脳の本-紹介・書評

HOME                                サイト内検索

脳機能学者やめてしまったのか!? ドクター苫米地

■脳機能学者の名前がどこにもない!


6月26日の読売新聞朝刊にドクター苫米地の新刊本広告が載っていました。「正義という名の洗脳」という本です。新聞でこの人の新刊書広告を見るなんて久しぶり。肩書きには認知科学者と出ています。

ユーバリーメロン大学ではなく、カーネギーメロン大学博士。失礼しました!



あれっ? と思いました。

ドクター苫米地と言えば天才脳機能学者、脳機能学者と言えばドクター苫米地。著者の中では必ずと言っていいほど、「私の専門は脳機能の研究です」と強調しています。これまで出した多くの本にも肩書きが脳機能学者と記されている。私の知る限り、脳機能学者を名乗っている人はこの人しかいない。

脳機能学者=ドクター苫米地、です。

なぜいまになって認知科学者なのか? こんなこと初めて。調べてみると、苫米地さんの最近の本は著者肩書きがすべて認知科学者になっています。この本の著者情報にも、

認知科学者(機能脳科学、計算言語学、認知心理学、分析哲学)
計算機科学者(計算機科学、離散数理、人工知能)
カーネギーメロン大学博士(Ph.D.)

と載っています。苫米地さんの名を知らしめる「脳機能学者」はどこにもない。ドクター苫米地ブログでも脳機能学者ではなく認知科学者になっています。こちらのプロフィールでは機能脳科学者になっている。私は以前この人に関する記事で、ドクター苫米地は「脳機能学者やめられない病」なのか、と書いたことがあります。

苫米地さんはそのくらいこの肩書きにこだわっていましたから。

ピーンときましたね。じつはこの人には、脳機能学者を捨てざるを得ない深刻な事情があるのです。「脳機能学者の正体見たり」という私が書いたレポートがありますが、

原因はたぶん これ! なんでしょうね。

脳科学者は誰もが知っている名称ですが、脳機能学者の方は決してポピュラーな名称ではありません(ドクター苫米地の専売特許のようなもの)。脳科学者ならマスコミで知られている学者が何人か思い浮かぶけど、脳機能学者と聞いてもわからない人がまだいて、どんな人が脳機能学者なんだろう、とWeb検索してみるとこの検索結果ページが出てくる。

「脳機能学」で検索してもこういう検索結果になります。ドクター苫米地としては非常に困るわけですね。このままだとこの人の怪しげな脳機能学商法に重大な支障が出てくる。これまでの脳機能学者としての「名声?」も台無しになる。

脳機能学者を続けていては喰っていけなくなる?

そう思ったのかどうかはわかりませんが、苫米地さんは危機感を覚えた。焦った。考え抜いた末に脳機能学者をやめ認知科学者の方へにシフトした。もう脳機能学者には戻れないのではないでしょうか。

この人の自伝本には、「脳機能の研究者は日本には私一人しかいなかった」と誇らしげに書かれています。オウム事件の洗脳を解く専門家として、脳機能学者は当時、警視庁の刑事部と公安の両方から引っ張りダコとなった。おかげで、内定していたハーバード大学助教授の職を断るより仕方がなかった。自伝本ではそういうことになっている。

その後彼は「世界に誇る脳機能学者」として知られるようになります。自他ともに認める誇り高き天才脳機能学者(ウソだと思っていた人も多くいたでしょうけど)。でもウソがばれ正体を暴かれ、これ以上脳機能学者を続けられなくなった。

この人が、ニューロサイエンスとしての脳機能に関する研究実績があるのなら、私に対して当然反論や抗議をしてくるはず。私のレポートを読んで黙っていられるはずがない。

エフィカシーやスコトーマが脳機能学だって? そんな冗談は通用しませんよ。

ネット上には「脳機能学者ドクター苫米地」としての情報が数え切れないほどあるから、この人の肩書きはなかなか消えそうにもない。そのうち天才認知科学者を名乗るようになるかもしれません。「世界が驚愕する天才認知科学者」なんて。

■ドクター苫米地のトンデモナイ本性を確信させる動画


上述したハーバード大学助教授の件。先日こんな動画を見つけました。オウムの事件を特集したTV報道番組の収録ビデオで、事件発生から一年くらい経ったころの番組のようです。オウムの修行や洗脳の実態が暴かれており、ドクター苫米地が洗脳における人格変容について解説しています。



ビックリしたのは、この人が「ハーバード大学医学部 苫米地英人博士」と紹介されていることです。



こちらの方では「ハーバード大学医学部(脳神経学) 苫米地英人」となっている。動画はビデオをそのままコピーしたもの。この人自身がテレビ局に自分の経歴をこのように伝えたのでしょうね。


