経験しました」と、その時の衝撃を振り返った。
赤十字を創設したアンリー・デュナンの半生を描く感動作。本公演ではイタリア兵を熱演している。「私にはまったく引き出しがないので、水(夏希)さんの役へのアプローチの仕方を参考にして盗みたい」と必死だ。
新公主役こそ初めてだが、その経歴は輝かしい。舞台でも一歩一歩、確実に階段を上ってきた。競争率の高い音楽学校に初めてのチャレンジで合格。在学中に同校の生徒募集のポスターモデルを務めた。しかも首席で卒業、その年に1人しか選ばれない初詣でポスターモデルも務めた。まさにパーフェクトガール。舞台での経歴を見ても、その期待度の高さがうかがえる。
組配属を受けてわずか2度目の大劇場公演新公で3番手男役・音月桂の役に大抜てきされた。「右も左も分からない状態で事の重大さが分かっていませんでした。“とりあえずやらなきゃ”って必死」ともがき苦しんでの熱演だった。
続く昨年3月の「ZORRO」では、現星組準トップ凰稀かなめが演じたオリバレスを熱演。「悪役だったので、とにかく思いっきりやったって感じだった」。そして同7月の「ロシアン・ブルー」で準トップ彩吹真央の役が付き、銀橋でのソロやせり上がりを経験。「1人で大きな空間を埋めることがどれだけ怖いか」と舞台の怖さを改めて知った新公だった。ステップアップする中で、周囲からの期待を確実に自分の力とし成長を遂げてきた。
しかし、新公初主役となると注目度はこれまでとはケタ違いで異質だ。彩風自身、その空気を一番感じ取っているに違いない。そんな中で彼女は自分に大きな宿題を課した。「自分の色を見つけたい」。
真剣な目で彼女は続けた。「以前演出家の先生から『いいんだけど、君には色がない。今は無色透明でいいけど、透明のまま終わりそう』って言われたんです。それが頭から離れなくて。だから今回、せっかく主役をさせていただくことで悪いところもいいところも見えてくると思う。あらゆる面で自分を知り、自分のウリじゃないけど自分の色、私はこういう男役ですっていうのをみつけたい」。
自分色が見いだせなかった今までに区切りをつけたい。抜てきの裏で彩風は自分とも闘っている。
◆「ソルフェリーノの夜明け」 1859年、イタリアのサルディニアが、オーストリアからの独立を目指し第二次イタリア独立戦争が始まった。
両軍の死傷者は野戦病院からあふれ、教会にも収容されていた。激戦地ソルフェリーノをジュネーブからパリに向かう旅行者アンリー・デュナン(彩風、本役・水夏希)が通りかかる。デュナンはたまらず負傷兵を抱えサン・ニコラ教会に駆け込んだ。しかし、看護婦のアンリエット(愛加あゆ、本役・愛原実花)は、その兵士がオーストリア兵と知り手当を断る。彼女はかつて、両親をオーストリア兵に虐殺され人一倍の憎しみを抱いていたのだ。
毎日大勢の負傷者が運び込まれるサン・ニコラ教会は、もはや設備も人手も限界だった。この状況を見かねたデュナンは、両軍がにらみ合う激戦地の中、負傷者を抱えて通り過ぎ、大きな病院のあるマントヴァまで行こうと、とんでもない提案をする。
☆彩風咲奈(あやかぜ・さきな) 2月13日生まれ。愛媛県大洲市出身。大洲北中を経て07年「シークレット・ハンター」で初舞台。身長173センチ。愛称「さき」。
「プレシャス!宝塚」は、日刊スポーツ(大阪発行版)に連載中です。
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