バナー広告から「スポンサー記事」にシフトするウェブメディアのマネタイズ戦略

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2012/11/28


要するに…
・ウェブメディアのマネタイズ戦略において、バナー広告から「スポンサーコンテンツ」へのシフトが見られる
・企業、メディアにコンテンツ制作能力が問われる
・「ステマ」騒動の再来も?


相変わらずknakataさんがしれっと重要なことを指摘なさっています。

ブランドジャーナリズムの動きから注目されているコンテンツプラットフォーム|IT企業のPR


コンテンツ型広告へのシフト

以下、ブログ記事より引用です。

そのため、今後ブランドジャーナリズムを実践していく企業にとっての最大の課題は、人々の関心を惹くコンテンツ作りと共に、それらのコンテンツをいかにして多くの人に波及させていくかということになります。

この二―ズを満たすために最近米国のメディア(例えば、Boston.comForbesHuffingtonなど)は、自社メディアをコンテンツプラットフォームとして企業に使わせる有料サービスを提供し始めています。

有料サービスで提供するコンテンツなので、いわゆる「スポンサードコンテンツ」となりますが、コンテンツの内容次第で読者に読まれるかが決まりますので、Forbesの事例が示すように、企業の有料コンテンツが、Forbesの記者が書いた記事を含むランキングの中で上位に入っています。つまり、コンテンツの中身次第ということです。


「スポンサードコンテンツ」型のマネタイズはいたるところで観察されるようになっており、例えば世界最大のテックメディアMashableはもちろん、先日リニューアルしたTheNextWebなんかも導入しています。


例えばMashableのこちらのコンテンツ(「食べ物の写真をキレイに撮る方法(Food Photography: How to Get the Best Shot)」)。こちらは彼らが展開する「BrandSpeak」という広告プログラムによる記事になっています。スポンサーはサムスン。ちょっとややこしいですが、サムスンのブログにアップされたコンテンツを、Mashableに有料配信している形です。

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他にもマーケティングソリューション会社のHubspotが提供する「2012年のリードジェネレーショントレンド—あなたが今すぐやるべきことまとめ(7 Lead Generation Trends For 2012 — What You Need to Do Right Now [SPONSORED])」なんて記事も。B2Bの企業にとっては効率の良いマーケティング手法になるのかもしれません。

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「スポンサー記事」型のマネタイズのシフトには、画面の小さいスマートフォンの普及と、レスポンシブデザイン化も関係しているように思えます。

スマホだと従来のようなバナー広告は設置しにくいですし、レスポンシブだとバナーの設置やクリエイティブ変更なんかが手間になるわけです。手間と効果を考えると、記事広告の方が高パフォーマンスになる、という戦略的な判断でしょう。

現に、先日リニューアルを果たしたTheNextWebには、ほとんど広告が掲載されていません。スマホビューにいたってはバナー広告が表示されていません。彼らはスポンサー記事とカンファレンス収益を主なマネタイズ手段にしているようです。

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国内ではNAVERまとめが地味に手がけてますね。右カラムに出てくる「まとめ編集部」が作成したコンテンツは、基本的にスポンサーコンテンツとなっています。

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例えば「自由度MAXな高校生カップルにツッコみまくる人たち」というコンテンツは、BeeTVというドラマの広告となっています。PV数は1.4万ほど。

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ソニーマーケティングがスポンサードしているこちらのコンテンツは、なんと36万PV。すごい数字ですね…。

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コンテンツ制作能力が問われる

このシフトは様々なことを示唆しているでしょう。

まずは、knakataさんが指摘するように、コンテンツを作る能力が企業・ウェブメディア運営者には強く求められることになります。

読んでよかった、面白かったと思えるような記事コンテンツを生産するためには、テレビCMやマーケティングキャンペーンを制作するのとは、また別のスキルが問われます。オンラインでやる場合には、ウェブ特有の「ネット文脈」を理解する必要も出てくるでしょう。

既にコモディティ化していそうなスキルに思えますが、「ウェブで受ける」コンテンツ制作ができる人材は、それほど多くありません。僕もなかなか当たりません…。


「ステマ」との微妙な境界

NAVERまとめのスポンサーコンテンツはけっこう微妙なラインですが、「普通のコンテンツだと思ってみたら実は広告だった」という印象を与えてしまいかねないのも、懸念のひとつといえるでしょう。

調べてみたら、2ch界隈ではちょっと叩かれてますね。個人的にはスポンサードであることを、ヘッダーなどでもう少し分かりやすく明記した方がよいと感じます。今は「提供:ソニーマーケティング株式会社」のひとことだけなので、スルーする人が大半でしょうね。

ソニーが NAVER まとめでまとめ風広告を出していることが発覚


もっというと、先日の2chまとめ風広告のように、コンテンツを装った広告も出てきてもおかしくありません(というか、もう出てきてますね)。ステマ騒動もありましたし、まともな会社はやらないと思いますが…。


スポンサーコンテンツ型のマネタイズへのシフトは、ある程度不可避だと思います。端末の画面がものすごい巨大化するか、バナー広告の収益性がものすごい向上でもしないかぎりは、どんどん状況は変わっていくでしょう。

本当はうちのブログもコンテンツ型広告やりたいんですよね。が、手間を考えると1本2〜3万円ぐらいじゃないとやってられないのが現実だったりします。成果も保証できないですし。どうにもなかなか手を出せずにおります…。

うちのような個人メディアの場合は、有料メルマガやコミュニティ型マネタイズの方が現実的かもしれません。


関連本。「メディア」について理解を深めたいなら必読です(ブックレビュー)。