ハーバード大学医学部(脳神経学) 苫米地英人

テレビではハーバード大学の医学博士になりすましているけれど、十数年後に出版された自伝本では本人自身がハーバード行きを断念したと語っているのです。このWebページでもそう語られている。

  オウム真理教にまつわる一連の事件が起きたころ、苫米地さんはハーバード大学医学部
  から准教授の職を打診されていた。しかし、公安からの依頼でオウム信者の脱洗脳に携
  わるようになる。そちらが忙しくなるとハーバードへ行けない。脳機能の研究も止まっ
  てしまう。苫米地さんはどうしたものかと思い、医学部長と話をすることにした。

とにかく彼はハーバード大学には行っていない。医学部博士の話は真っ赤なウソ。そもそもハーバード大学助教授オファーの話自体、苫米地さんの作り話なのだと私はレポートで指摘しました。医学部長にえらく見込まれたというのは彼の空想。いろいろ調べてみるとそうとしか考えられません。

TVでは、日本中の視聴者が見ているなかで、ハーバード大学の医学博士として堂々と講釈しています。ウソをつくことが平気なんですね。他の出演者たちも、この人のことをハーバードのお偉い医学博士だと信じて彼の話を聞いているようです。人を騙すことに何のためらいも感じないのでしょうか。

動画にはドクター苫米地のどこかズルそうな表情がうかがえます。ペテン師の顔ですね。とても並みの神経ではない。私はテレビに出て、ハーバード大学の医学博士などと経歴を偽るなんてできそうもない。普通はみなそうでしょうけど。

ハーバード大学助教授の職は断ったと公言する苫米地さん。過去にTVでハーバード大学医学博士を名乗っていたという事実を忘れたのでしょうか。虚言癖の人はあまりにも多くのウソをつくので、自分の言ったウソの一つひとつを覚えていられないと言います。

「脳機能学者の正体見たり」の中で、ドクター苫米地にはウソっぽい話が多すぎると指摘しましたが、レポートを書いた以降も、彼のウソだと確信できるいくつかの発見がありました。病的とも言っていい虚言癖。この人はビョーキなのかそれとも天性のペテン師なのか。

■ドクター苫米地の心理構造を推しはかってみる


ドクター苫米地の場合は両方でしょうね。ハーバード大学の医学博士を名乗ることにより、洗脳の専門家としてまんまとテレビに出演することができた。ウソをついても通用することをこの人は学んだ。ウソでも信じる人がいることを学習した。そしてウソをつくことが病み付きになっていったのではないか。

虚言癖の精神病理に関する専門書を読むと、なるほどと思いますね。異常なまでの自己顕示欲や幼児性性格。そして負けず嫌いな性格と激しい競争心。願望が大きくコンプレックスが強い場合にも、虚言癖になりやすいと言います。ドクター苫米地には自慢話が多すぎるし天才を意識した言動がとても目につきます。

ウィキでは虚言癖について、

  虚栄心や自惚れから、自分を実際よりも大きく見せようと、ホラやうその自慢話をする
  ものとされる。ただ、実態としては自身の言質よりも劣っているケースも多く、劣等感
  の変形と見なされている。


と説明されています。

自伝本にこの人の虚言心理を解く手掛かりが示されています。この個所を私のレポートから引用します。

  201ページでは、東京大学を出た人たちのことをひどくバカにしています。貧しく、身
  の回りのことしか考えられず、知識や教養に乏しく東京大学などという聞いたことがな
  いような大学での人間ではなく・・・と愚弄していますが、こんな書き方をするのはコ
  ンプレックスを抱いているからなのではないのか? 

  ここは、この人の本音がそのまま出ている言葉ですね。意外な一面が浮かび上がってき
  ます。クドイくらい自分を天才だと強調するその異常な自己顕示欲も、じつはコンプレ
  ックスと関係があるのではないのか? 


やはりコンプレックスなんでしょうか。新聞広告に引っかけて、

「天才」をふりかざす人を疑え!

なんてどうでしょう? ちょっと苦しいフレーズですかね。認知科学者の方にシフトしたドクター苫米地。認知科学者はいいけれど、でもその間違った科学知識で「日本トンデモ本大賞」に著書がノミネートされるようでは恥ずかしいですね。

今後は「脳機能学者による脳機能理論は最先端の脳研究から導き出されてきたもの」、というインチキめいた誤解も払拭されていけばいいのですが。



                                   2012.07.09


HOME



書籍画像を除く当サイト上の画像、文書の無断転載、無断複製を禁じます。書籍画像及び一部画像を除くすべての著作権は当サイトに帰属します。
Copyright (C) 2009 S.kondoh All Rights Reserved.    メール  サイトポリシー